中高年ひきこもりとは何か。実例、実態からその対策まで。
正直モヤモヤする一冊。
まず、この本のいい点からあげる。
ひきこもりが青年期から家に籠っている人々というより、仕事で傷ついて退職し、次につながらなかった人々の方が多いという点が書かれている点は良い。今まであまりふれられてこなかったひきこもりのセクシャリティ、女性のひきこもりについて書かれている点も評価。
藤田孝典さんは貧困や労働問題の専門家だし、セクシャリティについては良い助言者がいたのだろう。
ただ、それ以外の部分では目新しい感じはあまりなかった。
当事者を交えて当事者目線での支援というのは確かにもっともだが、ひきこもり研究の第一人者である斎藤環さんがオープンダイアローグの日本の伝道者なことを考えれば何を今さらといった感じもする。
この本を読んで全体的にモヤモヤするのはなぜだろうと考えていたが、やっと分かった。
この本の一章で取り上げられている内閣府のひきこもりの定義がそもそも無茶苦茶なのだ。外に出られるが、マッチングしてなおかつ食べていける働く場が得られない人をひきこもりとして定義してしまうことがそもそもおかしい。
ー社会問題を背負わされた人たちー というサブタイトルのとおりこの本はその点をしっかりと指摘した本の構成が成されているのだが、この定義の部分をはっきりと問題視していない為に非常にモヤっとしてしまう。
ただ、こういった感想は私がそれなりに長く問題を追っている現場の人間だから感じることなのかもしれない。
あまりひきこもりについて関心を持って来なかった人にとっては、現在の「ひきこもり」の問題とは何かを知ることのできる本となる可能性もある。
もし、この本がベストセラーとなり、多くの人に「ひきこもり」の問題点が伝わるのであれば、この本の私の評価は5点満点に変わるだろう。
※ 2021追記 藤田孝典氏がネット等でヘイト発言を繰り返すようになったことに抗議し評価を1点に修正しました。
- 感想投稿日 : 2019年11月5日
- 読了日 : 2019年11月5日
- 本棚登録日 : 2019年11月4日
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