新版 文学とは何か―現代批評理論への招待

  • 岩波書店
3.90
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000028684

感想・レビュー・書評

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  • いや、これはmy大ヒットです。なんかの弾みで衝動買いしたのをずっと積ん読状態でしたが、読み出すともう止まらない。夢中になって読みました。
    文章は非常に親切で、入門書に理想的。読者を突き放して難解なタームや単語を並べたり、やたらと「周知のように」「あまりにも有名である」的な言葉で自らを権威付けすることもなく。かといって内容的には少しも安売りすることなく、文学批評理論を歴史的に俯瞰しています。プロとしての誇りと危機にある文学、文学批評、文学部への辛抱強い反論と展望が、程よい鼻息の荒さとともに伝わってきます。ポスト構造主義や精神分析、フロイト=>ラカンのプロセスやフェミニズム、マルクス主義との絡みも実に納得でした。
    ときに、本書の最後にある政治的批評を読み、本書は実は構造構成主義の本であると思いました。効用、そしてgoalsと複数のついたゴールが、それを示しています。

  • Linker No.8
     統合新領域学府修士1年
     Lesenさん

     小説の紹介が多いみたいなので、カタめですが小説に関連しつつ、ちょっと違うものを紹介してみます。
     筒井康隆の小説『文学部唯野教授』をご存知ですか? この小説は大学の内情を戯画化した筒井さんお得意のドタバタ劇、なのですが、それは表向き。作中の唯野教授の講義がとても分かりやすい文学批評入門になっています。その講義のもとになっているのが、T.イーグルトンの『文学とは何か』です。この本は現代の批評理論を解説した文学理論の入門書であり、批判書でもあります。文学部なら必ず参考文献に入っているのでは。批判書という面では、これから文学をやろうとしている人にとっては「文学とは何か」を探求していく長い長い道のりの第一歩となるでしょう。
     入門書としては、噛み砕いた言葉で書かれているので、タイトルのとおり「文学って何?」と思う他の分野の人にもおすすめです。『文学部唯野教授』で興味を持った人はチャレンジしてみて損はない1冊です。

  • 私・・・・まだ招待状を受け取っていなくってよ!

  • 2021/2/6

    ①文学とは何か、②文学理論はいかに機能するか、③新約聖書の「神は言葉であった」の意味、という3点について考えるヒントをもらえた。

    ①文学は客観的に存在するものではなく、文学を構成する価値判断は歴史的変化を受ける。こうした価値判断は社会的イデオロギーと密接に関係している。このイデオロギーとはある特定の社会集団が他の社会集団に対し権力を行使し権力を維持するのに役立つ前提事項である。

    であれば・・・
    →文学がこのように社会的イデオロギーを包含し、社会と不可分である限りは文学を政治的なものだと言わざるを得ない。リベラル・ヒューマニズムが説く「文学とは個人をより良い人間にするもの」という偏狭なイデオロギーは文学には通用しない。


    ここで私なりに両者を結びつけようとすれば、「より良い人間にするには政治を良くする必要があり、そのためには文学作品をどの理論から分析するのかが適切なのかを選ばなければならない」と言えないだろうか。

    昨今、専門家が専門に固執することに懐疑的な言説をよく見かける。つまり研究のための研究になっているということだ。たしかにこれでは文学研究など役立たないと言われかねないが、社会の声や状況を表現する文学が政治を良くし、人々をより良い人間に育む限りでは大いに価値があると思った。


    ソシュールが言語における意味は差異の問題に過ぎぬと言ったように、記号内容は他の記号との関係によって規定される。ある文を読む時には記号表現が連鎖的に続くため、記号内容はいつも遅れて理解される。それぞれの語は前の語の痕跡を帯び、これからやってくふ語の痕跡を開く。つまり、記号内容は自己同一性を持たない。

    ところで、我々は自分自身の精神や魂を覗き込むときには記号を使わずにはいられない。そのため西洋哲学は相対的な記号内容ではない「超越的記号内容」を求め、それらこそ、イデア、真理、本質、現前である。

    →新約聖書の「神」は「言葉」である「超越的記号内容」であり、両者は同格のため「神は言葉であった」と言えるのではないか?

  • 文学とは何か―現代批評理論への招待
    (和書)2010年09月21日 01:31
    1997 岩波書店 テリー イーグルトン, 大橋 洋一, Terry Eagleton


    テリー・イーグルトンさんの「宗教とは何か」を読もうと思い探していて見つからなかったので、代わりこの本を読んでみました。

    なかなか面白い本でした。

    読み易い。

    現象学の「括弧に入れる」「括弧を外す」ということがどういうことなのか、明確に知ることができた。そこのところは収穫かな。

  • 文学研究講義にて使用。

  • 非常に詳しい。

  • [配架場所]2F展示 [請求記号]901.4/13/E [資料番号]2000100463  [請求記号]901.4/13/F [資料番号]2003118155

  •  文学とはなにか。結論からいうと、文学は一義的にこれこれこういうものであるということができない。文学といえば小説であると考える場合が多いが、かつては小説は文学のカテゴリーに入れるべきではないとされていたし、時代によって領域が変遷するため、例えば、数学のようにある種の安定性を確保しているとはにわかにいいがたいものがある。例えば、文学とはすべて虚構であると定義したとしよう。しかし、プラトンのソクラテスの対話文学、パスカルやデカルトの哲学、シェークスピアの演劇、歴史文書、回顧録、告白文学をちょっと思い起こすだけで、その定義は破綻してしまう。このような状況に対して、文学とは「雑草」であるといった人があった。これは言い得て妙で、雑草なる草が存在しているわけではない。私たちにとって害となる、あるいは、何に益にもならないような草に対して便宜上雑草と呼んでいるにすぎない。「文学とは」ロラン・バルトが喝破したように、文学だと「教えたれたものほかならない」したがって、文学を枠に入れる文学理論は最終的には、イデオロギーと不可分ではいられず、政治的なものであるということが明かされていく。

