ルポ MOOC革命――無料オンライン授業の衝撃

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000022309

感想・レビュー・書評

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  • 2012年に爆発的に利用者が急増したMOOCs(大規模公開オンライン講座)。オンラインで公開され、ネットに繋がる世界中の人々は無料で受講できる講座である。有名な配信機関ものに、コーセラ(Coursera)、エデックス(edX)、ユダシティー(Udacity)がある。いずれも、アメリカで開設されたものだが、その後、他国でも開設が矢継ぎ早に行われている。

    前述の3講座の魅力は、ハーバード大学、MITやスタンフォード大学といった一流大学の中の選りすぐりの授業が公開されていることである。例えば、コーセラの設立目的は「最高水準の授業を世界のすべての人々に無償提供することだ」と宣言している。

    これまでのeラーニングとの違いは、「誰でも」「無料」で受講できること。そして、教える側と受講生に双方向性があることだ。つまり、受講生は講義ビデオを見るだけでなく、ビデオの中で宿題や試験を提出し、水準に達すれば修了証がもらえる。ウェブ上には「ディスカッション・フォーラム」「ピア・アセスメント」への参加が求められ、受講生が学習している地域で集う「ミートアップ」が行われるなど、学びは多角的だ。

    MOOCsの導入によって、地球上のどこからでもネットに繋がれば、最高水準の講義で学べるとか、高校生が大学で何を学びたいかを深く考えるきっかけになるというメリットは否定のしようがない。一方、教育機関、特に大学への影響は必至である。
    より効果的な学習を追及する視点からは、MOOCsを学生の予習に使わせ、授業では教員の役割をレクチャラーから学生のディスカッションのファシリティターに変え、教室での時間を学生との直接対話に費やすことができる。つまり、教室では、教室でしかできない学びを提供する。財政難を抱える大学にとっては、より低コストで教育を実現する道が開かれる。アメリカでは、MOOCsの特定の講義を単位化する大学も増えつつある。

    「15世紀の印刷機の発明に匹敵する革命」といわれるMOOCsの出現。今後、大学がより発展する可能性も衰退する可能性も秘める。意欲あるものは学び機会が無限に広がることは確かだ。それは、大学生だけでなく、小学生から高校生、大学受験生や社会人も。そんな時代が到来しつつあることを、ルポは紹介している。

  •  大学の授業を無料で配信、というすごいコンセプトの動きが始まっているという。知らなんだ。10年くらい前にMITがOCWなる、講義資料を無料公開する、というニュースを知ったときもびっくりしたが、その思想をさらに拡大させたようなものか?
     さっそくいくつかのサイトにあたり、そのバラエティに富む内容にまたびっくり。良い世の中になったものだ。勉強をしたいときに徹底してできる。
     本の後半にあった、この教材をそもそも見ることすらかなわぬ人たちに対して、何ができるか?という観点も今後は持ちたい。

  • 「MOOC」、無料オンライン授業についてのルポをまとめた本。
    受講者側、コンテンツの提供者側、それからMOOCのほとんどが英語で行われている中での日本の現状と、よく取材されていると思う。

  • 代理出席、過去問収集、コピペレポート

    大学在籍時に、学問に対して不敬な手段でも単位が取得できることに対して、「いつか大学が提供する『単位』という概念への信頼が無くなる日が来るかもしれない」と、考えたことを思い出した。

    ひたりひたりと現実味を帯びてきた感じがする。

  • MOOCによって「いつでも、だれでも、無料で」大学教育が受けられる革命が進行中。今後大学の存在意義が問われてくるでしょう。

  • 今変わりつつある高等教育のドキュメント。これは必読物。

  • MOOC(Massive Open Online Courses)について世界で取材した内容をまとめた本。

    各種MOOCの提供側へのインタビューと、途上国から先進国までの事例や体験談が紹介されていて、日本での展開についても紹介されている。

    興味深いのがMOOC受講がそのまま人材のデータベース化を通して就業に繋がる点で、教育機関でありながら人材紹介業であるというビジネスモデルはこれまでにない新しい形だと思った。

  • 日本の小学校中学校のサイト、大学受験サイトも紹介していた。教員養成大学でも取り組むべきものである。基盤整備として、家庭へのネットの無料接続とiPad無料貸出が自治体に課せられた問題になるだろう。

  • moocと呼ばれる、大学の授業をオンラインで公開するシステム。これが広まっている現在の状況をまとめた一冊。

    これを読むと、大学に授業料を払って通う意味を再構築せざるを得ない感覚が出てくる。
    例えば、生の議論をする場としての大学、もちろんその議論は授業として語られることは事前にオンラインで確認済みの上で行うものとするとか。

    そうなると、授業を土台と考えることになるが、そもそも土台以前の基礎工事すら大学で行われている現状では、非常に日本は立ち遅れているな、という印象を持った。

  • アメリカのMOOCの現状をしっかりと記録されていて、教育革命の手応えを得るためには必見の一冊。成り立ちから大学や民間の取り組み、ビジネスモデル(マネタイズ)までしっかりと網羅されている。

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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