きけわだつみのこえ 新版: 日本戦没学生の手記 (ワイド版岩波文庫 138)
- 岩波書店 (1997年9月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (524ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000071383
感想・レビュー・書評
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東京・代々木の国立競技場。マラソンゲートの入り口付近にひとつの
石碑がある。「学徒出陣壮行の地」との揮毫がある。
先の大戦の終盤。日本は兵力不足を補う為に、20歳以上の高等教育
機関に在籍する学生の動員を決めた。その壮行会が行われたのが
明治神宮外苑競技場。現在の国立競技場の場所である。
本書について詳細に説明する必要はあるまい。学徒兵が残した手紙・
日記・手帳等から集められた遺稿集だ。
夢も、希望もあったろう。父母や兄弟姉妹、恋人や妻への心残りも
あったろう。それでも彼らは戦場へと送られ、そこで命を落とした。
幹部候補生に合格したくなかったと嘆く者、理系へ転向してくれと
願う母の希望をやんわりと拒絶する者、古参兵からのいじめに
耐える者、飢えと渇きに苦しみながらも自らの痩せ衰えた身体を
スケッチとして残す者。
学業の道を中断され、死に行くことを強いられた若き心の声が
つまった書である。皆、高等教育を受けているだけあって整然と
した文章が多いが、それでも心の葛藤は十分に伝わって来る。
彼らの頭脳が戦争で失われなければ、いつかはいろんな方面で
花開いたかもしれぬ。それは、本書が取り上げている学徒兵に
限らない。
学徒兵以外にも徴兵で失われた命はたくさんあった。それぞれが
我が家へ、故郷へ、想いを残して散っていたのであろう。望まぬ
死であったはずなのに。
戦場で、広島で、長崎で。その他、戦災に遭った各地で亡くなった
人たちを悼む一番の方法はなんだろう。
それはきっと、日本が戦争をしないことであり、戦争に手を貸さない
ことなのではないだろうか。間もなく69回目の8月15日が来る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「兵隊とは、栄光ある囚人の世界に過ぎない」芸術家、数学者、医者…たくさんの才能が消されていく。良いお父さんであったかも知れない人の手紙も、切なくて苦しくて、やりきれない。敵国に対しての憎しみではなく、自国民が軍の中でいじめや制裁で潰している印象。平和時であれば各々の才能や気質が活かされていたんだろうな、と思うとこんな人間性を壊してしまう戦争は本当に嫌。そして、自分の祖父のことがもっと知りたくなった。今度手紙を見せてもらおうと考えてます。
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こういうものを教材として戦争というものについて考えさせることが必要だと思いました。
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これも特攻隊遺詠集と同様。こっちは学生の身で戦場に送られ、若くして亡くなった兵士の手記を集めたもの。腐りきった日本軍の内部、飢えや病に苦しみ死んでいく兵士達、悲痛でならない。このようなことが本当にあったんだ、忘れちゃいけない、ずっと。そうおもわせてくれる一冊。中身は辞世の句や日記、手帳に描かれた絵、手紙など多岐におよんでいる。