手塚治虫のどろろにそっくり
冒頭の、盲人から見た世界の描写は目新しい。
お父さんの霊が小さくなってハスキーボイスで語りかけるところは、「マインド・ゲーム」を思ひ出した。
しかし、橋の上やたもとで、パンクロックをがんがんに弾いて歌ふところは、耳にがんがん響くだけであまりおもしろくない。
天皇に見せる所になってやうやくおもしろくなる。
さらに、父親が力を得るために息子を呪ひの犠牲にして、犬王が手足を取り戻すあたりは、手塚治虫のどろろとほぼ同じだ。
湯浅政明のアニメとしても、「マインド・ゲーム」や「カイバ」を超えられてゐない。
古川日出男の原作も通俗的な感じだ。平家の学者の松尾葦江が《読後感を一言でいうとー小説を読んだのではなく「絵のないマンガ」本を読んだ気がする、でしょうか。この作家の他作品を読んだことがないので、こういう文体、構成が本作品限定なのかどうかが分からないのですが、粗筋と擬音語しかない、マンガの吹き出しを拾って読んだような後味です。》《商売柄、表現の粗っぽさと、古典語の誤用とが気になって爽快に読めない(例えば五百はイホ、魚はイヲで中世では通音かどうか、「まるっきり」という語は通常否定表現に続くetc.)のは私だけの事情だとしても、能や平家語りのたたずまいとはあまりに遠すぎる。》と書いてゐる。https://mamedlit.hatenablog.com/entry/2022/06/19/141844
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年9月20日
- 読了日 : 2022年5月31日
- 本棚登録日 : 2022年9月20日
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