Cultivating Humanity: A Classical Defense of Reform in Liberal Education

著者 : Martha C.Nussbaum

• Harvard University Press (1998年10月1日発売)

感想・レビュー・書評

[ujikenorioさんの感想 · 2013年12月19日]

神島裕子『マーサ・ヌスバウム　人間性涵養の哲学』（中公選書）読んで、気になり、ざっくり読了。副題「教養科目（liberal education）改革のための古典的擁護」。多様化と専門性がシノギをけずる現代において教養教育はどのようにあるべきか－－。

女性のユダヤ教徒という二重のマイノリティを背負う彼女が実際的叡智と普遍的叡智の意義の交差を問い直す一冊。リベラルに注目するならば、学問とは、学ぶ者を自由にすることが元意だから、彼女は、自身を厳格に反省できる能力（ソクラテス的吟味）と同時に、（還元不可能な属性を持ちつつも）普遍に定位する能力を同時に発光させる＝気づかせるのがリベラルアーツの意義ではないかという。

そのことによって、自己とは異なる人間の存在を自覚することが可能になる。それが物語としての想像力。古典と向かい合うことで自己を知り、他者を知り、世界に参画する。

人間了解としてのリベラルアーツの原意復権を、時代状況を全否定せずに回復させようとする稀有な試み。