絶対の愛 [DVD]

監督 : キム・ギドク 
出演 : ソン・ヒョナ.ハ・ジョンウ.パク・チヨン 
  • Happinet(SB)(D)
3.42
  • (11)
  • (18)
  • (32)
  • (10)
  • (0)
本棚登録 : 123
感想 : 34
3

TIME
2006年 韓国 98分
監督:キム・ギドク
出演:ソン・ヒョナ/ハ・ジョンウ/パク・チヨン
https://zettailove.exblog.jp/

セヒ(パク・チヨン)はジウ(ハ・ジョンウ)と付き合い始めて2年。嫉妬深い彼女は、ジウが少しでも他の女性と親しくすると、自分が飽きられたのではないかと心配になっていた。思い詰めた彼女は整形を決意、ジウの前から失踪、整形で姿を変えて半年後、再びジウの前に現れ、スェヒ(ソン・ヒョナ)と名乗る。ジウはスェヒ=セヒだと気づかないまま、次第にスェヒを愛するようになるが…。

昨年(2020年)の12月、キム・ギドク監督の突然のコロナで死亡のニュースにとても驚いた。移住予定だったらラトビアを訪問中のことだったようで、詳細不明なまま。過激な作風、女優さんにセクハラで告訴されたりもしていたし、日本ではあまり大きく報道されなかったけれど、とても好きな監督だったのでショックでした。映画館で観たのは「春夏秋冬そして春」「サマリア」「弓」「ブレス」「嘆きのピエタ」の5作だけだけど、いずれも心に刺さる作品でした。亡くなったのは残念だけど、多作な監督なので見れていない過去作がたくさんあり、少しずつ補完していこうと思います。

閑話休題。本作は整形大国・韓国らしい、顔が変わっても愛は変わらないか?という疑惑のラブストーリー。整形科医が良心的対応だったのは意外。まず「今より可愛くはなりませんよ(そのままで十分キレイですよ)」と本人の容姿を肯定、さらに手術のグロい映像を見せて「こんなことしますけどそれでもいいですか?」と確認。それでもやる!というセヒの強い意志を確認したうえでやっと手術。とはいえ、お医者さんの良心なんて、セヒの狂気の前では役に立たないだけともいえる。

さて整形後半年は顔をまだ見せられないため、セヒは巨大マスクにサングラス姿で、こっそりジウの後をつけ回します。恋人セヒの失踪にショックを受けているジウを立ち直らせようと、友人たちが合コンを開いたりしようものなら、即座に相手の女に嫌がらせ。自分のいない半年の間に、ジウに悪い虫がつかないよう万全の警戒を行い、満を持して半年後スェヒとしてジウの前に現れます。

まんまとジウはスェヒを好きになってくれるのだけど、彼女はジウを試すために、セヒの手紙をジウに届けたりする。セヒがどこかにいてまた自分に会いにくるかも、と期待をするジウ。ジウは結局、今もセヒを愛しているから付き合えないとスェヒに告げ…。

このへんのセヒ=スェヒの言動は、ちょっと一貫性がなくて、なんというか、そもそも整形にまで踏み切ったものの、彼女自身が本当はどうなりたかったのか、ブレていたのが本人にとっても盲点だったと思われます。セヒとしては、ジウが今も自分を忘れられない、今も愛している、ということを確認できて喜ばしいはずなのに、スェヒとしては、つまりジウに振られることになる。もしジウがスェヒを選び、もうセヒのことを忘れたと言えば、スェヒとしては満足だけれど、セヒとしては結局自分のことを本当に愛してなかったのか、となる。つまりジウがどちらを選んでもスヒ=スェヒにとって100%満足する結果はありえないということ。スェヒは自分自身であるのにセヒに嫉妬するはめになり、セヒはセヒでスェヒに嫉妬、同一人物なのにものすごい自己矛盾を抱えてしまうことに。

ジレンマに陥ったスェヒは、整形前のセヒの顔のお面をつけて(写真拡大コピー)ジウに会う。この場面がもはやホラー。ジウはようやく、スェヒ=セヒだったことを悟るが、なんのために彼女がそんなことをして自分を試したのか、結果どうしたいのか理解不可能。整形科医にいちゃもんをつけにいった彼は、混乱のあまりある決意をし…。

終盤の迷走っぷりはいかにもキム・ギドク。自ら地獄につっこんだセヒ=スェヒは、ジウを求めてさらなる迷走を繰り返す。しかし彼女に同情する気持ちには全くなれず、ひたすらジウが気の毒なのみ。そもそも序盤のセヒの嫉妬深さが異常で、私がジウならこの時点でセヒとはお別れしたいところなのだけど、ジウはそれでもセヒを愛している。こんな献身的な彼氏がいて、どうしてあんな奇行に走るのか。愛ゆえにしてもあまりに闇が深い…。

二人がデートで何度も行くアートだらけの島が、日本でいう直島みたいなところで面白そうでした。整形シーンがグロい以外は、キム・ギドクのわりにはライトなストーリーだったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  アジア映画
感想投稿日 : 2021年1月15日
読了日 : 2021年1月15日
本棚登録日 : 2021年1月15日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする