中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか (ディスカヴァー携書)

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  • ディスカヴァー・トゥエンティワン (2011年3月20日発売)
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私よりも20歳も若い人が著者(加藤氏)だと知って驚きました、高校卒業後に国費留学生として北京大学へ留学したのですからすごい経歴です。この本を読むまで知らなかったのですが、彼は中国でブログを中心に活躍しているそうです。

加藤氏が指摘しているように、日本のメディアは中国の真実を伝えていない気もしますので、彼のように中国に暮らしていて中国語で現地の人とダイレクトにコミュニケーション出来る人が書く内容は興味深いです。

特に、靖国問題がなぜいまだに問題になるかについては、彼の指摘:軍国主義者と一般国民を区別することで、自国民を納得させて国交正常化にこぎつけた(p153)によって、中国側の思いが少しわかった気がしました。

以下は気になったポイントです。

・中国人のストレスは、日本人のサラリーマンのそれとは似て非なるもの、日本人はルールに従うことからくるもの、中国人は秩序がない環境から着ている(p44)

・中国人は世の中を「弱肉強食の舞台」と見なすので公共の空間での行為は遠慮しない一方で、プライベートは「個人に専属した空間」なので部屋もきれいにする(p46)

・日本の女性が家庭内の身体的な負担を嫌がらないのは、1家全体の財政をコントロールしているから(p56)

・少数民族に対しては、二人以上産めるということが制度で担保されている(p64)

・日本の大学生は下宿している場合には、学費と家賃の半分程度(130万円)はアルバイトして稼ぐことになる、中国とは大違い(p81)

・中国共産党は、大学生には勉強に専任して欲しいのでアルバイトはしてほしくないと思っている、多くの失業者を出すのを防ぐ意味もある(p87)

・日本人は列に並ぶかどうかを選択する場合、まずは周りを見る、周囲がどうしているかを見た上で自分がどうするかを決める(p116)

・欧米も日本も、社会のメンバーが厳しく自らを律して、禁欲の精神を持って社会の規範に従うことを前提とすることで資本主義を成功させた(p117)

・様々な分野の制度がある中で、大学入学試験は現在の中国社会では最も公平なものの一つである、これは日本も同じ(p136)

・北京大学の卒業生の場合、勝ち組として進む道は、1)政治の道、2)外資系ビジネスの道に限られる(p137)

・8年(中日)戦争は中国人の心のなかに重要な位置を占めているが、日本はアメリカとの戦争がそれであり、これが日中戦争をめぐる認識ギャップの根源(p149)

・当時の中国のリーダーは、戦争を指揮した軍国主義者と一般国民を区別することで、自国民を納得させて賠償を放棄して国交正常化にこぎつけた(p153)

・中国の歴史に関する教育課程は、日本とは違って近現代史にかなり偏っている(p166)

・中国のすべてのメディアは共産党機関の管轄に置かれているが、天安門事件等の党の正統性にかかわること以外は、比較的自由に報道することが可能である(p173)

・中国が中東のようにならない理由として、1)経済が発展していること、2)一般庶民は自分の身の回りのみに関心があり、社会全体の発展等は興味がない、3)政府が社会におけるリソースを厳しく統制している、である(p204)

・日本ではどの業界でも転職はあまりしないので、同じ業界の人同士が知り合いであることが多い、中国ではありえない(p272)

・庶民が最も関心を寄せる問題は、自分の生活と密接なかわりのある小さな事件(例:段ボール肉まん事件)であり、中国人の反応が速く激しかった(p302)

2011/5/29作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国・中国語
感想投稿日 : 2011年7月12日
読了日 : 2011年5月29日
本棚登録日 : 2011年7月12日

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