死者に祈りを下 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ケ 1-14)

  • 東京創元社 (2009年4月20日発売)
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本棚登録 : 38
感想 : 8

 高名な心臓専門医が殺される。
 捜査にあたるデッカー。事件を聞いて動揺するリナ。医師の息子と、リナは知り合いだった。

 フェイ・ケラーマンにとって、リナは理想の女性なのだろう。
 だからこそ、リナは夫の親友であったブラムのことで揺らぐ。カソリックの神父になっているブラムもまた、リナの存在ゆえに揺れる。
 事件を追うデッカーは、その揺らぎを傍観しているしかない。

 揺らぐけれど、その揺らぎを自分で止められる女性。そして、自分で止まることをじっと待っていてくれる夫。
 
 理想すぎて、デッカーが気の毒になってくる。

 事件そのものは、さほどミステリアスではない。
 地道な捜査で、答えはゆっくりとほぐれていく。けれど、リナとブラムのことが明らかになるにつれて、物語は別のベクトルを示していく。

 フェイは、リナをどこに導こうとしてるのだろう。
 物語は、振り子が揺れを止めるように終結するけれど、むしろリナの心の揺れはこれからまた始まるように感じる。

 聖女になるのか、それともファムファタールになるのか、それともそのはざまで揺れ続ける姿を描くつもりなのかな…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 翻訳作者名 カ~コ
感想投稿日 : 2010年6月24日
読了日 : 2010年6月24日
本棚登録日 : 2009年7月24日

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