1980年代以降のグローバリゼーション、ことに新自由主義が女性の労働環境に及ぼしてきた影響をポストフェミニズムの観点から概観し、それがポピュラー・カルチャーの登場人物にどう投影されたかを論じた刺激的な論考。
本書で扱われた作品をざっと挙げると、『スターウォーズ』『アナと雪の女王』『ブリジット・ジョーンズの日記』『おおかみこどもの雨と雪』『千と千尋の神隠し』『魔女の宅急便』『風の谷のナウシカ』『逃げるは恥だが役に立つ』『エヴァンゲリオン』『かぐや姫の物語』『ブルージャスミン』…。観たことがあるものも、ないものもあったが、なるほど、ある視点に立って鑑賞すると、こういう見え方をするのかと学びが多かった。
内容はかなり高度で、完全には理解ができていない。正直、深読みしすぎなのではとか、恣意的に作品を選んでるのでは、とか、色々思うところもあるが、作品は時代を写す鏡なんだなあと感じる。「おおかみおとこ」や「ナウシカ」の解説は、自分では思いもしない角度からの論考で、おぉっと興奮した。こういう本を読む醍醐味は、自分にない考えを知ることができる点にある。
終章もまた読み応えがある内容だ。『百円の恋』で貧困女性の悲哀が、『ブルージャスミン』『ゴーン・ガール』『メイド・イン・ダナゲム』で、貧困女性とキャリア女性の分断と互いの連帯の可能性について語られる。しかし現状、コロナ禍では女性の貧困が際立ち、分断がより深まったように見える。作者の言う連帯の可能性の根は絶たれていないのか、状況の変化を見極めたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年1月3日
- 読了日 : 2023年1月1日
- 本棚登録日 : 2022年12月30日
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