不思議の国ベラルーシ: ナショナリズムから遠く離れて

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000246231

感想・レビュー・書評

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  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18338

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BA66589431

  • p51まで読んだ。

  • 歴史にしては体系だたず、社会を論じるには根拠に乏しく、エッセイとしては他人の褌(出来事の羅列)すぎる。
    引き合いに出される文献は、選び方が悪いのかベラルーシだからなのか疑わしいものが多い(ジャンルの違う項目を一緒くたに並べて比較させるアンケート調査など。「独裁政権下」で素直に回答できるのかさえ不明)にもかかわらず、それは考察されない。

    そんな甘さのまま「未開の蛮人」を教化してやろうという志の高い「文明人」のごとき野蛮な視点でベラルーシの「歴史」と「現状」があつかましく語られている。
    「(俺たち西洋や日本のような)成熟した」社会にみちびくにはどうすべきかという問題提起と解答が書かれるが、そもそもの前提に説得力がないから、それを元に組み立てられた言葉には共感も納得もできない。ツッコミどころが多すぎる。
    そもそも、一国の目指すべき場所をなぜ部外者が決められるのか。

    全体的に自分の内側だけで完結している。
    どんな出来事を紹介しようが誰の言葉を紹介しようが、結局は自分語りに終始する。
    そのわりに冗談めかして語られる(別に面白くもないんだけど)意見の部分になると、とたんに一人称が「我々」や「私たち」に変わる。
    他者を語る度量はなく、自分の意見を言う度胸もない。

    実際にベラルーシがその問題を抱えているとしても、著者の捉え方が表層的で興味本位の思考ゲームの域を出ないから、内容が上滑りする。
    「お前に言われる筋合いねえよ」みたいな。何様感満載。
    一時の客に過ぎない部外者たる日本人が切実さをもてないのは当然として、その自覚もなく無邪気に憂国の志士のような顔で重い言葉を軽々しく使うあたりがいただけない。

  • 【内容】

    東欧・スラブ圏にちょこんと存在する、地味な小国、ベラルーシ。その昔は「白ロシア」と呼ばれていた。

    しかし独立してからなお、いろんな意味でいびつな歴史を辿った。

    「ベラルーシとしてのナショナリズム」も、それはロシア、ウクライナとの関係を考えずには語れない。



    【感想】

    ナショナリズムとは何か?国民と言語の関係は?それを歴史に翻弄された国、ベラルーシという国から考えていく本です。

    ベラルーシ国民は、ロシアとの緩やかな統合を望んでいる人が多い。高齢者は、昔のソ連の復活を望んでいるから、若い人は新しいリーダーであるプーチンに期待をしているから。

    ベラルーシ・ナショナリストは自分の国の歴史と向き合い、国民性を育てようとしている。

    しかし、ベラルーシは寛容と共生の国民性を持っている。

    その心が、ナショナリズムという思想によってかき消されるのであれば、それは果たしていいことなのだろうか?

    実際、独立時に過激な民族主義が勃興した時期もあったが結局は消えていった。

    ベラルーシ語という現地の言葉もあるものの、実際にベラルーシでベラルーシ語を話す国民は少ない。大体の国民はロシア語を使うのである。

    ましてやベラルーシ・ナショナリストもロシア語を用いていることもある。

    ベラルーシ語を使うことが、一概にベラルーシの国民性を育てることとは限らないのだ。

    日本においてベラルーシのことを専門に調べた人は少なく、これが本邦初のベラルーシに関する本である。

    日本からは遠く離れた国ではあるが、ナショナリズムを考える上で深い示唆を与えるものである。

  • ナショナリズムとは何か?国民と言語の関係は?
    それを歴史に翻弄された国、ベラルーシという国から考えていく本です。
    ベラルーシ国民は、ロシアとの緩やかな統合を望んでいる人が多い。高齢者は、昔のソ連の復活を望んでいるから、若い人は新しいリーダーであるプーチンに期待をしているから。
    ベラルーシ・ナショナリストは自分の国の歴史と向き合い、国民性を育てようとしている。

    しかし、ベラルーシは寛容と共生の国民性を持っている。その心が、ナショナリズムという思想によってかき消されるのであれば、それは果たしていいことなのだろうか?
    実際、独立時に過激な民族主義が勃興した時期もあったが結局は消えていった。ベラルーシ語という現地の言葉もあるものの、実際にベラルーシでベラルーシ語を話す国民は少ない。大体の国民はロシア語を使うのである。ましてやベラルーシ・ナショナリストもロシア語を用いていることもある。ベラルーシ語を使うことが、一概にベラルーシの国民性を育てることとは限らないのだ。

    日本においてベラルーシのことを専門に調べた人は少なく、これが本邦初のベラルーシに関する本である。日本からは遠く離れた国ではあるが、ナショナリズムを考える上で深い示唆を与えるものである。

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著者プロフィール

一般社団法人ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所副所長。
1964年生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシヤ語学科卒業。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了。北海道大学大学院文学研究科博士後期課程(歴史地域文化学専攻・スラブ社会文化論)修了(学術博士)。社団法人ソ連東欧貿易会・ソ連東欧経済研究所研究員、在ベラルーシ共和国日本国大使館専門調査員などを経て、2017年から現職。
主な著作に、『ベラルーシを知るための50章』(2017年、明石書店、越野剛氏との共編著)、『不思議の国ベラルーシ――ナショナリズムから遠く離れて』(岩波書店、2004年)、『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』(東洋書店、2011年)など。

「2018年 『ウクライナを知るための65章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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