死体は語る2 上野博士の法医学ノート (文春文庫 う 12-2)

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  • 文藝春秋 (2020年2月5日発売)
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死体解剖保存法第8条に基づき、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の5大都市において施行されている(監察医)制度。と、『死体は語る』の感想に私が引用記載していたが、本書『死体は語る2』のあとがきでは、横浜が廃止され、全国4都市のみで施行されているとあった。法医学専攻する医師不足と予算配分の影響とのこと。残念な状況である。
東京都23区内で発生した変死者は、警察に届けられ、遺体は警察官立会いで監察医が検死する。検死で死因が不明な場合行政解剖して死因を明らかにする。
これが、監察医制度で監察医は地方公務員にあたるとのこと。
本書には、死因を特定する医学的知見とともに、一見事故に思えるものでも、検死や行政解剖で別の原因で死亡したことが明らかになることがあることを、包み隠さず記されている。
殺人事件を扱う作家必読の書といえるのかもしれない。
こうした監察医制度がない道府県の悩みについては、『焼かれる前に語れ』という本をお勧めする。司法解剖医であり千葉大学大学院教授である岩瀬博太郎さんの著書。
監察医制度がないところでは、死因が特定されずに火葬されることが多い実態がわかる。2007年9月に出版されているものなので、環境は変わっているかもしれない。岩瀬さんの著書もう一冊『法医学者、死者と語る』2010年8月初版もお勧め。不審死の90%が法医解剖されていないことが記載されている。
できることならば、監察医、司法解剖医のお世話にならない死に方をしたいものである。
医師になる人の動機の多くは、人命救助であろう。法医学医の担い手となる人は少ないことも心情的に理解できるが、法医学医は社会秩序を担保するため重要な役割を担うもの。この制度が今後どのように推移していくか、注視していきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 医学・薬学・看護学・歯科学
感想投稿日 : 2021年2月1日
読了日 : 2021年2月1日
本棚登録日 : 2020年2月26日

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