84, Charing Cross Road

著者 :
  • Penguin Books
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780140143508

感想・レビュー・書評

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  • 1949年から約20年もの歳月をかけて、New Yorkでフリーランスの作家として暮らす女性Helene Hanffと、Londonにある古本屋Marks & Co.に勤めるFrank Doelを始めとした人々との間で交わされた手紙をHeleneがまとめたものが本となり、1970年に出版された”84, Charing Cross Road” (本が出版された1970年に閉店してしまったMarks & Co.があった住所がタイトルになっている)と、1971年になってようやく、長年夢に見続けたLondonを訪れることになったHeleneが現地で体験したことを毎日細かく記した日記がまとめられた”The Duchess of Bloomsbury Street” (こちらは、彼女が5週間ものLondon滞在中に泊まっていたホテルが立っていたストリート名がタイトルに入っている)の2編が一冊の本になったもの。今年に入って、何かのきっかけで”84, Charing Cross Road”の存在を知って興味が湧いたものの、内容が手紙形式ということで耳読書よりも絶対に目読書で味わうほうがいいだろうと思いきや、電子書籍化されていないらしく、ペーパーバックを買うしかないか…と思っていたんだけど、「せっかく買うなら、イギリス旅行中に行きたい本屋さんで買おうじゃないか」と思い、Bathにある”Topping and Company Booksellers”という素敵な本屋さんで無事購入。店内に大量に並ぶ本の中から探し出すことが出来ず、女性店員さんに探すのをお願いしたら、迷う事なくささーっと本がある本棚の前にいき、「どうぞ!」と差し出してくれた。一体全体どんなカラクリでそこにあるのがわかったんだろう…最新のベストセラーでもなんでもないのに…。「えっ、どうしてそこにあるってわかったの??」と聞いたら、可愛い顔で笑っていたけど、きっと店内のどこにどの本があるのかがきちんと頭に入っているんだろうな。凄いなー。そして本を買って初めて、”The Duchess of Bloomsbury Street”も収録されているのを知って、思わず得した気分だった。

    と、そんな感じで手に入れた本だけど、やっぱり目読書にしたのは正解で、New Yorkに住むHelene Hanffという本をこよなく愛する女性が、会ったことがないのはもちろん電話で喋ったこともないLondonに住む人々と、20年もの歳月をかけてかけがえのない友情を育んでいく様子をじっくり楽しむことが出来た。最近読んだ”Miss Benson”s Beetle”が、戦後の配給制度で人々がまだまだ厳しい生活を送る1950年のLondonから始まるストーリーだったけど、それと同時期にHeleneが文通を始めたFrank Doelの家族も、Marks & Co.の他の店員達もみんな、卵や肉などの食糧がなかなか手に入らない生活を強いられていて、そんな人々の手助けになればとHeleneがあらゆる機会にアメリカから食べ物を送ってあげる様子なんかがリアルに綴られていたり、最初はFrankだけがHeleneに返信していたのに、彼をとりまく人々も彼女に興味を持ったり、彼女の贈り物に感銘したりして、Frankに内緒でこっそり手紙を書きだしたり…と、交友関係がどんどん広がっていく様子がとっても微笑ましく、読んでいて本当に心が温かくなった。Londonに行きたいという想いをずっとずっと募らせていたHeleneが実際に訪問する前に、突然亡くなってしまったFrankの死は読んでいてショックだったけど、きっと彼の死と、Marks & Co.の閉店という節目があったからこそ、長い年月をかけて書かれた手紙達が本という形になって出版されたんだと思うし、この本が出版されたからこそ、彼女が憧れのLondonをやっと訪れることが出来たんだから、人生というものは本当に色々あるもんだなぁ、と思ったりした。

    Heleneが5週間もの間Londonに滞在していた時の体験記となっている”The Duchess of Bloomsbury Street”は、彼女がずっと憧れていた夢の都市を、彼女なりに思いっ切り満喫する姿がありありと想像できるようなウィットに富んだ文章で書かれていて、とても面白かった。事あるごとに自分が住んでいるNew YorkとLondonのあれこれを比べて面白がったり(LondonerはHeleneがLondonの喧騒に驚いているはずと思っているけど、New Yorkの喧騒に比べたらLondonは静か過ぎるくらい、とか、Londonのマルティーニはジンの割合が少なすぎる、とか、Londonの”square(公園)”には必ず緑が溢れている為、New YorkのTimes Squareに行きたくて周りの人に道を尋ねていたイギリス人が、実はTimes Squareのど真ん中に立っていたことに気付かなかったらしい、とか)、Londonのあらゆる事や物や人や場所に感銘を受けたり。飛行機に乗って海外に行くこと自体がきっと初めてのことだったんだと思うし、そんな冒険の目的地が憧れのLondonなんだから、彼女が見たこと・感じたことが日記の文章からどっと溢れ出ていて、彼女と一緒に疑似体験しているような気持ちになった。それに加えて、私自身もLondonで数日過ごした直後の読書だったのもあって、自分が観光した場所が登場したりするのも読んでいて嬉しかったし、次回またLondonに行く機会があったら行ってみたいと思う場所もあったりして(特にSt Paul’s Cathedralは、真ん前まで行ったものの時間が無かった&それまでにイギリスの色んな場所の教会を見学していたこともあって、中には入らなかったんだけど…内装が素晴らしく美しいのを帰ってきてから知り、入っておけば良かったと今になって後悔している…とほほ)。そして、”84, Charing Cross Road”で登場した故Frank氏の奥さんと娘さんと実際に対面して更に仲を深めていっただけでなく、出版された本を読んでHeleneに是非会いたいと言うLondonに住むファンや、友人の友人や、地元の新聞社や出版社がひっきりなしに彼女にコンタクトを取り、ランチやディナーやはたまた郊外への旅行へ誘い出したりして、Londonでもどんどんと交流関係が広がっていくのが読んでいてほっこりしたし、そうやって人脈を広げていくHeleneが体験した詳細をこうして事細かに疑似体験出来たのが楽しかった。

