町田宗鳳「人類は「宗教」に勝てるか~ 一神教文明の終焉」を読む。
これまでいろいろ宗教、とりわけ仏教に関わる本を読んできたが、何かこの本でかなり頭の中が整理されたような感じがある。キリスト教とは何なのか、一神教とは何ものなのか、そして仏教とは、日本古来の神道とは・・・・・。一神教がいかに世界の災いの根源となっているか、また宗教の名の下にいかに人間がエゴと欲望を満たそうとしているか、これまで少し判ってきていたことがパッと開けたような気がする。
この著者はキリスト教でも仏教でもましてやイスラム教でも神道でもない無神教を提唱する。無宗教ということではなく、人間と対峙する神を想定するのではなく、無意識・没個性のもとで自分の心の中にある神でもホトケでもない何か、愛というべきもののようだが、そういう存在を大切にして生きるべきだという。特に取り上げるのが、ジョン・レノンの歌った「イマジン」。あの歌詞の内容こそが無神教のコスモロジーを示すものなのだと。これまで意味を意識して聴いたことがなかったが、実はこんなにも深い想いがあったことに驚かされるようなことだ。
著者は触れてはいなかったが、宮沢賢治の思想がまさにそれにあたるのではなかろうか。また老荘思想にも共通するものがあるようにも思える。
中国新聞の「緑地帯」というコラムに寄稿されていたことから知ったこの人は、比較宗教学を専門にする広島大学の教授。本人の自伝的著作の「文明の衝突を生きる―グローバリズムへの警鐘」を最初に読み、波乱万丈な人生のなかで宗教と向き合ってきた人ならではの、宗教こそが人類最大の敵という考え方がこの本によって更に明確に伝わってくる。大いに啓発される一冊。
- 感想投稿日 : 2012年8月8日
- 読了日 : 2012年8月2日
- 本棚登録日 : 2012年7月30日
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