ディープラーニングの仕組みと人間の認知のメカニズムを対比させることを通じて、「拡張された理性」としての人工知能を我々の社会の中でどう位置付け、生かすべきなのかを、幅広い学際的視点から考察した一冊。
深い階層を持った関数を学習することで、有効なパターン(特徴量)を見出すというディープラーニングの仕組みが、画像認識のような外部環境のモデル化において大きな成果を上げたことは、人工知能も人間と同様に、知覚運動系と記号系という二つの系の有機的な連携によって発達し得ることを示唆しており、このような人工知能の発達は、認知革命と科学革命がもたらした”人類だけが理性を持ち、この世界の全てを真に理解することができる”という前提を覆すとともに、還元主義や自然主義といった生命観をも転換させるとして、著者らは人間と人工知能に共通する新たな認知構造としての「強い同型論」を提唱する。
人工知能が人間を凌駕するという脅威論に対しては、著者らは人間も人工知能も間違い得るのだという「可謬説」の立場から、あくまで人間が謙虚にイノベーションを推進することが、経済学でいうところの「神の見えざる手」のように、人工知能も含めて社会全体に利益をもたらすと反論する。政治哲学論から量子力学まで、幅広い観点から「人間の知性」を見つめる著者らの思索の深さに圧倒される、パワフルな教養書となっている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ソーシャルイノベーション
- 感想投稿日 : 2021年1月11日
- 読了日 : 2021年1月11日
- 本棚登録日 : 2021年1月11日
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