    本を通して人と人が繋がっていくって本当に素敵だし、会うこともなく、手紙のやり取りだけを通してこんなに長く友情が続いていくって素晴らしい。私も高校生の頃からメールをやり取りしていたペンパルが海外に2人いて、1人はBerlin、もう1人はIndianapolisにいるんだけど、Berlinの彼は既に結婚して子どもも2人いるお父さんになっている。そんな彼とは昨年のクリスマスにドイツに旅行に行った際にBerlinにて15年振りの再会を果たせたし、Indianapolisの彼とも細々と連絡を取り合っていて、コロナ過が落ち着いた今、シンガポールに遊びに来てくれる約束を取り付けている。彼とも、最後に会ったのは私がアメリカ留学を終えた直後に一緒にアメリカ横断の旅をした時だから既に15年も前だけど、未だに繋がっていてくれるので、この本みたいに彼らとの縁をずっと大事にしていきたいなと今回思わせてもらった。

  • Time Warner Books 版。 84 Charing Cross Rd と The Duchess of Bloomsbury St.の2編が入っています。The Duchess...のほうは、20年以上の文通を経て、ようやく憧れのロンドンを訪れた、Heleneさんの旅行記。毎日の行動や気持ちの動きがこと細かに綴られています。泊まっているホテルのカクテルが気に入らず、バーテンダーにアメリカ流のマティーニの作り方を指導したり、ガイドをしてくれているイギリスの友人(この旅行で初対面)に「いつになったら私の見たいものが見られるのよ!?」とかんしゃくを起こしたり、ちょっと子供のような素直さがあって面白い。
    不器用だし、時には辛口になるけど、基本的に人との関わりを大事にしている人だな、というのが随所に感じられます。

    その独特な読書傾向にも触れています。「書店で本を探すことはしない。図書館で借りて読んで、気に入ったら自腹で買う。
    一冊の本を何十回も、ときには暗誦してしまうくらいに読み込む。
    人が50冊の本を1回ずつ読むのに対し、わたしは1冊の本を50回読むのだ。」

  • Pipoさんの後塵を拝していますが、私がクリック注文したのもこの版だし、表紙イメージが素敵なので、載せます、ね。(詳しくは、Pipoさんの頁参照、事前承諾を得ていませんけれども、お許しを)。『チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 』とは表紙イメージは違いますが、いずれもいいです、画像としては、まずはこちらを。中公文庫版とは、同じ底本、と言っていいみたい(まだ精査していませんが)。タイプライターの文字をそのまま想像させるような、こういうPPの風情(紙の匂いも「和書」と違う)、捨てがたいですねぇ(しみじみ、と)。私からは、表紙に添えられた副題を。 The beloved classic ― a twenty-year correspondence between an American writer and a British bookseller

  • 江藤淳さんの邦訳『チャリング・クロス街84番地』を先に読み、原著が見たくて買い足した1冊。実はリアル若者時代、英文の手紙がきちんと書けるようになりたくて、これを買ったという不純な動機もありました(笑)。

    20世紀半ばの、本の好みにかけてはちょっとうるさい米国のご婦人(主人公)と、大西洋の向こうの、英国の古書店の担当者さんとのやりとりを集めた作品…というよりも、往復書簡集。タイプライター、もしくは手書きでつづられる手紙は、紋切り型でなく、とてもしゃれていて温かいのです。注文の本が手に入らなくても、代わりに好みのものを送ってくれたり、気に入った本のお返しに、不足している物資(戦後すぐだから)をロンドンに送ったり。気心が知れてくるにつれて、主人公の切り口上が和らいでいき、書店のみなさんも手紙にどんどん顔をだすのがとてもチャーミング。「買わないんだったら来ないで」じゃなく、パリッとした白いシャツにネクタイとジャケットの小ざっぱりした紳士と、紺のスカートのご婦人が「お探しものはこちらかと」と、ものやわらかに対応してくださっている本屋さんなんだろうな…という姿が目に浮かぶ〜。

    このやり取りの顛末は劇的ではないものの、双方に平等に訪れる歳月の流れを感じさせ、「そういうことなんだ…」と思わず目を閉じてしまう雰囲気をまとっています。ボリュームは薄いものの、ギュッと詰まった大人の温かみと寂しさが素敵。ヘタに物語を作ってないから、これが際立つのです!

    Amazonのデータを検索すれば、実にたくさんのバージョンが出てきます。英米圏の本好きにすごく愛されている証なんだろうな、と思う本です。結局、英文の手紙は上達しなかったけど(笑)、たぶん、私が書簡体の作品が好き!というもとになっている本のひとつだと思います。森見登美彦氏よ、『恋文の技術』は面白いけど出る幕じゃなくてよ(笑)。

  • チャリングクロス84番地にある老舗の本屋のマネージャーと、アメリカ人読者の女性との報復書簡集。本を愛する人たちの気持ちが伝わる内容にジーンとしました。盛り上がりも何もないのに、面白くて一気読み。日本語版もあります。

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