疑似科学と科学の哲学

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  • 名古屋大学出版会 (2003年1月10日発売)
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感想 : 38
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著者、いちいち人間臭い書き方が持ち味か。

p.149 (原理的なレベルで意見が食い違ってしまっている場合に)「哲学というのはそういう場面で議論を整理してなにがしかのことを言う能力と責任のある学問」

ポパーの方法論的反証主義

補助仮説の後付けad hocの変更。

クワイン「どんな仮説でもどんな観察からも支持される」

決定実験の不可能性。過小決定。underdetermination

観察の理論負荷性。通約不可能性。パラダイム。通常科学。アノマリー。パズル解決。異常科学。科学革命。
「ある科学者集団が共有しているものがパラダイムである」クーン
専門母体disciplinary matrix 世界観や問題設定などいくつかの要素を含んだ広い意味でのパラダイム
見本例exemplar パラダイムの核心となる模範となる回答例

「パズル解決によるアノマリーの解消」という「通常科学」の営みがなければ科学ではない。クーン

ラカトシュのリサーチ・プログラム論。固い核。防御帯。新奇な予言、新しい現象の予測。前進的プログラム:防御帯の変更がどんどん新しい予言につながり、それを成功させていくプログラム。

観察と実験

成熟した科学の理論は近似的に真である。

オッカムの剃刀って切れ味がよすぎるんじゃないの? ベッカムの髭剃りくらいでいいと思う。

日本の科学哲学者は原発、放射能、低線量被曝について語ってるのかな?何を語れるのか興味ある。

工学的設計は科学理論ほど抽象度が高くないので、ひとつの人工物のなかに異なるパラダイムを混在させることも可能だろう。疎結合なサブシステム群として。

ロバート・マートン、コロンビア学派。
科学知識社会学。

標本サイズが大きいと、弱い相関でも有意な結果が出やすい。バイアスの疑いも高まる。

線引き問題で、成功した科学、近代科学(≠機械論的世界観)に分類するかどうかを問題にしている。再現性・操作性の高さにより特徴づけられる。

線引き問題って植民地の「被支配者の屈折した同一化欲望」と「支配者による疎外」の綱引きみたいな問題に似てるなーと思った。

「進歩主義的な結論にするためにはポパーやヒュームを否定して帰納主義を採用する必要があった」という印象の議論。「近代科学の成功は、知的価値において前進してるから成功なのだ」というのが、知的価値=善という補助命題(前提)を置いていて、ぼくから見るとトートロジーな感じもする。

「疑似科学」(あんなやつら)を「科学」の仲間にしたら、科学が「前進」(進歩)してないことになってしまう。だから仲間に入れてやんない。といってるように見える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 批評・思想・哲学
感想投稿日 : 2012年5月26日
読了日 : 2012年5月26日
本棚登録日 : 2012年4月22日

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