ナイトメア: 心の迷路の物語

著者 :
  • 岩波書店
3.00
  • (6)
  • (12)
  • (32)
  • (12)
  • (6)
本棚登録 : 144
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (121ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000241618

作品紹介・あらすじ

「私を責めるもう一人の私がいるんです」突然届いた、見知らぬ女子学生からの手紙。現代日本をおおう、心の闇をめぐる物語がはじまる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 混沌とした精神世界の中で、私と彼女とを区別するものがなくなったと自覚した時の絶望感に、心がやられそうになった。

  • これはわたしの物語だ、っていうの、言葉としては時折見掛けるけれど
    ああ、って思った。こういう感じのことを言うのかもしれない。感覚として。

    なんとなく独特っぽいけれど、全然遠くなくて
    物語としてはあまり具体的じゃないけれど、それでいて輪郭がすごくはっきり隔絶していて

    わからないことを解明していく作業ってすきだし、せずにはいられないような性質だから
    こういうの、すき。

  • ちょっとジャンルわけに迷いますが。

    「ナイトメア」から受け取った手紙を主人公が簡素にまとめて分析するのみで物語のほとんどが進んでいく。

    ナイトメアは病んでいるけど病状の報告とかではなく、生育環境を客観的に見た報告や不安、兄と自分を母がどのように見ているかの淡々とした描写などに終始して「助けて欲しい」などのサインは出さない。結局主人公とナイトメアは自然消滅的に書簡のやり取りはなくなってしまうんだけど、「これほどつよいナイトメアは地上にはいない」というような一文にナイトメアの苦痛を唯一理解してたんだと思わせた。

    あと、「彼女は」じゃなくて「ナイトメアは」ってなってるのがすごく効果的。

    私は薬です。

    が、イコールでナイトメアに結びつく気がした。

  • ナイトメアを持つ彼女。現代で、現実で生きる「女」という殻の「自分」と「自分」の中の「自分」矛盾を感じながらも溶け込まなければいけないの?という葛藤。人でありながら女でなくてはという見えないプレッシャー。
    ナイトメアは最初のナイトメアでした。 ナイトメアに共感し、また自分もナイトメアなのではないか?(彼女より私は真面目で頑張り屋ではないけれど)

  • ナイトメアを通して「女性のありかたとは?」、「自分とはなにか?」、「現実とどう折り合っていくか?」を考えさせられる。

  • 文芸作品でもあるのかもしれません。
    真面目に生きているのに悩んでいる人は多い。無理をしているから、周囲には理解されない。どう折り合いをつけるのか。人は見かけだけではわかりません。

  • 「この人なら自分のことが分かってもらえる」と作家に「心の迷路の物語」をするナイトメアと呼ばれている女性が主人公、が、だんだん作家自身と渾然一体になっているような物語。

    「ナイトメア」は声に悩まされている。罵りの言葉に。
    「ナイトメア」は母に愛されていない。兄を溺愛する母に。
    「ナイトメア」は女であることを思い知らされる。感受性が強いから。

    母の誇りの兄(男)のようになりたくて、能力を発揮し努力をして手に入れたものを母は喜ばない。母に認められないことの悲しみと怒りが噴き出してくる「ナイトメア」罵りの声が聴こえるのは「ナイトメア」の心の声。

    女は女の子を産むと自分の雛形コピーと思っていないか、という深い洞察。知らず知らず同質を強要しているかもしれない。

    それを知ってしまった母娘は仲良くはなれない。

    というところにわたしは思い当たるのでものもあるので、暗澹たる気持ちになった一書。

  • 母と同じ道を歩みたくないけど、母を越えることはこわいっていう。
    そういえば、女性であるということを理由に虐げられた経験がない気がする。
    女子校育ちで、まだ社会に出てないからかな。

  • セラピーというものは唐突に始まり唐突に終わる(逃げられる)ものだから幕切れのあっけなさは頷けるが、小説としては卑怯。
    しかし痛くて痛くて苦しかった。
    フロイトーラカンのラインが残したものは、この不安憂鬱時代には適さないものも多いが、
    1.心的事実の重視。
    2.人は物語に生きる。
    3.解釈の重要性。
    4.症状は誤った対応行動。
    などの知見は依然有効。
    のようなことを考えた。

    oquba

  • いろんな意味で、これは実話だ

全27件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1952年、大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程修了。大阪成蹊女子短期大学、愛知淑徳大学文化創造学部教授をへて、執筆・講演活動に入る。本業のジェンダー・セクシュアリティ論からテレビドラマ、日本の晩婚化・少子化現象まで、幅広く分析を続けている。現在は認定こども園を運営し、幼稚園と保育所の連携についても関心を深めている。
主な著書に『醬油と薔薇の日々』『シュレーディンガーの猫』(いそっぷ社)、『増補版・松田聖子論』『結婚の条件』(朝日文庫)など。

「2020年 『草むらにハイヒール──内から外への欲求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小倉千加子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×