一流の腕を持ちながら不運が重なり、失業中の料理人・佐々目宗。一年限りのつもりで小学校の給食調理人として働くことになるが…
スターシェフとして理想の店を開く夢をあきらめきれない一方で、給食調理という特殊な世界での仕事に少しずつやりがいを見出していくお仕事小説。
プラス、子供たちの問題(食育、アレルギー対応、ネグレクトなどなど)に給食を通してふれあい、何とかして“美味しい”“楽しい”と思わせたいと思うようになる、人としての成長物語。
遠藤彩見さん、初読。
なんとなくタイトルだけ知っていて、なんとなく予想していた展開通りではあったけれど、なるほどこれは人気が出るわな。
だって、部活ものやお勉強ものより、たぶん今の大人全員がもれなく経験していて、ひとつやふたついい思い出も悪い思い出もあるはずだから。
そして、親になった人なら、子供の給食は遅かれ早かれ、もれなく避けて通れないものだから。
色々な視点で読める幅の広さ、読みやすい文体、だけど意外と深い現代的なテーマにもふれていて、さじ加減が上手いと感じた。
なるほど、脚本家さんか。
ちなみに、私が子供の頃の給食の教えは、『残さず全部食べなさい』であり、『時間内に食べられなければ居残り』であり、『早い者勝ち』だった。
好き嫌いはないけれど、とにかく食べるのが絶望的に遅かった私にとっては、給食は辛い時間だった。
これから続く物語の中で、そんな子供が登場したら、ものすごくシンパシーを感じそう。
佐々目を何かと悩ませる栄養士・毛利が、何となく浮いているというか、一人だけ重い過去を抱えてる風でちょっと違和感があるが、シリーズでこの辺りも良くなっていくかも。
個人的には手芸男子、家庭科の深津先生がいい味出しててお気に入り。
そう、給食の「おばさん」ではなく「おにいさん」であること、家庭科の先生が男性である事も、ちょっとした現代的なスパイスですね。
- 感想投稿日 : 2021年5月30日
- 読了日 : 2021年5月28日
- 本棚登録日 : 2021年5月28日
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