アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」 (集英社新書)

著者 :
制作 : 野田サトル 
  • 集英社 (2019年3月20日発売)
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本棚登録 : 156
感想 : 9
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北海道で行われた家族療法学会の市民講座で『ゴールデンカムイ』の一コマが出てきて、あこれ絶対面白い、とピンと来て読み始めた。めちゃめちゃ面白くて19巻(当時)一気に読んだ。勢いづいてこの本も買った。

まずは著者である中川先生の姿勢と文章が心地よい。深い専門知識をこんなに分かりやすく噛み砕き、優しく(易しく、ではなく)一般に知らせてくれることの偉大さ。監修におけるリアリティとフィクションのバランスについて語られる箇所があるが、希有なバランス感覚を持っておられるのだと思う。漫画に対する理解や感動も深く、フチのアイヌ語に訳が付いていなかったエピソードのところは鳥肌が立った。

漫画のおかげでこの本にも出会わせてもらい、アイヌ文化に思いをはせる。消えつつある豊穣なものをとどめ、様々な形で展げようと活動している人たちがいる。それもアイヌに生まれた人だけでなく、というのがすごいことだ。どうしても実学に走りがちな世の中で、こういうところに文化の価値があるのだ、と感じさせられる。

この手の解説本?としては、目的を見失わず美しい形に着地した極地なのではないか。参考文献も少し買い足した。漫画の次巻を待ちつつ少し知識を広げていってみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 専門
感想投稿日 : 2020年8月30日
読了日 : 2020年8月29日
本棚登録日 : 2020年8月30日

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