1951年に書かれた戯曲なので、20世紀っぽさを感じます。
日本の初演は1957年浅利慶太演出の劇団四季の舞台みたいです。2007年には蜷川幸雄演出、松たか子主演で上演されたようです。
ジャンヌの生涯そのうち、
[何故単なる羊飼いの少女が領主やら王太子やら教会の偉い人やら戦場の指揮官を説得できたのか?]
という疑問をたどっています。勿論作者の推測の域を出ていませんが。
ジャンヌ自身がどうしていいかわからず、必死に説得していた事はうかがえます。ただ、このジャンヌ・ダルクは19世紀以前に書かれたものと違って、あざといというかずる賢い印象も拭えません。一国の政治や軍隊を動かしてしまう訳だから、単に純粋なだけでなく、頭も良くて度胸も座っていたのだと思います。なので、ここで描かれているジャンヌ像もなくはないでしょう。
場面は最初から最後まで、ほぼ裁判の様子を描き、ジャンヌの過去を語るシーンで、回想シーンのように当時関わった人達が登場してその様子を実演する…という形式をとっています。なので実際に観劇したら疲れる芝居だろうと思います。読んでいるぶんにはさほど疲れませんが。
そして本書の最も大きなテーマが己の確立。ジャンヌは〈声〉に後押しされ、〈声〉の指示に従っている間は物事がスムーズに運びました。しかし〈声〉が聞こえなくなると、どう行動していいのか迷います。親の言い付けに従っていた子ども、会社の方針に従っていた社員も、一旦枠が外されてしまえば、どうするかを決めるのは自分しかいない。この辺もとても20世紀的だと思いました。
- 感想投稿日 : 2021年12月29日
- 読了日 : 2021年12月29日
- 本棚登録日 : 2021年12月29日
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