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64(ロクヨン) 下 (文春文庫 よ 18-5)
- 横山秀夫
- 文藝春秋 / 2015年2月6日発売
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途中単なるお仕事小説的な感じで中だるみして、肝心の64の謎はー??ってなってたんですが、まさかああ繋がるとは!!
結局主人公のご家庭の問題についてはって感じなのはなかなか煮え切らないけど、それにしてもな大胆な展開に興奮しました。久々のがっつりミステリ、面白かった。
2016年5月28日
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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫 む 5-13)
- 村上春樹
- 文藝春秋 / 2015年12月4日発売
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のっけから陰鬱過ぎて中盤まではだいぶしんどかった。シロの事件や取り巻く人間模様はあからさまに暗喩的で考えさせられたりもした。
なんというか村上春樹って本当特殊だなーと思うのは、別にたいして好きじゃない私みたいな読者にも読ませちゃうところ。
あんなに素晴らしい短編を書く人がなんでこんなダルい中編書くのかよくわかんないけど。
2016年3月29日
突如職場のダムに現れたイルベールという謎の黒人。かれは何故か主人公の元恋人を知っていて、彼女を探して欲しいと依頼をしてくる。
謎は解けるようで解けない。喪失だけが積み重なる。この不可思議な設定と、大切な人の喪失という小説のテーマとして普遍的な要素がこんなにシンプルに交錯するなんて。絲山さんは圧倒的に短編のほうが好きなんだけど、この作品の文体はすごく心地よかった。よくよく考えれば悲しいだけの物語なのに、どことなく澄み切った雰囲気が漂っていた。
2016年3月28日
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すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫)
- 川上未映子
- 講談社 / 2014年10月15日発売
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二回目。謂わば自分とは正反対の女性が主人公なんだけど、彼女の孤独には何故だか共感できる。
じぶんのつまらなさを他人にわかってもらう必要はないけど、他人にわからせられる、みたいな瞬間が生きていたら多々あって、その瞬間の強さ、みたいなものが彼女とは正反対の自分にも何故だかささる。そして、彼女はきっとルックスにあまり恵まれていないのだろう、けれど、私は初めて読んだ時も今回も、とても清潔で美しい容姿を彼女に当てはめながら読んだ。正しさや善悪ではどうにもならない大体の問題の、最も繊細な部分を、不器用な恋愛を通して描いた作品。
2016年3月10日
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屍者の帝国 (河出文庫 え 7-1)
- 伊藤計劃
- 河出書房新社 / 2014年11月6日発売
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小説だからあたりまえに「うそ」なんだけど、それでも虚実綯交ぜと言いたくなるような見事、豪華な登場人物たちに終始胸が踊りっぱなしでした。
だってワトソンくんが主人公で、ドミトリーとかアリョーシャが出てきてリットン調査団に榎本武揚だよ!!!
内容的には貴志祐介の「天使の囀り」とかそれこそ伊藤計劃の「虐殺器官」的な感じ。こういうのめっちゃ好みなんだよなー。
2016年3月3日
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憤死 (河出文庫 わ 1-4)
- 綿矢りさ
- 河出書房新社 / 2015年3月6日発売
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今までの綿矢りさの文体とは違う、落ち着い淡々とした描写で、帯文通り、「怪談」的な作品ばかり。冒頭の「おとな」はなんだか内田百間を髣髴とさせる怪しい怖さ。「トイレの懺悔室」が一番よかったかな。
2016年2月4日
人形に性的愛着を示す陰気な中学生の主人公。
すごく歪んでいる、理屈すら通っていない。けれどそんなことはどうだってよくて、ただぐっちゃぐちゃな彼の気持ちだけが大事で、そういうぐちゃぐちゃな私の年齢からするともう懐かしい、としか感じなくなってしまった部分、よく文章にしてくれたなぁと。
あとわたしお人形とかぬいぐるみに過剰に愛着を示す性質があるのでユリカに裏切られた気持ちとか彼女とはそういうんじゃないとか、そういう部分すごく共感できた。
2016年1月8日
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あのひとは蜘蛛を潰せない (新潮文庫)
- 彩瀬まる
- 新潮社 / 2015年8月28日発売
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恋愛部分だけクローズアップするとただの夢見がちなファンタジー?とすら思えるリアリティのなさなんだが(そこがキュンキュンしてアラサー女としては魅力を感じるけど)、主人公含め登場人物が抱えている家族に対する複雑な感情や歪みがみごとに「恋愛」と絡み合っていて、読んでいて重苦しく、息が詰まるような緊張感が絶えることのない恋愛小説。
28歳独身、処女、実家住まい、強烈なデキた母からの呪縛に雁字搦めにされて、判断力が育たない、カーテンひとつ、スカート1枚選ぶにも素直な自分の欲求と向き合えない、おどおどした女。
そんな彼女と一見対極的な明るく素直な大学生バイトの三葉くんと付き合うようになり、自分の感情を冷静に見つめられるようになる。
母親と口論できないあの感じ、すごくよくわかるよ。
2015年12月29日
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RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女 (角川文庫)
