遥かに届くきみの聲 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社 (2020年8月6日発売)
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本棚登録 : 278
感想 : 20
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深く傷つき感情を殺してしまった少年の魂の再生の物語だ。その背景・道具立てとして朗読という世界が使われている。朗読については、大森美香のドラマ「この声を君に」くらいしか知らなかったが、本作でその奥深さを垣間見た。ドラマでは役者が演技力の限りを尽くした声だけの演技を見せてくれていた。そこでは音が実際に聞こえる。しかし、本作は小説だ。音は読み手の想像の中にしかない。にもかかわらず、朗読シーンは、いずれも登場人物たちのキャラクタを纏った朗読として、まるで声が聞こえてくるようであった。それも、物語の解釈と朗読の戦略という「競技」としての朗読をベースとした声が聞こえてくる。こういった物語に出会えるから読書は楽しい。透と遥かのその後の物語をぜひとも読んでみたいものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年8月16日
読了日 : 2020年7月29日
本棚登録日 : 2020年8月16日

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