"簿記・会計をテーマとしたファンタジックな戯曲"
解説文冒頭のこのフレーズが端的にこの本の特色を述べている。
書店のビジネス書コーナーに衛藤 美彩(乃木坂46)が微笑んでいる帯が平積みされている光景は異彩を放つが帯を外したとしても本書の内容はかなり異質だ。
簿記・会計に関する本というと昨年翻訳が出た『帳簿の世界史』(ジェイコブ・ソール)が読み応えのある名著だったが、本書では"複式簿記が存在し得ない世界"というパラレルワールドのファンタジーなため、複式簿記の歴史的経緯にも触れられているし、資本主義に於いて果たしてきた役目も(登場人物の台詞を通じて)知ることが出来る。
ビジネス書としては複式簿記の仕組みだけでなく、背景・思想・根本原理を学ぶ一冊として打って付けの一冊だろう。
ファンタジーとしても「複式簿記がないために資本集約的な工業経済が発展しておらず明治・大正のような生活様式が続いている2016年」という設定で楽しく読める。
貴族階級が残っているということは第2次世界大戦に敗戦してないのだろうか……とか無粋なツッコミもあるが、そこはライトノベルだと思って軽く受け流したい。
小説ではなく戯曲として書かれたというのは衛藤 美彩さんが文字メディアとしてはそちらのほうにより馴染みがあるのだろうななどと思うが、ページ上段1/5ほどに空いたスペースがメモ書きに調度良い。心ある役者が台本にメモ書きするように気になったことや分からなかったことを調べながら読み進めたい。
ところどころにそういった手書きの注意書きが印刷してあって、これは衛藤 美彩の自筆(の印刷)だそうである。そういった部分はファンには嬉しいのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2018年11月20日
- 読了日 : 2016年9月15日
- 本棚登録日 : 2018年11月20日
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