わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)

制作 : 渡邊利道 
  • 東京創元社 (2017年8月31日発売)
4.07
  • (15)
  • (22)
  • (6)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 182
感想 : 27
4

一つの決定がかくも人の未来を変えるのか……と。
ヒロインの結婚という決断を起点に、それぞれ二つの世界が並行して描かれるパラレル小説。
秀逸だなあと思ったのは、どこまでも人間ドラマを描きながら、私たちが知り得る「現実」とは少しずつ違うこと。
それは「ちょっとした決断で、世界は大きく変わり得る」と思わせる静かな迫力に満ちている。

また、どちらの世界にも「性」の曖昧さが書かれていることも興味深かった。

そして当然のことながら、選ぶ相手が違えば、「生まれてくる子ども」は違うという事実……!
そこからさらに生まれてくる子どもたちも変わる。関わる周囲の人間たちの運命も変わる。
なんという運命という名の模様の数々。
大聖堂やモスクの美しい天井画を思い浮かべてしまった。あらゆる形、色がはめ込まれている。
無数にある世界線の、それぞれの模様が違う。
なんとも恐ろしくて、そしてじんわりと静かな気持ちになった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2017年12月20日
読了日 : 2017年12月16日
本棚登録日 : 2017年12月16日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする