耀徳収容所に収監された姜哲煥・安赫両氏の手記。
下巻では、収容所から解放された両氏が、外の世界に出て暮らしつつ、脱北を決意するまでの流れが書かれている。
姜哲煥氏は10年にもわたる収監期間中、幸運にも、一緒に収監された家族を誰一人として亡くすことはなかったが、病気を治療することがかなわずに手遅れになっていた父、そして収容所で母の代わりとなってくれた祖母を相次いで亡くしてしまう。
安赫氏は裕福な両親の賄賂のおかげで、重労働ではない職場を得るが、その度に収容所出身だということが知れ渡って職を失うことになる。
保衛部からの監視も厳しく、そのせいで家族は離散してしまい、その結果、友人である姜氏と共に脱北を決意する。
2人は収容所を出た後に知り合ったという。
そのため、収容所で共に苦労を分かち合ったわけではない。しかし、2人をつなげたのが「収容所経験者」だったということ、そして収容所経験者らが一様に「国や党に対する忠誠心」を完全に失っており、周囲の「一般の人々」とは異質なものになっていたからだという点は興味深い。
彼らは社会から阻害される孤独感のみでなく、自国に対する深い絶望を共有し、脱北を決行した。
彼らが理不尽な国から脱したことを幸運だと思うと同時に、彼らの家族が(彼らの脱北により)再びどこかの収容所に収監され、人間以下の生活を強いられているという可能性が余りにも大きく、胸を痛めずにはおられない。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
学術:北朝鮮
- 感想投稿日 : 2018年3月4日
- 読了日 : 2018年3月4日
- 本棚登録日 : 2011年1月15日
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