三国志: 演義から正史、そして史実へ (中公新書 2099)

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  • 中央公論新社 (2011年3月25日発売)
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渡邊義浩 「 三国志 」三国志演義 と 正史の違いから政治的意図を紐解いた本


三国志 正史とは 「正しい歴史」という意味でなく、国の「正統な歴史」という意味。事実か否かでなく→漢の正統を引き継ぐ国はどこか→その国の歴史が正史 という論理。歴史は勝者の記録である ことを再認識



諸葛亮と劉備の活躍は 正史でも演義でも吉川三国志でも見れるが、曹操の功績は正史でしか見れない。とても面白かった。関羽が義の極みとして神格化していることを初めて知った。


三国志の正史と演義の違い
*正史の正統=曹魏=曹操
*演義の正統=蜀漢=諸葛亮
*曹操を正史は悪者としないが、演義は悪者とする
*関羽を 演義は義の極みとして 神格化
*演義において 諸葛亮は 正統の劉備を助け、漢を復興する人として描かれる
*演義は滅びの美学を描いた文学〜漢の正統をひく劉備が建国し、神となった関羽、知識人が忠義を仰ぐ諸葛亮が支えた蜀漢の敗北を描く


中国を理解する上でとても役に立つ
*仁と愛の違い(仁は内であって外でない。義は外であって内でない)
*儒教の人間観に含まれた差別(性三品説、華夷思想)


仁と義の違い
*仁は愛〜全ての者を等しく愛するのでなく、強さが異なる
*義は 他者との関係を中心とする。誰かが生き延びて 家を守る〜関羽は 敵である曹操であっても 信義で結ばれているかぎり 命をかけて守る


儒教の人間観に含まれる差別
*性三品説(人は善だけの上品、悪だけの下品、善悪両方を持つ中品に区別される)
*華夷思想(中華と異民族は人間として異なり、中華が夷狄の君主となるべき)


曹操の功績
*青州という軍事的基盤、屯田制という経済的基盤、献帝という政治的正統性を持つ
*儒教国家の復興は目指さなかった
*唯才主義〜賄賂を受け取るような人間だとしても才能が高ければ登用
*漢と結びついた儒教の価値を相対化するため、文学という新しい文化的価値をつくった

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月1日
読了日 : 2020年8月1日
本棚登録日 : 2020年7月28日

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