ひとりでがんばらない! 子どもと考える福祉のはなし (大人は知らない・子どもは知りたい!)
- クレヨンハウス (2022年2月10日発売)
絵本?という印象だが、5年生の漢字からルビを振っているところを見ると小学校4年生~あたりを対象としているようだ。
対象がその年齢だとして改めて読んでみると、この本はかなりチグハグな印象を受ける。この本は文章や単語は小学生に難しいが、内容は問題を単純化し過ぎて小学生にとっても稚拙に感じる。分かりにくいのに単純。難しいことを分かりやすい文でという子ども向けの本の理想とは真逆である。しかも低学年に語りかけるような語り方をしていてそこも非常にアンバランスだ。
困ったことに、単純化した内容や低学年向けな語り方によって、この本は子ども向けのある種の思想教育の様に見えてしまっている。その最たるが最後の章の「福祉って資本主義とたたかうもの!」という文だ。こういった極端な言い回しがいたるところに見受けられる。
絵本の半分とも言える絵は素朴でいい味を出しているのだが、そういった思想教育っぽい文と並ぶことによって絵の素朴さが反転しとても不気味なものに感じられてしまう。プラスにマイナスをかけると大きなマイナスになってしまうのと同じだ。
同じ様にクレヨンハウスの講演を元に小学生向けに書いた本である浜矩子の『大人は知らない・子どもは知りたい! お金さえあればいい? 子どもと考える経済のはなし』も読んでみた。確かにこちらもやや問題を単純化し過ぎるきらいを感じたが、お金や経済についての難しい部分を小学生にも分かりやすく説明していて、その上で経世済民という本来の経済が持つ役割や自説を展開している。
同じくクレヨンハウスの『原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし』も読んだが、小学生中高学年向けだからといって幼児に語りかけるような書き方は2冊ともしていない。
なぜこの本だけこんなにもバランスが悪いのか。
小学生向けの本としてこれはきつい。
- 感想投稿日 : 2022年2月26日
- 読了日 : 2022年2月26日
- 本棚登録日 : 2022年2月22日
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