韓流経営 LINE (扶桑社新書)

  • 扶桑社 (2016年7月2日発売)
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■LINEは東日本大震災をきっかけに誕生したサービス。
■LINEの誕生前からネイバージャパンを率いてきた最大のキーマンがあたかも存在しないのかのような状態が続いてきたのか。
・LINEが日本発のオリジナルアプリという「物語」にとって,韓国という存在はできる限り消した方が都合がよいという経営判断があったから(嫌韓ムードとマーケティング戦略)
■LINEは,
①誰が本当の経営者か?
②どこが本当の本社か?
③LINEはどのように開発されてきたか?
・この疑問を辿っていくと,韓国最大のIT企業のネイバーという会社に行き着く
■LINEの経営は3人の経営メンバーが意思決定する「トロイカ体制」
・代表取締役社長CEO出澤剛氏(96,500株)
・取締役CGOシン・ジュンホ氏「LINEの父」(10,264,500株)
・取締役CSMO舛田淳氏(94,500株)
■「LINE KOREA」という名称が一時遡上に載ったが,韓国側からすればLINEの親会社はネイバーであり,日本よりも「下」に見られるネーミングを避けたかったことから,「LINEプラス」という社名が生まれた。
■世界地図をいちばん塗りつぶしているメッセージアプリの王者は「ワッツアップ」
・ワッツアップの歴史はそのまま世界のメッセージアプリの進化の歴史と言っても差し支えない
・LINEを含めたメッセージアプリの元祖
・スマホ登場以前の欧米の携帯電話にはEメールの機能がなくメッセージの送受信は有料のSMSが使われてきた
・元々は自分が何をしているか「ステータス(状態)」を友人同士で知らせ合うものだったがユーザーたちがメッセージの送受信に用いるようになり自然とメッセいーじアプリへと進化していった
■LINEより一足先にコミュニケーションの重要性に気づき,いち早く実行に移したのが「カカオ」(カカオトーク)
■2011年2月16日にネイバーはメッセージアプリ「ネイバートーク」のサービスを開始したが全く流行ることがなかった。
■東日本大震災発生後,日本にいる韓国人たちはみんながカカオトークなどでメッセージをやり取りして安否確認していた。ネイバーを含むNHNの社員もそうだったし,一部の日本人にも重宝されていた。カカオトークが災害時のコミュニケーション手段として不可欠な役割を果たすことが証明された。
■東日本大震災はLINE開発の契機となった一番の大きな出来事だった。
・企画側が3人で総勢20人程度で開発を進めていった
■韓国では同種のサービスとしてカカオトークに人気がある。それに対抗して本社がネイバートークというサービスを出したが,カカオトークを超えるまでにはならなかった。日本でネイバートークを提供しないかという話は本社からはあったが,そうではなく日本独自で日本向けに作ろうということでLINEは生まれた。
■ネイバートークが韓国本国で圧倒的に劣勢になる中で,シン・ジュンホ以下の日本チームは日本では独自サービスを打ち出すことを主張した。そして,ネイバーが,日本側の強い要望を聞き入れる形で打ち出したのが日本市場向けにカスタムしたシンプルなメッセージアプリである「LINE」だった。
・LINEの設計は先行するカカオトークと「瓜二つ」だった
■LINEオリジナルの公式キャラクターを考案し描いているのは韓国人イラストレーターのカン・ビョンモク(通称mogi)。LINEプラス所属。
■ハンゲームジャパンの戦略は韓国でのモデルを直接日本に持ち込むのではなく徹底的に日本のユーザーに合わせて「現地化」していくことにあった。メールの書き方から挨拶の方法まで一挙手一投足を日本のやり方にしていった。
■ハンゲームの日本進出の立役者となったチョン・ヤンヒョンが「LINEの父」であるシン・ジュンホに日本市場に浸透していくための3つの秘訣を伝授した。
①できる限り通訳を使わないこと
②常にデータに基づいて話をすること
③日本人の心,つまり琴線に触れているかを常に確認すること
■LINEのアイコンはなぜ緑色か。
・LINEの親会社である韓国ネイバーのコーポレートカラーであるからという説
・LINEの開発コードが「green talk」であったという説
・iPhoneに予めインストールされているメッセージアプリが緑色だったからという説
・LINEがサービスを開始した当初,一番ターゲットにしていたのは女性ユーザーであり,そこで支持される色を検討した結果,緑色になったという説
・先行していた競合サービスがそれぞれ紫色(バイバー),カカオトーク(黄色)であることで使える色の選択肢が限られていたという説
■韓国資本のネイバーが創業間もないころから日本進出という目標を掲げて10年以上の紆余曲折の末,LINEの成功を生み出した。
■日本人が誇るべき「メード・イン・ジャパン」への思い入れは時に海外で起こっているIT産業のダイナミックな変遷を見落とすリスクになってはいないか。LINEという企業やサービスに学ぶべき点は,日本という国だけを見つめていては,決して理解することはできないはず。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年9月10日
読了日 : 2016年9月9日
本棚登録日 : 2016年9月9日

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