万引き家族 通常版DVD(特典なし) [DVD]

監督 : 是枝裕和 
出演 : リリー・フランキー  安藤サクラ 
  • ポニーキャニオン
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本棚登録 : 954
感想 : 232
3

2018年 日本 120分
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/樹木希林/池松壮亮/高良健吾/池脇千鶴/城桧吏/佐々木みゆ
https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

今にも壊れそうな平屋に暮らす老婆・初枝(樹木希林)は、その息子夫婦と思しき治(リリー・フランキー)と信代(安藤サクラ)、二人の子供らしき祥太(城桧吏)と、若い娘(信代の妹設定らしい)亜紀(松岡茉優)と暮らしている。初枝の僅かな年金のほか、治は日雇い仕事で稼ぎ、信代はクリーニング屋の下請け工場でバイト、亜紀は風俗で働いているが、家計は苦しく治は祥太に万引きをさせている。ある日、親にネグレクトされていると思しき幼い少女をみつけた治と祥太は、同情からつい少女を連れ帰り・・・。

いろいろと話題になったので、ざっくりとした設定は知っていたけれど、いざ見てみたら想像していたのと少し違った。治と信代はおそらく低賃金ながらも一応働いているし、亜紀も風俗で働いている。子供がいるといっても祥太は学校に行かせてもらっていないから学費はかからないわけで、初枝の家がボロ屋とはいえ持家なら、彼らが子供に万引きさせなくてはいけないほど貧乏なのはちょっと不自然かも。それぞれ「わけあり」な人物たちが、疑似家族を構成していくという設定は好みだし、現代的な問題をたくさん孕んでいるのだけれど、なんていうか、ちょっと盛りすぎ、かなあ。

もっとハートフルにまとめてあるのかと思っていたら意外とヘビィで、お涙ちょうだいにもっていくことで「彼らのしたことは間違ってない!」と安易な共感に持ち込むこともできただろうに、あえてそうせず、「でもやっぱりそれって犯罪だよね?」と観客に突っ込む隙を与えておくあたり、監督が「あえて」そうしたのなら、そこは凄いと思う。ただ、そのかわり、期待していたようなカタルシスは得られず、問題提起をぶわっと投げかけられて、終わってしまった。もちろんそれが狙いなのだろうけど、もう少しハッピーな気持ちで映画館を出たい自分としては、手放しで絶賛はできず複雑な気持ち。

前評判通り、安藤サクラの演技は素晴らしかった。とくに終盤の取り調べのシーンと、面会のシーン。信代の心情だけに焦点を当てるなら、この映画は「そして、母になる」とでも言うべき内容で、とくに最後に祥太にむけた笑顔や言葉に、なぜか大岡越前の「子供を奪い合いどちらも母親を名乗る女性二人に、子供の手を両方から引っ張らせて、痛がる子供を見て手を放したほうが本当のお母さん」という名裁きを思い出してしまった。未練がましい治と対照的に、信代のほうは祥太の手を放すことで結果的に本当の愛情を表現した。

一瞬しか出てこない柄本明の、祥太へのちょっとした一言が、少年の意識を変えてしまう場面は素晴らしい説得力だった。こういう助け方もあるんだよなあ。繰り返しになるけれど、美談にしすぎなかったことは評価されるべき点だけれど、信代や治の言動にはそれなりに嫌悪感をおぼえる部分も多々あり(言葉遣いによる部分も大きいかもしれない、ババアとか、金、とか)、もしこの一家のニュースをテレビで見ただけなら、とんだサイコパス犯罪者集団と思ってしまうだろう。単なる好き嫌いの部分で、良い映画だけど苦手な映画だったかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  邦画
感想投稿日 : 2019年4月30日
読了日 : 2019年4月29日
本棚登録日 : 2019年4月30日

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