星界の紋章2: ささやかな戦い (ハヤカワ文庫 JA モ 1-2)

著者 :
  • 早川書房 (1996年5月11日発売)
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アーヴ星間帝国の貴族になった少年ジントと、帝国の王女ラフィールの冒険を描いたSF小説です。前作『星界の紋章Ⅰ』の続きからになります。

最初にあらすじから。ジントとラフィールは、帝国の王女と貴族という身分を隠して、人類統合体に追われる身となります。戦艦から脱出した後、二人はフェブダーシュ男爵領に不時着しますが、そこで男爵に囚われてしまいます。ジントは、前男爵スルーフの助けを借りて、ラフィールを救出。そして、二人はスファグノーフ侯国を目指しますが、そこはすでに人類統合体の手に落ちてしまっていたのでした。地上人になりすまして、レジスタンスと協力しながら、帝国の救援を待ちます。一方、帝国は、スファグノーフを奪還するために、トライフ提督率いる大艦隊を送ります。

この本の魅力の1つ目は、やっぱりジントとラフィールの関係だと思います。二人は、異なる世界の出身で、互いに理解しにくいことも多いけど、それでも一緒にいることを選んで、信頼を育んでいくんですね。地上での逃避行のシーンは、本当に面白かったし、微笑ましいものでした。ジントは、宇宙では戸惑っていたけど、地上ではラフィールを守るために勇気を見せます。また、ラフィールは、王女としてのプライドがあるけど、ジントに対しては素直さを見せるんです。二人のキャラクターが成長していく様子が、見ていて嬉しかったです。

もう一つの魅力は、アーヴという種族の描写です。アーヴは、人類の一派でありながら、人類とは違う歴史や文化を持っています。彼らは、自分たちの誇りや矜持を大切にして、恐れを知らないくらいに勇敢に戦うのですが、その生き様は、人類統合体や地上人にとっては、理解できないもの。それでも、アーヴの行動には、彼らなりの理由や意味があるのです。この本では、そんなアーヴの歴史や社会構造などが詳しく語られていて、彼らの性格や思想を垣間見ることもできました。アーヴは、人類とは違う人類という感じで、とても興味深い種族だと感じました。

この本は、SF小説としても優れていると思うけど、それ以上に、人間の心や感情を描いているところが素晴らしいと思います。互いに違う世界の人間でありながら、共に成長していくジントとラフィール。彼らの関係は、人類とアーヴの関係の象徴と言えるのではないでしょうか?SFファンだけでなく、人間ドラマが好きな人にもおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(SF)
感想投稿日 : 2024年1月14日
読了日 : 2024年1月13日
本棚登録日 : 2024年1月14日

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