徳川慶喜 最後の将軍

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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163170404

作品紹介・あらすじ

その英傑ぶりを謳われながらも幕府を終焉させねばならなかった十五代将軍の数奇な生涯を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 徳川最後の将軍という事は当然知っていたが、
    あまり印象が無い将軍でした。
    これ程多彩で幕末の厳しい舵取りを抜群の頭の回転で考え
    動かれた家康以来の名君だったという事が知れて良かった。

  • あんまり小説としておもしろいとは思わなかった。が、やっぱり幕末、特に幕府がしまるところはドラマがあっておもしろい。新政府側の人達はもちろん華やかで、新しく、勢いがあるけど、幕府側の慶喜や勝なしでは成し遂げられなかったのでは、と思う。

  • 司馬遼太郎と言えば幕末の小説、
    幕末と言えば徳川十五代最後の将軍徳川慶喜。
     
    ということで、これはNHK大河ドラマの
    原作にもなった『徳川慶喜』を綴った物語です。
     
    徳川慶喜という人は、最後の将軍になってしまった
    悲劇の人だとか、時代の流れから為す術がなかった
    まさに時代に翻弄された人、という印象がありました。
     
    しかし、司馬遼太郎の『徳川慶喜』像は
    そういった印象とは違うものでした。
     
    頭が良すぎて周りの人がついてこれないくらい。
     
    未来が見えすぎて、徳川家の頂点に立つ
    存在でありながら、幕府がもうもたないことを
    どこか冷めた目で見ている、
    司馬遼太郎の『徳川慶喜』像は
    そのような印象だったようです。
     
    司馬遼太郎ファンはもちろんのこと、
    『徳川慶喜』像の一考察として
    読んでおくことをおすすめします。

  • 普通の文庫本一冊にまとまった、内容濃く読みやすい慶喜本。
    とにかくもう歴史のイベントが目白押しで、目の回るような忙しさだけれども、
    多分これでも、目一杯要領よくまとめてあるのだろう。

    慶喜の通説的な評価を一言で言えば、「一人大阪城を逃げ出した腰抜け」かな?
    この本を読めば、そこに至るまでの慶喜の熟慮の過程もよくわかるし、
    側近を次々奪われ、どんどん孤立無援に陥って行きながら、
    周囲の過剰で無責任な期待ばかりが重くのしかかっていく様子は気の毒なくらい。
    でも、本人がそのことをさほど深刻に受け止めてなさげなのが、救いといえば救いですか。
    大局を俯瞰する眼力がありながら、好まざる敗軍の将を担う羽目になる世紀の貧乏くじも、
    悲愴に陥らずに、結構さばさばとやり遂げてしまっているようにも見えます。
    ほんとうに高貴な心のお方なんですねぇ・・(笑
    何でもできる英邁な人でもあり、他人の心に斟酌しない、生粋のお殿様でもあり。

    前述の「大阪城バックレ劇」のとき、会津藩主で新撰組の親玉・松平容保だけは
    純粋に慶喜を心配して、護衛についてくれるのですが、
    「よ、よかった。まだ慶喜に味方してくれる人がいた・・・」
    などと、こっちは今までの孤立っぷりにハラハラしてた分、少しホッとしたのに、
    そもそも容保を連れて出たのは会津に対する人質に過ぎなくて、
    しかも無事江戸に着いたら彼のことは邪魔だから捨ててしまう、とか。おい(笑
    さすがにここは「ヒデー(笑」と、声に出してしまいましたよ。
    優しい人ではないですねぇ。そうそう人間的魅力に溢れたヒーローとは行きません。

    女性なしでは一晩もいられない、エロ殿様ぶりも苦笑しちゃうし、
    まぁそもそも、父親の斉昭公もそうだったみたいだけど。
    京の宮家からお姫様を正妻にもらうのはいいけど、
    ついてきた女官に手当たり次第に手をつけまくってしまい、
    次々におなかが大きくなる彼女達を見て、正妻の姫が、
    「どうしたみんな、病気か?」と心配したという・・・ってこれは別の本だったかも(汗
    やはり京から来た、才色兼備の女官「唐橋」も、
    手をつけちゃったら大奥にあげられなくなるからと言って慶喜は我慢してたのに、
    斉昭公にお使いに出したら、ついでにぱっくり食べられてしまった、とか、
    ここいらへんはもう、ヒド過ぎて滑稽で笑うしかないですわね。
    食い散らかされた女の人たちには申し訳ないですが。

