オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ [DVD]

監督 : ジム・ジャームッシュ 
出演 : トム・ヒドルストン  ティルダ・スウィントン  ミア・ワシコウスカ  ジョン・ハート 
  • 東宝
3.77
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感想 : 33
4

ONLY LOVERS LEFT ALIVE
2013年 アメリカ+イギリス+ドイツ
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ティルダ・スウィントン/トム・ヒドルストン/ミア・ワシコウスカ/ジョン・ハート/アントン・イェルチン
http://onlylovers.jp/

ジム・ジャームッシュで、ティルダ・スウィントンで、吸血鬼もの!それだけでなんだか盆と正月とゴールデンウィークがいっぺんにきたくらい興奮しました(笑)。期待通り、映像は美しいけれど、内容はオフビート。とくに血沸き肉躍る展開はありませんが、目の保養と耳の保養を一度にできてそれだけで満足。

デトロイトでミュージシャンとして暮らすアダムは、ロマンチストで鬱気味の吸血鬼。おそらく自殺用とおぼしき弾丸を用意したりして、ちょっとネガティブなこの頃。そんな彼を心配して、タンジール(モロッコ)から、やはり吸血鬼の恋人のイヴがデトロイトまでやってきます。

どちらの暮らす家も、齢数百年を生きたヴァンパイアらしく調度は時代錯誤なまでにアンティーク。しかし21世紀を生きる彼らは、スマホも使うし、You Tubeも見るし、連絡するときはスカイプ(笑)。

ミュージシャンのアダムは、かつてはシューベルトに曲を提供したりもしたけれど、今はギターやコンピューターを駆使して、自分の名前は出さずにインダストリアル系みたいな音楽を作っている。バイロンやシェリーといった詩人と交流した時代もあったらしく、そういえばそのバイロンやシェリーも吸血鬼だった、という小説や映画も昔あったっけ。

アンニュイなアダムに比べて、イヴはポジティブに不老不死の人生をそれなりに楽しんでいるように見えます。アダムの運転するジャガーでデトロイトの街をドライブしながら、ジャック・ホワイトの家を教えてもらって喜んだりするミーハーな一面も(笑)。デレク・ジャーマンのミューズだった頃から、やはり不老不死のオルランドを経て、ティルダ・スウィントンの白皙の美貌は本当に不老不死かと思うくらい衰え知らず。彼女ほど吸血鬼役に説得力のある女優はいないでしょう。

イヴの古い友人である“クリストファー・マーロウ”は、実はシェイクスピアも彼だったという説を採用されているようで、シェイクスピア以外にも、さまざまな時代の作家の正体が実は彼だった、ということが匂わされてもいます。

そうして何百年も、作家として、あるいは音楽家として、人類に貢献してきた彼らですが、そんな彼らの知性とバイタリティをもってしても、現代はとても生きにくい。うっかり血を吸って人を殺せば殺人罪で捕まるし、不老不死の彼らには戸籍もないゆえパスポートや身分証明書の類いも偽造するしかないし、濁りのない血を手に入れるためには医者を買収して輸血用の血を手に入れるしかない。昔は良かった、死体はテムズ川に流すだけで済んだ、と思わず愚痴りたくなる気持ちもごもっとも。

しかしそうやって人目を忍んでひっそり生活している彼らにとっては迷惑な、トラブルメーカーも存在します。イヴの妹のエヴァは、とても数百年生きたとは思えないくらい現代っ子な吸血鬼。思慮深さのかけらもなく勝手気ままにふるまう彼女をみてると、性格って、年齢と関係ないのかもね、としみじみ思ったり。

結局このエヴァが無分別に人間の血を吸って殺したせいで、デトロイトを逃れたアダムとイヴは、タンジールへ戻り、そこでマーロウの死を看取る。輸血用の血液から別の病気に感染した、というのは人間界でも問題になりますが、吸血鬼にとっても致命的。飢えて追いつめられたアダムとイヴが最後に選んだ方法は・・・ラストシーンにしてようやく「ザ・吸血鬼」映画の様相を示したのでした。

余談ですが、クラブのシーンで流れてた音楽がBRMCだと思ったのだけれど曲名思い出せなくて、調べたら「Red Eyes And Tears」でした。全体的にジャームッシュらしく、音楽の趣味もとても良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  アメリカ映画 他
感想投稿日 : 2014年5月19日
読了日 : 2014年5月16日
本棚登録日 : 2014年5月19日

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