暗殺のハムレット (ファージングⅡ) (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2010年7月27日発売)
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本棚登録 : 200
感想 : 22
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ジョー・ウォルトンが送るパラレルワールドの「つなぎ」にあたる本書。ナチス・ドイツはソビエト・ロシアとクルスクで膠着状態にある。アメリカではファッショを信奉するリンドバーグ(実話)が大統領に就任し、イギリスは「ファージング・セット」による右傾化した政権運営が行われていた。物語はひょんなことで「首相と総統の暗殺」に関与することになった女優の手記とスコットランドヤードの捜査官の記録の二頭立てで進んでいく。歴史が雄弁に語るように、「暗殺計画」などというのは突発的に思いつかれ、杜撰に幕引きを迎えるものだ。『暗殺のハムレット』でも、まるで四則計算でも解くかのような容易さで爆弾が製造され、暗殺の舞台となる劇場に据え付けられる。政治家や革命家は大義名分を声高に叫び、人々を煽情するものと思いがちだが、人間の行動など案外単純で、思いつきで出し抜けに為されるものかもしれない。捜査官は前作の『英雄たちの朝』から引き続き物語の中心におり、いくつも脛に傷を負わせられながら、パラレルワールドをヒタヒタと歩かされる。つなぎのせいかややダレるが、彼の背中を見つめながら読み進める価値あり。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: スリラー
感想投稿日 : 2013年1月5日
読了日 : 2013年1月4日
本棚登録日 : 2011年11月19日

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