政策形成 (BASIC公共政策学 10)

制作 : 小池洋次 
  • ミネルヴァ書房 (2010年9月1日発売)
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BASIC公共政策学シリーズです。

本書は、政策形成の現状と課題について、各アクターの視点からコンパクトにまとめられた1冊です。
各章では、政策担当秘書などの政治家周辺の政策アクター、国家公務員、都道府県公務員、市町村公務員、経済界、シンクタンク、メディア、学会、NPO等を切り口に、それぞれ実務経験者が執筆者となって政策形成能力向上のために必要なスキルや環境整備について書かれています。

第2章では、政治家周辺の政策アクターについて、①情報収集力が求められる政策担当秘書、②野党議員との接触が多い衆参調査室スタッフ、③体系的・長期的な視点を持つ国会図書館スタッフ、④議員立法に欠かせない議院法制局スタッフ、⑤政党の政策立案力を支える政党スタッフなどの特徴がそれぞれ簡潔にまとめられており、勉強になりました。これらのアクターが抱える、採用制度、調査能力、人員規模などの課題については、早急に制度を見直す必要があると思います。
その他にも、シンクタンクにおける日本の現状がアメリカとの対比で説明される第7章、政策人材を輩出する学会の現状と課題に言及している第9章も、それぞれ整理されていて読みやすかったです。特に第9章では、大学経営の観点から専門職大学院設置の流れが生まれ、法科大学院や会計専門職大学院などでカバーしきれない政治行政系・財政系学生の受け皿として、政策系の大学院が設置されたとする説明に関心を持ちました。

また、第1章で扱われる「官民の人材移動の促進」は、各章でもほぼ共通して取り上げられているように、政策アクターに関わる最重要論点の1つです。ただ、このよく言及されるテーマを考えるためには、日本の公務員観、組織文化、労働法制等々の総合的な検討が必要です。加えて、人材移動の在り方についても、人材交流なのか中途採用なのか等の各論に立ち入って議論しなければ、あまり有益ではないように思います。さらには、個人が組織に抱く日本人特有の帰属意識の在り方についても議論する必要があるかもしれません。

本書は、各論が整理されている点で使い勝手はいいですが、新たな論点等はあまり多く発見できませんでした。
この種の本を手元に置いておきたい人にはおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 公共政策・公共経営
感想投稿日 : 2013年2月17日
読了日 : 2013年2月17日
本棚登録日 : 2013年2月17日

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