インフレどころか世界はこれからデフレで蘇る (PHP新書)

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  • PHP研究所 (2014年1月16日発売)
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デフレは悪い、と世間で言われることがありますが、インフレなら良いのでしょうか。デフレが良いと明確に宣言して本を書いているのは私の知る限りでは、増田悦佐氏とこの本の著者である中原氏です。

特に中原氏は、シェールガス革命を重要視していて、それを手掛かりにアメリカは回復するという見方をしています。

一方日本では、アベノミクスという「インフレ政策」が進行中で、永らく続いたデフレを脱却することを目標としているようです。

今の戦略が一部の人だけではなく、多くの日本人を幸せにできるよう信じたいものですが、現時点では、いろいろな見方・考え方を学んでおきたいと思いました。

以下は気になったポイントです。

・現在のアメリカは、物価上昇率が賃金上昇率を上回る「悪いインフレ」の典型である(p5)

・輸出で稼ぐ国(新興国、途上国、中東諸国など)がドルに連動する通貨政策を採っていることも、基軸通貨をもっている国の強み、アメリカは借金とすればするほど得をすることになる(p17)

・欧州ではインフレを忌避する政策を採用しているドイツのみが独り勝ちとなっている(p21)

・インフレ経済のアメリカでは、預金の目減りを防ぐために株式が買われて、その結果、株価が上がっていく構造になっている(p25)

・日本のGDPは主要先進国と比べて、帰属家賃・政府支出など、民間の経済活動とはかけ離れた部門の比率が高い(p40)

・日本が世界でいちばん物価が高かったのは、20年前の話、アメリカのほうが家を借りるにしても食事にするにしても日本より高い(p43)

・アメリカが定めている貧困層は、4人家族で持ち家ローンが残っていて、世帯収入が2.6万ドル以下(p43)

・経営者は需要が見込めるときに設備投資する、低金利だから設備投資するわけではない(p64)

・製造業が海外拠点を決めるときに、重要視するのは、人件費とエネルギーコスト(p77)

・流動性の低いウォンは、ドルや円と異なり、通貨当局の為替介入によって価格操作がやりやすい(p80)

・日本において給与所得者の平均年収が下落し始めたのが98年、消費者物価指数が下がったのが99年、デフレは原因ではなく結果である(p89)

・過去10年間のユーロ圏の国々の労働者の賃金が20-40%上昇したのに対して、ドイツはほぼ横ばいだったので、ユーロ圏でのドイツのコスト競争力は強くなった(p110)

・世界経済の歴史をさかのぼれば、デフレ時代のほうがインフレ時代よりもずっと長い、平和な時代はデフレが通常の経済状態(p116)

・アメリカのエチレン生産能力は2020年までに800万トン増える、日本での1年間の生産量は700万トン、シェールガスを使って生産するエチレンは、従来の石油の10分の1以下のコスト(p162)

・アメリカの貿易赤字の50%程度は、エネルギー(原油、天然ガスなど)の輸入によるもの(p166)

・エネルギー供給過剰による物価下落について歴史的にみると、物価の下落が先で、それを受けて労働者の賃金が下がる(p178)

・日本の成長産業になりえる分野は、農業・観光・医療、の三分野である(p184)

・インテルが賢かったのは、収益源となるMPUの独自技術を公開しないために、関連機器などとの接続はオープンにして自社製品の普及を促す戦略へと切り替えた(p200)

2014年5月5日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界経済
感想投稿日 : 2014年5月5日
読了日 : 2014年5月5日
本棚登録日 : 2014年3月1日

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