- 荻原規子
- KADOKAWA / 2012年12月25日発売
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なんかめっちゃ意外な展開!姫神がどういう役割のヒトだったのかがわかってからは姫神を見る目が180度変わってしまった。(深行同様)そして早く続きが読みたいのだが、四巻までしか買ってない。
2015年12月10日
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幽霊たち (新潮文庫)
- ポール・オースター
- 新潮社 / 1995年3月1日発売
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やはりオースターはニューヨーク三部作がしっくりくるみたい。ひたすら怖い。私立探偵である主人公ブルーの元に依頼人ホワイトがやってくる。「ブラックという男を監視してほしい」。目的がわからないまま、不毛な仕事が一週間一か月一年と続き、追い詰められていくブルー。一瞬どちら側に自分がいるのかわからなくなるような小説。
2015年12月10日
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ミート・ザ・ビート (文春文庫 は 48-1)
- 羽田圭介
- 文藝春秋 / 2015年9月2日発売
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表題作『ミート・ザ・ビート』。
懐かしい葛藤だよね。バイト取るか成績(受験)取るか、欲しいものもたくさんあるし、欲しい=必要でないけどあったら便利だし安心だしっていう、永遠のテーマ。地方都市の車がなきゃ何一つ始まらない生活。
この生活感が異様なほどリアル。バイト仲間たちとの関わり方とか。
2015年12月7日
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春琴抄 (新潮文庫)
- 谷崎潤一郎
- 新潮社 / 1951年2月2日発売
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熱烈。春琴の傲慢さがたまらない、そして佐助の一途さ。いいな、こういうの。現代の、条件先行型みたいな恋愛や生活感が私はすごく苦手。倒錯しているかもしれないけれど不利じゃなきゃきゅんとこない、みたいな感覚がある。
2015年12月4日
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あなたが愛した記憶 (集英社文庫)
- 誉田哲也
- 集英社 / 2015年11月20日発売
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著者がリアリティのあるサスペンスを書いている印象が強いからか、ホラー部分とリアリティ部分の塩梅がなんというかイマイチな感じがして。遺伝とか乗り移りとかその辺もっとねちっこく論理責めにしてほしかったです。しかし映像化向きの作品かな、と思った。
2015年12月2日
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悪意の手記 (新潮文庫)
- 中村文則
- 新潮社 / 2013年1月28日発売
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すごすぎてなかなか言葉にならない。贖えないものの贖えなさ、かけがえのなさを突き詰めていく。何故人を殺してはならないのか、という問いは表のテーマで、真に描かれているはその人間の人間性をはかるにあたっては、かけがえのなさ(命)を引き合いにだしてもなおはかりきれない「何か」があり、その「何か」の具合によって人間性が決定付けられているのではないかということ。と読み取った。
2015年11月19日
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メタモルフォシス (新潮文庫)
- 羽田圭介
- 新潮社 / 2015年10月28日発売
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新刊のとき読んで、衝撃的な面白さだったんで。文庫見つけて即購入即再読。
この小説の面白さは、主人公サトウが、実直でないが真面目、道徳的ではないけれど倫理のボーダーラインが明確である、とか一見するとわかりにくい背反的な要素を多分に含んでいて、その性質をそのままプレイに活かしているところ。ようは、よく描かれがちな、社会的地位も高く周りから尊敬されていて人徳がある人が実はこんなに…っていう週刊誌的で安置なSM小説とは一線を画し、どちらが本当の自分かなんていう馬鹿らしいといかけもなしに己の価値観倫理観に沿って奴隷として邁進していくその姿が勇ましく、惚れ惚れしてしまうのだ。羽田さんの抑制の効いた文体と相俟って笑いを誘われる箇所も多数ある。
2015年11月18日
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スキャンダル (新潮文庫 え 1-29)
- 遠藤周作
- 新潮社 / 1989年11月1日発売
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遠藤周作本人を連想させる、主人公の小説家勝呂。敬虔なキリスト教徒であり、作家であるかれが新宿のいかがわしい界隈で女と遊んでいる姿が頻繁に目撃される。本人にはまるで覚えがない。
無意識の具現化、いつまでも追いかけてくる、醜い自分というよりかは楽しみにifの果て、脅迫観念の権化という感じかな。
2015年11月15日
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しょうがの味は熱い (文春文庫 わ 17-3)
- 綿矢りさ
- 文藝春秋 / 2015年5月8日発売