    1 英文学批評の誕生
    2 現象学、解釈学、受容理論
    3 構造主義と記号論
    4 ポスト構造主義
    5 精神分析批評
    結論 政治的批評

    現代思想入門としても使える、之一冊あれば文学について知ったかぶりできる。

  • 展示期間終了後の配架場所は、1階 学士力支援図書コーナー 請求記号:901.4//E11

  • ここでおさえておきたいのは、わたしたちが無意識のうちに抱いている価値判断やカテゴリーのすべてが、即イデオロギーではないということだ。(...)感情や価値付与や認識や信念の諸様式が、社会権力の維持と再生になんらかのかたちで関係をもつ場合にかぎって、わたしはこれを「イデオロギー」と呼ぼうと思うのだ。 p23

    わたしたちは包括的で、より歴史的で、より哲学的な擁護としての「ポストモダン性postmodernity」を狭義の、もっと文化的で美学的な用語としての「ポストモダニズムpostmodernsm」と区別しておかねばならない。ポストモダン性とは、近代性の終焉を意味する。p351-352

    わたしたちは自己の活動を合理的に根拠づけることなどできないのだが、それは、差異とか不連続とか、あるいは検証不可能な合理性のせいばかりではなく、わたしたちが掲げるいかなる理由も、畢竟、つねに、権力と信念と利益=関心と欲望からなる合理性以前の文脈にからめとられているからであり、こうした状況そのものが、合理的論証の種合うとしてなじまないからである。もはや人間の生に、大がかりな全体性とか合理性とか固定した中心など存在しない。人間の生のおわりなき多様性をひとつにくくるメタ言語も存在しない。あるのはただ、多種多様な文化と物語であって、これらは階層秩序的に整理することなどできないし、そのどれかを特権化することもできないのであって、そおの結果、残されるのは、みずから掌握できないまま、ものごとを行うという、いかんともし難い「他者性」を尊重することだけだ。p352-353

  • 文学批評論、必修編。

  •  いや、意外だったんですが良い本でした。有名なだけあります。入門書としてオススメ。<br>
     著者のテリー・イーグルトンといえばフレデリック・ジェイムスンと並んで英国を代表する左派批評家だが、「ポストモダン」を超・矮小化し戯画化する形でカテゴライズするっていうのを、左派陣営でやってきた代表人物としても有名。そのバリバリの偏見っぷりは、『批評の機能?ポストモダンの地平』なんかで読める・・・んだろうと思う(いやアハハそっち未読です)。まあいくつかの文章を読んだ限り、わたしとしては嫌いじゃない、嫌いじゃないんだけれど・・・。彼独特の嫌味を駆使したレトリックと毒舌は、こう、人をウヒーと苦笑させるものがあるというか、多少突き放さないと楽しく読めないわけなのです。<br>
     そんなわけで、名著として知られるこの本も、いやいやイーグルトンだしねえと身構えて読み始めたのであるが、意外なことにとっても読みやすい。著者の皮肉っぽいピリピリはずいぶんと抑えられ、読者をいざなう快適なスパイス程度のお味。つまり彼としては非ッ常にシンプルな言い回しを用いながら、でも、テクスト至上主義的な批評や解釈学的な批評、精神分析批評等々、それぞれの理論の特徴を、きちんきちんとおさえていく。<br>
     もちろん紹介されている各理論をまあまあ知ってる人から見れば、「えっこれで終わり?」という物足りなさはあるだろう。あと原著の初版は1983年ですが、そのころからうなぎ登りに展開されだしたのであろう諸潮流-----たとえば、脱構築理論と強固なリンクを持つようなコロニアリズム批判やセクシュアリティにまつわる批評なんかはあまり論じられておりません。あとがき追加でカバーできる議論ではないしね・・・。でも、これは入門書。先鋭的な議論を誘発するというよりは、むしろ、ボコッとあいてた基礎知識の穴を埋めるための本と捉えるのがいいのかと。それこそ、ポストコロニアリズムとかポスト構造主義とかポスポス分類されるようなものばっかりに(しかも耳学問で)触れてきたんだけどいまいち基礎の土台が無くてねぇ、という人にこそベストな本なのではなかろうか。-----わたしですがねワハハ。「英文学批評の誕生」および「現象学・解釈学・受容理論」のあたりは参考になりました。<br>
     ところで最近これの訳者が『新文学入門ーT・イーグルトン『文学とは何か』を読む』とかいう本を出したそうな。もともと解説を要するような難解な書物ではないから、へっなんで?という感じだったのだけれど、もしかしたら解説と言うよりは、ここ20年の展開をふまえた上で批判的に再吟味、という奴なのかな。ウーム機会があったらパラパラしてみるかな。

  • 批評理論の入門書。単に紹介するのではなく、批判的に考察しているのがよい。まずはこれを理解しなければ話にならないとかいう噂もちらほら。

  • おまけの★5

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著者プロフィール

Terry Eagleton 1943 年〜。イギリスの文芸批評家・哲学者。ロングセラーの『文学とは何か』(岩波書店)はじめ、『イデオロギーとは何か』(平凡社)『宗教とは何か』(青土社)『文化とは何か』(松柏社)など、ほとんどの著書が翻訳されている。

「2013年 『人生の意味とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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