所在:紀三井寺館1F 請求記号:WM203||M2
和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=12589
精神病者の体験記はいろいろありますが、なかでも本書は、とりわけ読み解きにくい一冊ではないでしょうか。
それは、この本が、そもそも「患者」の――しかもかつて「分裂病」と呼ばれた病の――体験記として書かれたのではないからでは…と感じます。
闘病記といったものでなく、もっと創作に近しいもの、はっきり言うならシュルレアリスムの文学作品として接するほうが、魅力にあふれるものとして見えてくるのでは?
著者はたしかに「患者」かもしれませんが、その前に画家であり、作家であり、日本では球体関節人形で知られるハンス・ベルメールのパートナーとして、またその作品のモデルとして認識されている女性です。
シュルレアリスムの有名な芸術家たちとの交流もありました。
この『ジャスミンおとこ』におさめられた文章も、「患者」の体験記である前に、おそらくシュルレアリスムの芸術作品に触発されながら書かれたものであり、創作の部分も大きいのではないでしょうか。
精神病者を扱った文学作品としては、たとえばアンナ・カヴァンの小説と併読するのも興味深いかもしれません。
もちろん、訳者は著名な精神科医であり、「患者」の体験記として読み解いたときにも、たいへん意味のある一冊だと思います。
その場合、三葛館所蔵の、セシュエー『分裂病の少女の手記』などと併読してみると、この本への理解を助けてくれる気がします。
(スタッフN)
【併読のススメ】
ミシェル・フーコー『精神疾患と心理学』
和医大OPAC http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=16181
ブクログ http://booklog.jp/users/wmulk/archives/1/4622023407
セシュエー『分裂病の少女の手記』
和医大OPAC http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=29184
ブルトン,エリュアール『処女懐胎』
シュルレアリスム作品としてなら、こちらの本との併読がおすすめ。
和医大OPAC http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=25475
- 感想投稿日 : 2015年12月4日
- 本棚登録日 : 2015年12月4日
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