併録されている「ペナント」が最後セザンヌにつながったところで「あっ!なんか凄い!」となった。読み終わったすぐの時は気づかなかったけど「終の住処」の感想を書こうとして、「そういえばこれはピカソなのかも」とぼんやりと思った。
メインの「終の住処」は実はそんなに期待していなかったのだが、かなり意表をつかれた。見えてくるものを新鮮にとらえなおそうとする主人公のずれ方が、何かいちいち面白いなあと思う。一つ一つの認識は正しいのにつなげると妙な違和感が出るというか。そんなことは一言も書いてないが、妻のことを怪物でも見るような(しかも無意識)語りがちょっと笑ってしまう時もある。カフカっぽい感じがする。
セザンヌの静物画は自分の浅い美術理解によると、Aの方向から見た感じとBの方向から見た感じを同一平面上に描き込んでいることが、斬新だった理由の一つだった(たぶん)。で、ピカソはセザンヌに影響を受けていて、キュビスムはそれを進めた形(?)とテキトーなマイ美術史があるのだが、そう言われてみるとピカソの絵って、全体としては滑稽でもあればどこか物悲しくもあって、それがなんだかこの小説と似てるなと思ったのだった。「リアルなものを書こう」というのを妙な方向に進める形で世界を構築しよう、とでもいうような。
かなり面白いと思ったので他の人のレビューも読んでみたのだけど、ブクログではあまり評判が良くないようである。確かに真面目に「現代の家族とは」みたいなメッセージを読みとろうとするとあまり面白くないかもしれないなとは思う。主人公とかに適当にツッコミながら読むのがいいのではなかろうかと個人的には思う。
- 感想投稿日 : 2012年12月22日
- 読了日 : 2012年12月22日
- 本棚登録日 : 2012年12月22日
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