『ミシン』でどっぷりその世界観に浸かった私。流れるようにこの本を手に取りました。『ミシン』よりも若干毒が強めですが、とてもいいアクセントにもなっていたと思います。やはり嶽本野ばらさん、お耽美でお美しい……
以下、拙い感想です。(かなり長いです)
『レディメイド』
文章は短いながらも、嶽本野ばらワールドへの入場にはぴったり。希望を持たせる終わり方と二人の関係の行方……憧憬の世界であります。
『コルセット』
世の中の皆は重たいコルセットをつけて生きている……。そんなふうに「生きづらい世の中」を表現し、明日こそは死ぬ──と無聊を慰める日々を送るイラストレーターの「僕」と、意味の無い笑顔を振りまく「私」の歪んだ、それでいて儚い恋愛物語。
この話に出てくる「私」のように、生きることに迷っている(とでも言うのでしょうか)姿には共感できる部分も多く、男性版ファムファタールの「僕」に婚約者を置いておいてでも逢いたい、交わりたいといった感情には少なからず私も至ったことがあります。羨ましい……。
読み始めは、死ぬ死ぬ言っている主人公の「僕」が運命の人と出逢って死ぬ事を止めるのかなーなんて浅いこと思ってましたけど、終わり方はハッピーエンドでこそあれ、何か蟠りが残るような、想像していたのとは違った、儚い終わり方だったようにも思えます。
なんか支離滅裂ですが、まとめると、すごい作品です(笑)
『エミリー』
我が乙女を貫け!
表題作にして私が1番好きになった作品。『レディメイド』『コルセット』と読んできて現れる衝撃としか言えない作品……!! くるくるシイタケはトラウマもんやろ…。
とまあ、シイタケは置いておいて、今作は特に主要キャラクターの不憫さが目立ったような気がします。居場所がなく、ロリータファッションに生きる「私」と、男性にしか興奮しない「貴方」の「永遠」に終わる恋愛物語。胸糞度高め、毒もモリモリって感じでしたが、2人の姿がこれまた逞しくて、強くて、耽美で……流石嶽本野ばら先生! 感涙でございまする。
さて、感想を書くにあたって、特に私が印象を受けたことを書き残しておこうと思います。
──それは、主人公「私」のロリータファッションに対する気持ち、というか考え方です。
彼女はロリータファッション愛しますが、それは決して、自分に自信を持たせる為だとか、ロリータファッションに身を包む自分に酔うためだとか、この現実への逃避でも、抗いでも、はたまたファッションですらないのです。彼女はたとえ学校で苛められても、Emily Temple Cuteの服を着れば大丈夫だという趣旨を述べている一方で、学校から逃げ帰って来た日は、大切なお洋服を逃げ場にしてはならない、これでは自分が駄目になる、と言った考えをしています。この後「貴方」は「君は何時からそんなに強くなったんだい」と驚きますが、読者の私も驚いたし、感動したシーンでした。このやり取りで、彼女がいかに美しい乙女心を持った少女なのかが窺えると思います。そしてそれは、この『エミリー』において、一番伝えたいことではないのかと思うのです。つまりはこういうことなのです。
他人の偏見にかまうな。自分の美意識を貫け。自分らしい乙女になれ。
……ですが最後のホテルの場面で彼女は、何時しか自分はEmily Temple Cuteを卒業するだろう、と考えます。ですが、それでもいいのです。二人の番いの時間は必ず戻ってくるのです。ずっと待ってくれているのです。
我が乙女を貫け!
私の価値観を大きく変えてくれる、素晴らしい作品でした。
『まとめ』
めちゃめちゃ長くなりましたが、本当に素晴らしい作品たちでした!嶽本野ばら先生、本当に尊敬します!
- 感想投稿日 : 2021年7月1日
- 読了日 : 2021年12月3日
- 本棚登録日 : 2021年4月12日
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