文庫刊行当初より、このやや妖しげで蠱惑的なタイトルに惹かれ、ずっと読みたいと思いつつ数年、やっと読むことができました。
エズキウムの地で、右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠と三つの品をもって生まれてきたカリュドウは、産婆をつとめた女魔道師エイリャに引き取られ、育てられました。
十二歳のある日、カリュドウの目の前でエズキウムの支配者にして魔道師長アンジストにエイリャが惨殺されます。
カリュドウは隣国パドゥキアに逃れ、復讐の決意を胸に魔導師の修行に励みますが、取り返しのつかない失敗を経た後に、「夜の写本師」を志すこととなります。
育ての親の復讐譚かと思えた物語は、一千年にも及ぶ、そして三つの石にまつわる3人の女魔道師が関連する、壮大な魔法と復讐の物語へと展開していきます。
魔道師同士の戦いの描写は残酷で血腥く、目を背けたくなる描写も多々あり、全編を通して流れるダークな雰囲気にも慄かされます。
ただ、それにも増して、カリュドウ自身とその復讐の行く先が気になって、夢中になって読ませられてしまいました。
ラストに出てきた少女は、そんな物語の中での、期待と希望の象徴ということになるのかなぁ?
素直に続いていく話とは思えないけど、「オーリエラントの魔道師」シリーズ、続けて読んでみたいと思わされました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
乾石智子
- 感想投稿日 : 2021年5月9日
- 読了日 : 2021年4月12日
- 本棚登録日 : 2021年3月28日
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