コロナショックと昭和おじさん社会

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  • 日経BP日本経済新聞出版本部 (2020年6月1日発売)
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あと10年経過して過去を振り返った時、今年2020年という年は分岐点になったと誰もが思うことでしょう。緊急事態宣言は4月上旬に発令されて1か月ほどで解除されましたが、私が勤務する会社では2月下旬から在宅勤務が始まり、現在(2020.9)も継続しています。

それまで自分で電話会議を設定したことは殆どなく、最初の頃は手惑いましたが、そのような生活も一か月もすれば慣れてきて順応できた自分にも驚いています。

またこの本のタイトルにあるように、平成の世が過ぎて令和の時代になっても「昭和おじさん社会」が続いていたことを改めて感じさせられました。しかしこの時代も終わりを告げようとしています、娘たちの行動を見ていると明らかにしょ和の私とは異なりますので。

以下は気になったポイントです。

・今の社会のしくみは、1970年代高度経済成長期の「社会の形」を前提につくられたもの、長期雇用の正社員・夫婦と子供二人の4人家族・ピラミッド型の人口構成であるそれが1990年代を境にすべて変わったにもかかわらず、昭和のまま(P5)

・雇用の形、家族の形、人口構成の形は、1990年代を境に大きく変わったのに、実態に向き合ってこなかった、これまでだましだましやり過ごされてきた問題がコロナ禍をきっかけに表面化した(P32)

・母語である日本語で思考できないことを英語で話すことはできない、言語と思考とはお互いに結びついていて母語により私たちは目に見えないものを概念として把握し知覚する、精神的な世界は言葉がないと成立しないし、目の前に見えているものでさえそれが何かを理解できない(P61)

・1986年の厚生白書に発表された、社会保障制度の基本原則は、健全な社会とは、個人の自立・自助が基本でそれを、家庭・地域社会が支え、さらに公的部門が支援する三重構造の社会であると明記されている(P76)

・経営者と対等な契約をするには、専門のスキルと完全な成果主義に耐えられる胆力、何があっても絶対に生き残ってやるという野心が求められる、悪い時には最低の生活をするというリスクを覚悟した上での働き方である(P99)

・フランスや欧州等(イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)では、非正規雇用には不安定雇用手当があり正社員より1割程度高い賃金が支払われている、EU諸国には原則有期雇用は禁止で、できる場合も制約を明確に決めている場合が多い(P133)

・日本は同一労働同一賃金において「均衡」を重視している、世界の常識は「均等=差別的取り扱いの禁止」である。均衡とは、処遇の違いが合理的な程度及び範囲にとどまれば良い、とするもので、年齢・責任・経験・異動・転勤等の理由をつければ違いがあっても問題はない(P134)

・ペストは近代の陣痛と呼ばれ、14世紀の流行では、中世社会の崩壊をもたらし、資本主義と自由経済の始まりとなった。今度のコロナ禍では、異動の制約と人との接触を禁じられた私たちは「会わなくてもいい社会」をつくり出す動きを急速に始めた(P150)

・コミュニテイの最小単位は「家族」とされているが、「会話」と考える。たとえ血が繋がっていても会話がなければコミュニティではない、反対に血が繋がっていなくとも会話が存在すれば「家族のような:コミュニティになる。会話がつくるコミュニティは、メンバーがお互いの存在に価値を感じ、自分の貢献がメンバーにプラスに波及すると信じられる集団である(P157)

・いつの時代も人を豊かにするのは「無駄な会話」であり「無駄な時間」であり「無駄な空間」である。たわいもない会話をする中で、それまで知りえなかった一面を知り相手との距離が縮まることがある、思いもよらぬアイデアが浮かぶこと、親近感がわくこともある(P162)

2020年9月22日作成  

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・生活・労働
感想投稿日 : 2020年9月22日
読了日 : 2020年9月22日
本棚登録日 : 2020年8月15日

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