    将軍に就いてわずか2年で、慶喜は政権を返上して表舞台から姿を消しますが、
    その後は趣味三昧で楽しく暮らしたというあたり、凡人と違ってて素敵ですな。
    権力なんか、ぜんぜん執着ないんですもんね。
    徳川16代当主になる家達さん(44話に出てた亀君?)と、
    引退後はそれぞれ別のルートで静岡に移るらしいのですが、
    お供が多くて経済的に四苦八苦する家達サイドの家来達を尻目に、
    珍し物好きな慶喜が自転車に乗って遊んでいて顰蹙を買ったとか。
    そういうのってほんと、すいませんが笑っちゃう。堂々とKYを貫く男。素敵(笑

    薩摩だけは生涯キライだった、っていうのも、個人的にはよく気持ちがわかりました。
    長州は初めから倒幕を掲げていて、爽やかなほどはっきり敵だったからキライじゃなく
    薩摩は、味方みたいな顔をしていてだまし討ちをしたからキライ、というのも、
    価値観がわかりやすくて好感が持てますわ。
    勿論、手段を選ばない力強さで目的を遂げた薩摩は凄いのですが、
    慶喜視点で見れば、極悪人は二枚舌の薩摩なんでしょう。いいじゃん、それで。

    そんな感じで、知りたいことがいろいろ勉強できた、面白い本でした。
    慶喜はいい奴じゃないかもですが、やっぱり私はわりとスキです。
    「篤姫」の慶喜の、あまりのマイナスオーラに当てられてこんなに勉強してしまいましたが、
    あの暗い俳優さんも、これから私、少し追っかけちゃうかもしれないですねえ。
    ほんとここまで来ると、私ってやはりゲテモノ好きなのか?という疑問も再燃か。
    それはそれでいいじゃん!(開直

  • 徳川慶喜の生涯。過去の歴史は、衰弱した権力を決して自然倒壊させていない。権力の倒壊は朽木のように風倒木のように自然に倒れる事はない。新興の者がいずこからかおこり必ず天使を擁し、過去の秩序に賊名を着せ、それによって天下を糾合して寄ってたかって討とうとする。将軍になれば、慶喜はその討たれ者の役になることを知っていた。

  • 何度目かわからないくらい読んでいる。もうちょっと詳しく書いて欲しかったなぁ

  • 第15代将軍徳川慶喜 自分が思っていた人物像と全く違った好印象を持った1冊になりました。
    以前に永井路子著作の「天璋院 篤姫」を読んだ時に徳川慶喜に不快感を持ったのですが、この本を読破してその奥の根底にあるものを突き止めることができました。
    この先は幕末に関する本も読んでいきたいと思っています

  • いつもの司馬遼太郎の作品とはまた違う感じがした
    最後の将軍、徳川慶喜を題材にした作品。
    水戸藩の徳川家は変わった人が多いのかしら…光圀しかり。
    知識人で教養もあり、なかなかいない将軍像。
    激動の徳川幕府から大政奉還もあり
    なんだかんだで生きて大阪城から江戸へサラッと逃げたのも、また彼の運もあればズルいとこでもあるわけで。
    慶喜が1番の明治初期立役者なのかもしれない。

  • 慶喜の聡明さが爽快と悲愴をひきたてる。しかし人の心を読む未熟さは若さと貴族らしさを感じさせる。
    大政奉還は慶喜でなければできなかっただろう。
    徳川幕府の歴史の終末を語る一冊。

  • 昔から慶喜が好きなのはこの本が原作になった大河ドラマの影響もある。
    司馬遼太郎で幕末といえば、『燃えよ剣』『竜馬がゆく』なんだと思うけど、司馬遼太郎が多くの人に読まれるのは、「慶喜」的なものを否定せずむしろ積極的に何かを書こう、もしくは書かなければならないというべつの一面があったからという気がする。
    一方で、芯を曲げないとか何ものかに殉ずるという英雄を書きながら、相反する性質をもった人物をわるく書かないのは、そうした人物を大目に見て、いわば「ダメなやつのこんないいところ」というのではなく、そもそもダメなやつとは一切思っていないところからくるんだと思う。
    だからこそ、最後の最後で慶喜が松平兄弟にする仕打ちは、書いていて相当苦しかったんじゃないかという跡が見られるし、そういう形跡やあとがきににじむ無念さを見ると、立て板に水とはどうしてもいかない部分こそ、凡百の歴史小説とは一線を画した、司馬遼太郎ならではの魅力につながっているのだと思う。
    作中でも役者・慶喜が下々相手に見事に弁じたてる場面がハイライトになる一方で、言い淀んだり、絶句したりする場面もあって、それこそが見せ場だともいえるし、劇的で鮮烈なイメージはむしろそっちの方にあるという気がした。
    日本のハムレットと言ってわるければ、幕末のハムレットと言っていいかもしれない。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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