ピアニストが見たピアニスト: 名演奏家の秘密とは (中公文庫 あ 64-2)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122052697

感想・レビュー・書評

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  • 6人の伝説的なピアニストの小伝記。

    著者もピアニストであり、聴き、批評する立場ではなく、同じ演奏者としての親しげな視点から語られる。彼らの演奏に対する個人的な印象から、演奏家としての軌跡の丁寧なレビュー、そして彼らを巡る人々、時には彼ら自身の言葉から、舞台の上の伝説にとどまらない人物像が浮かび上がる。

    正直、クラシックやピアノ演奏には全く見識がなく、リヒテルやアルゲリッチといったビックネームへのミーハー的(死語…)興味から手に取りました。アルゲリッチは手のかかる子どものようで可愛らしかった。

  •  リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェックの、陰に隠れたプロフィールとでも言えようか。
     薦められるままに読んでみたら結構面白かった。
     ピアノ曲にそれほど造詣があるわけでもないから、引用されている曲のそれぞれの部分を俄にアタマの中で思い浮かべるのは無理ではあったが。
     普段ぼくらが垣間見ることのできない、有名ピアニストの私的な部分を様々な切り口から見せてくれる。伝記物とはまたひと味違った趣。
     傲慢そうな演奏をする(とぼくには思える)アルゲリッチが、実はステージに出るのをたいそう怖がっているという下りには、「へぇー!」だった。
     最後のハイドシェックの項が、多分著者が一番思いを込めて書いているように感じられる。
     頻繁に出てくる「ルバート」という語をぼくは知らなかったが、文脈から「自由に」という意味合いだろうと見当を付け、怠慢なことに、読了するまで遂に辞書を引かなかった。

  • ピアニストたちの超人ぶり、また弱さ、ナイーブさを抱えた面が印象に残った。子ども時代にはピアノを習っていなかったリヒテル。プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の演奏を寝ながらにして聴いて覚えたというアルゲリッチ。しかしリヒテルもアルゲリッチも舞台で失敗する怖さをいつも感じていたとのこと。それが逆に霊感に満ち、神が降りてきたような演奏をしていた!ミケランジェリは暗譜が苦手、完璧で冷静な演奏で有名になったが、若い日には実は情熱的な演奏を行っていた。ジャズを弾き、そしてショパン・ドビュッシー・バルトークなどにジャンルが偏ったサンソン・フランソワ、ヴァイオリンのクリスチャン・フェラスとの長年のデュオの始まりと解消、そして硬質な音楽とされたピエール・バルビゼ。貴公子と鬼神の両面で日本で人気があったというエリック・ハイドシェックが晩年18番だったハンマークラーヴィアで演奏会中に止まり、うつ伏して泣いたというお話。リヒテルの章で紹介されているが、暗譜がクララ・シューマンから始まり、当初は作品に対する冒とくだと受け止められていたとは驚きの事実である。また絶対音階が狂ってきたために瞬時に半音階を上げ下げした演奏をするそのテクニックは奇跡としか思えない!この6人の他にもホロヴィッツ、コルトー、ポリーニ、バレンボイムその他随所にピアニストの演奏の解説が楽しい。

  • 100602

  •  リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェック。
     名演奏家にモノ書きピアニストがせまるエッセイ。

     私のショパンとの出会いは、サンソン・フランソワだった。
     レコード屋であれこれ見て、チョイスしたのは、まぁ多分サンソン・フランソワが男前だったからなんだろうww すりきれるほど聞いて、結局のところ私はショパン嫌いになっている。いや、聞くのは好きなんだけど、自分で弾くのは嫌なのだ。
     よーするに、フランソワを聞きすぎてあれ以外のショパンはどうしたって違うものに感じられて、嫌ってことなのかもしれない。と、これを読んで思い至ったのでった。

     サンソンの孤高は、<絶対>の領域なのだ。

     ピアニストのテクニックを特に手や指に焦点をあててるのは、興味深かった。これは、やっぱり著者がピアニストであるゆえに書けるものなんだろう。

     全体的には伝聞が多くて…。
     実際に周知であるハイドシェックの項との温度差がちょっとありすぎたかな。

     ともあれ、うまくまとまってて、<よくできました>って丸したい感じでしたww

  • マルタが丸太。お父様おちゃめ。確かに。

  • ピアニストの天才ぶりと苦悩

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著者プロフィール

ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院卒。東京藝術大学大学院博士課程修了。学術博士。武満徹、矢代秋雄、八村義夫作品を集めたリサイタル『残酷なやさしさ』により平成元年度文化庁芸術祭賞。演奏と文筆を兼ねる存在として注目を集め、安川加壽子の評伝『翼のはえた指』で吉田秀和賞、『青柳瑞穂の生涯』で日本エッセイストクラブ賞、『六本指のゴルトベルク』で講談社エッセイ賞、CD『ロマンティック・ドビュッシー』でミュージックペンクラブ音楽賞。2020年、浜離宮朝日ホールにて演奏生活40周年記念公演を開催。テレビ朝日『題名のない音楽会』、NHK Eテレ『らららクラシック』、『ラ・フォル・ジュルネ音楽祭』『東京・春・音楽祭』等にも出演。日本演奏連盟理事、日本ショパン協会理事、養父市芸術監督。大阪音楽大学名誉教授、神戸女学院大学講師。

「2023年 『安川加壽子の発表会アルバム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青柳いづみこの作品

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