現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病 (ブルーバックス)

  • 講談社 (2016年1月21日発売)
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―――免疫チェックポイントって何だ?―――
「現代免疫物語beyond 免疫が挑むがんと難病」
(岸本忠三・中島彰 講談社ブルーバックス 1080円税別)


 気楽に読める一般向けの本で、アンダーライティングに役立つ最新の医学知識をゲットしよう。そんなコンセプトでブックガイドさせていただくことになりました。査定歴20年の自称「査定職人 ドクター・ホンタナ」です。

第一回は巷で話題の免疫チェックポイント阻害による抗がん剤「オプジーボ」のことがすっきりわかる一冊です。20世紀の間は「がん免疫療法」というものはいかにもうさん臭いものでした。丸山ワクチン、ピシバニール、クレスチンなどなど。うさん臭さの根底には、効果があるというのに、その作用機序がナゾということではなかったでしょうか。そもそも免疫機構そのものがまだまだ漠然としていた時代でした。ところがヒトゲノム計画以降のバイオテクノロジーの発達は、リンパ球の細分類を可能にし、様々なリンパ球の働き、それを実現する分子機構を明らかにしました。21世紀になって一気にすすんだ分野です。一方で、「がん」の分子病理学もおなじテクノロジーによって急速に進歩しました。EGFRやALKのような、がん細胞表面に現れるレセプタータンパクなどの遺伝子異常が明らかになり、その部分を攻撃する分子標的抗がん剤が抗体医薬として開発される時代がきたのです。
そして、「リンパ球によるがん認識」と「分子標的」という二つの最先端を組み合わせたものがオプジーボ(ニボルマブ)です。本書は、リンパ球研究の黎明期からオプジーボまで、多くの研究者の人生遍歴をからめながら、そのすべてがまるで小説を読むように理解できるという稀有な一冊です。このあたりのことまったくわからないという人にこそ薦めたい。読み終わったあなたは、きっと誰かに薦めずにはいられなくなるでしょう。
著者二人のコンビでブルーバックスから「現代免疫物語」「新・現代免疫物語」に続く第三弾として出版された「現代免疫物語beyond」ですが、まずは第三弾の本書を読んでみてください。
本書だけであなたは現代免疫学の最先端に触れることができることうけあいです。
(byホンタナ ペンネームの由来は追々・・)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: PDF済
感想投稿日 : 2018年10月13日
読了日 : 2017年7月17日
本棚登録日 : 2018年10月13日

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