数学を知らずに経済を語るな!

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  • PHP研究所 (2011年12月23日発売)
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かなり昔になりますが、私も理系の学部を卒業したこともあり、本のタイトルに「理系の~」と書いてあると目につくことが多いです。

この本の著者である高橋氏は元大蔵省の役人で、財務省が毎年発行している分厚い予算書(報道関係者用のダイジェスト版でなく)を読んでポイントを指摘でき、それを本で紹介してくれる数少ない方です。今回は、その高橋氏が日本経済のポイントを数学的視点から解説しています。

以下は気になったポイントです。

・歳入=税収+税外収入(埋蔵金の取り崩し、資産売却等)+公債なので、増税以外にも歳入を増やす方法があることがわかる(p18)

・日銀が紙幣を刷ると、長期的には発行価額の99.8%程度の発行差益(政府の税外収入)となる(p23)

・日銀の国債引受枠は30兆円(2011)で決まっている額(日銀引受額)は12兆円で、余りが18兆円ある(p24)

・現在日銀が引受ている国債は全部で100兆円あり、2011償還は30兆円、市場のマネーがその分減ることになり、30兆円分の国債引受をして紙幣を発行しないと、一層デフレになる(p26)

・増刷した紙幣の総額は、将来の納付金を全部足した合計になる(p32)

・これだけ景気が悪い中で増税をすると、経済成長率がさらに悪くなるだけ(p49)

・ギリシアでは年金額が現役時代の所得比較で96%もある、日本は36%、日本以外のG7は48%程度(p56)

・各国の国債のCDS値(クレジット・デフォルト・スワップ)を見れば、財政破綻のリスクはわかる、ギリシアは2011.11現在で80%、日本は2011.9現在で1.3%(=80年払い続けても元はとれる、80年間は破綻しない)(p65)

・10年以内に本当に財政破綻すると認識しているなら、CDS保険をかければ10年間の保険額の合計が13%なので得することになる(p66)

・今後30年で地震が起きる確率:87%とは、P=1年間で地震が発生する確率とすると、30年間ずっと地震が起きない確率は、1-0.87=(1-P)^30となり、P=6.6%となる(p121)

・放射線被爆量で最も重要なのは「累積値」なのに、報道は時間当たりの数字しか発表されなかった(p127)

・一瞬値か累積値かは、経済学の「フローとストック」に対応する概念、この違いを瞬時に理解できるかは、数字を見るとき「単位に着目するか」にかかっている(p128)

・なぜ対数をとるかは、対数をとることで桁数の違いがわかる、桁が違えば明らかな変化と見なせる、それまでは測定誤差のようなもの(p131)

・乗数とは、C=消費性向(収入のうち消費に回される割合)とした場合、1/(1-c)としたもの。C=0.7の場合は、乗数は3.3となる、政府が公共投資等で新たに有効需要をつくると、投入額の3.3倍程度は需要が拡大する(p157)

2012年4月30日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年4月30日
読了日 : 2012年4月30日
本棚登録日 : 2012年4月30日

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