本書を開いて最初に見る「まえがき」
そこでいきなり「最初にまず、お断りしておかなくてはならない。」と始まる。
何だ何だ、と続きを読むと「『カラス屋、カラスを食べる』は内容の一部ではあるが、一冊丸ごとカラスを調理して食っている内容の本ではない」
なるほど、それは確かにそうだろう(しかし『本当においしいカラス料理の本』(塚原直樹著/SPP出版)なる本があることも同時にまえがきで教えてくれるのだが)
しかし、まあカラスの研究者によるカラスをめぐる話が読めるのだろう、と思っているとこれも裏切られる。
なぜなら「本書は『カラス屋の大ぼうけん』というタイトルで企画されていた」ように、著者がフィールドワークの際に出くわした(さらに厳密にはフィールドワーク中とは言い難いような)「アハハと笑える「ぼうけん」」をまとめた本だからだ。
では期待外れかというとそうではなく、自然を相手にする研究者の、野性味あふれるフィールドの体験記は興味深い。カラス屋を自負する著者でも、カラスだけ、ではなく、ミズナギドリの島に向かい、夜にウミガメを押さえ、剥製標本を修理し、猛禽を調査してはクマタカを見つけ、屋久島ではサルを追う。
屋久島での前期調査最終日に行われた打ち上げ、肉を調達しに行った部隊が連れて戻ってきたのはなんと…の件に至っては「バッタ博士のいるモーリタニアかよ!」と思わざるを得ない展開(ちなみにここで提起される「どこまでが「生き物」でどこからが「食品」?」という問いは、『先生、脳のなかで自然が叫んでいます!』(小林朋道著/築地書館)の「第2章 ノウサギの”太腿つきの脚”は生物か無生物か」にも通じて、生物学者が生命というものに日々向き合っていることを感じさせる)
新宿で野宿をして襲われかけ、全裸で川で水浴びをし、マムシを食い、夜明けに妙な事態に遭遇する。
フィールドを相手にするということは、かくも様々なことに出くわすのだが、関西出身ならではの軽妙な筆致で生き生きと描かれる。
学生時代、フィールド系のサークルに所属していたが、あー周りにいてたのはこういう奴らばっかりだったなー
あ、この本の一番”新書/実用書”らしいところは「キムチ鍋を作る時には「スルメと塩サバを入れよう」かもしれない。
- 感想投稿日 : 2018年10月16日
- 読了日 : 2018年10月14日
- 本棚登録日 : 2018年10月14日
みんなの感想をみる