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なんつーか、苦手。奈世みたいな女は本当に苦手。話したらつまんないんだろうなーっていう。久々にあっても中身のない恋バナ延々と話すだけみたいな、そういう女。結婚結婚焦る人の気持ちってよくわからないし、そういうメンタリティが育まれたバックグラウンドの描写やルックスの描写が全くないのもなんか不自然。綿矢りさならではのはっとするような文章もいくつか見られたけれど、最初から最後まで主人公を愛せなかった。
2015年11月7日
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愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー c- 3)
- レイモンド・カーヴァー
- 中央公論新社 / 2006年7月10日発売
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『大聖堂』はストーリー・テラー的良さが詰まっていて、こちらはカーヴァーの外連味や技術力の集大成といった感じ。「ささやかだけれど、役に立つこと」の元?の「風呂」が入っている。(経緯はもうちょっと複雑だけど)
しかし解題で村上春樹も書いていたけど、私はやはりストーリー・テラーとしてのカーヴァー作品のほうが好き。断然。
「出かけるって女たちに言ってくるよ」、と「何もかもが彼にくっついていた」が良かった。ちょっとばかし残酷さが目立つ短編集のように感じた。
2015年11月5日
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ピクニックatハンギング・ロック HDニューマスター<コレクターズ・エディション> [Blu-ray]
- ピーター・ウィアー
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実際に(あったらしい)オーストラリアの女子寄宿舎で起こった未解決事件の映画化作品。
未解決事件だから当然映画の中でも作品は未解決で、けれどその何かが起こる前の不穏さと少女たちの美しさだけでいいもん観たなっていう気にさせる。
現実離れした美しい消えた少女たち。
消えなかった少女は残酷な最後を迎えた。校長もしかり。
2015年11月5日
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ジェゼベルの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫 57-2)
- クリスチアナ・ブランド
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舞台設定がいまいち飲み込みにくかったけど、物理的トリックはともかく犯人は本当に意外な展開で面白かった。が、私がイマイチミステリー脳になりきれないタイミングで読んでしまったのではまりこめなかったのかなぁ。
2015年10月30日
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RDG3 レッドデータガール 夏休みの過ごしかた (角川文庫)
- 荻原規子
- KADOKAWA / 2012年7月25日発売
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真澄の存在にそんな裏というかしくみがあったとは。そして深行の力の全貌は明らかにならないしじれったいとおもいつつも和泉子の成長と共に楽しんで読んでいる。
2015年10月19日
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転校生とブラック・ジャック――独在性をめぐるセミナー (岩波現代文庫 学術 238)
- 永井均
- 岩波書店 / 2010年5月15日発売
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今まで読んできた永井さんの著作の中では興奮度が比較的少なかった。それは私が〈私〉よりも倫理や道徳に重きを置いた読書生活を送ってきたせい。結局、どうどうめぐり?と思いつつも緻密にひとつひとつ可能性と不可能性を冷静に議論しつくしていくやりかたがやはり好き。独我論と統覚理論、統覚はカントで馴染みあったが独我論のほうのウィトは正直そんなに読み込んでいるわけではないからこの本でちょっと不明瞭だった部分が見えてきた感じ。
で、この本で散々論じられていることを言葉にできないまでも急激な不安感として幼少時に体験していたことを思い出す。下っ腹が重くなるような、胃に何かが渦巻くような不安感。あれ、解決してないというかあれにとらわれちゃった人は是非永井均を読んでほしい。
2015年10月14日
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村田喜代子傑作短篇集 八つの小鍋 (文春文庫 む 6-4)
- 村田喜代子
- 文藝春秋 / 2007年12月6日発売
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「熱愛」「白い山」「蟹女」が圧巻だったんだけど、でも正直短編集でいうと『鯉浄土』のほうが数段好みだなあ。あの薄氷みたいな張りつめた雰囲気の短編がまた読みたい。
「熱愛」のオートバイを運転している時の描写がすごすぎた。こういう作品は村田さんの中では珍しい作風なのではないだろうか。
村田さんの作品は家族を取り扱っているものが多い。
幼さと老いの醜さ、原初的な、欲望に名前がつく前の状態とか(幼)、逆に欲望の名前でしか表せないようなシンプルなこころとか(老)。その真ん中に閉じ込められてしまったのがきっと「蟹女」なんだろうな。
2015年10月7日
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きりぎりす (新潮文庫)
- 太宰治
- 新潮社 / 1974年10月2日発売
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新潮文庫の太宰の短編集では「きりぎりす」がNo.1!ちなみに角川文庫ではダントツ「女生徒」。太宰は書き出しがすさまじく上手な作家だけど、「きりぎりす」はしめの一文が素晴らしい作品が多い。とくに「黄金風景」と「善蔵を思う」!何度も読んでるがやはりいい。
太宰はキリスト教徒だったのだろうか、と前々から疑問。
2015年9月29日