フィンランド・森の精霊と旅をする - Tree People (トゥリー・ピープル) -
- プロダクション・エイシア (2009年5月20日発売)
人間と樹の関係を、例えば「持続可能性」という観点から、捉えなおすことももちろん重要ではあるのだけれど、
もっと大きな意味での「記憶」であったりとか、文化的な物語から、
人間の中に畏怖であるとか、羨望であるとかいうものを呼び起こせたのなら、
世界は大きく変わっていくのだろうなぁ。
今の社会を成立させているのは、
勿論欲望の肥大、安楽さの希求ではあるのだけれど、
その皮をもう一枚剥がして見えるのは、
自然への畏怖の欠如であり、
それはつまるところ人間の「生」の軽視なのだろう。
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かつて人びとの信仰を集めた樹木が、
まだここ、私たちの森の中に生きています。
古代には、「寺院」とされていた場所です。
神殿は、大理石ではない、黄金でもない、ただ、裸の空の下でふるえる木々。
そこでは、自然の神秘のささやきをいまも感じることができるのです。
森は、はかりしれないほど豊かで多彩な物語に満ちています。
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精霊たちの暮らす森は、人の属さない領域です。
森の精霊たちのとりなしがあってはじめて、人は森の許しを受け、森と接することができます。森の恵みを得るために、人は境界を渡って森へわけいります。敬意をもって、森を傷つけないように細心の注意を払いながら。
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父さんは50歳の若さで亡くなった。春の種まきの季節に、父さんとふたりでカルシッコの木の横を通りかかったとき、大きな枝が折れて別の根の付け根にぶら下がっているのを見てどんなに驚いたことだろう。どう説明していいのかわからない光景だった。風はまったくなかったし、折れた枝はいたって生き生きとしていた。その年の8月、父さんは突然亡くなった。動物はあらゆる種類のことを敏感に察知することができる。いったい木はどうなのだろう。
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死後 人生の記憶をとどめるため 名前と生きた時間が刻まれる松の木 人びとの思い出は やがて木々の生命力の中に包まれていく
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当時、森の重要性についてはたえずさまざまなメディアが強調していましたが、どれも経済的な効果や、エコロジカルな視点ばかりでした。森の文化的、精神的な側面は、議論からいつも抜け落ちていました。
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私たちのプロジェクトがきっかけになって、木と人とのスピリチュアルな関係、その歴史や神話が、学校の教材として扱われるようになりました。
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- 感想投稿日 : 2013年12月13日
- 本棚登録日 : 2013年12月13日
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