筑波大学の大学院科目「日本語史研究(3A)」「日本語史研究(3B)」の指定参考書。
史的な挿話と伴に。
トピックを絞って取り上げる。「日本史」と言うだけあって、時代背景や話し手(書き手)の立場の解説が丁寧でしっかりしている。
通史の解説では無いため、言葉の変化の流れを概観するには以前レビューした「はじめて読む日本語の歴史」を読んでおくと理解しやすいかもしれない。共通のトピックに対しても、本書はやや深掘りしていて詳しい。例えば上代の甲/乙類母音について章の半分を費やして、使い分けと意味の違いを示してなぜこのような分類になっているかまで解き明かす。とはいえ難しい議論はそこそこにして、適度な掘りの深さに留めているのだという。
扱うのは明治時代までで、現在の新しい言葉づかいにはまとまった記述がない。正直なところ「話し言葉」と言うには少々イメージが違ったのだが、親しい間柄の日常会話にはあまり触れられていない(資料上難しいのだろうか)。場面に応じた言葉づかいに言及がある点が良い。
目次
○プロローグ
1.言語学的な準備
○古代の日本語
2.上代の話し言葉をさぐる
3.音韻の変化
○古代・中世の文法
4.中古・中世の話し言葉をさぐる
5.係り結びを考える
6.移り変わる文法
○中世話し言葉の世界
7.鎌倉時代の仮名書き漢語
8.漢語を使う人々
○文字となった話し言葉
9.中央語と方言
10.近世スタンダードの誕生
○エピローグ
11.スタンダードが東京語を作った
○補説
12.音声と音韻―言語学初心者のために
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
大学指定参考書
- 感想投稿日 : 2022年5月17日
- 読了日 : 2022年5月17日
- 本棚登録日 : 2022年5月17日
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