ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000247160

作品紹介・あらすじ

「殺せ!」「出て行け!」といった在日韓国・朝鮮人らへのヘイトスピーチ(差別扇動)。差別をあおりたてる排外主義的なデモ。日本でいま何が起こっているのか。そこに集うのは誰なのか。差別に対抗するカウンターとは何なのか。ヘイトスピーチの規制は「表現の自由」を損なうのか。不正義とたたかうために立ちあがった著者が、その問いに答える!安田浩一・師岡康子との座談会も収録。

感想・レビュー・書評

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  • さすがに古くなった話題も多いが、「ヘイトスピーチ」が流行語にもなったとき、在日の多く住む住宅街で何があったか、またヘイトスピーチを取り締まる条例が作られた背景に何があったかを知る記録として意味がある本だと思う。最後の対談も問題の所在を整理した内容になっていて、非常にわかりやすい。

  • 東京の新大久保や大阪の鶴橋、そして京都の朝鮮学校での韓国系住民をターゲットにしたヘイトスピーチ。国会議員としてこの問題に取り組む著者が、現状とその対策についてレポートする。ヘイトスピーチの主体となっている人々の実像やそれらのカウンターとなっている人々の動き、そして法規制をかけることの是非等について紹介されている。ただ、語りおろしの緊急出版ということで、問題を掘り下げるところまではいっていない。

  • 在特会に対してカウンターと呼ばれる対抗集団が出てきたのは安心した。
    最近四国遍路に外国人を排除する貼り紙があった。あれもヘイトスピーチを臭わせる。

  • レイシスト=人種差別主義者

    ヘイトスピーチ=差別扇動

    東京新宿区新小久保
    大阪市生野区鶴橋

    日本国憲法が保障する表現の自由の範疇に含まれないのでは?

    「在日特権を許さない市民の会(在特会)」

    ヘイトスピーチ・ヘイトクライム・レイシズムがまだあまり知られていない

    在特会の特徴
    ・インターネットによる人寄せ(ネット右翼が現実社会に)
    ・過激、対象をののしる(主義主張のアピールではない)
    設立:2007 桜井誠会長
    会員:約13000人(2013)
    端緒:フィリピン家族の不法滞在問題(娘の通う中学校にデモ)
    対象:在日コリアン・ニューカマーの韓国人・中国人

    在日コリアンには日本人の持っていない特権が与えられていると訴え、それをなくすことが運動の目的
    在日特権
    ①特別永住資格
    ②朝鮮学校補助金交付
    ③生活保護優遇
    ④通名制度

    日本の植民地政策から敗戦、そして戦後の歴史
    1945 国内には約230万人の在日朝鮮人がいたが、そのうち約64万人残 る
    1952 日本人国籍剥奪
    1991 入管特例法―特別永住資格

    在特会が言う「特権」は、現実に存在しないもの多い

    京都朝鮮第一初級学校「威力業務妨害」事件(2009 12・4)

    カウンター勢力の登場→在特会を上回るように
    声を上げたくてもあげられないコリアンの代わりに闘っている

    「沈黙効果」―言論の暴力が言論の自由を阻害

    侮辱の対象が「朝鮮人」「韓国人」では抽象的で、名誉棄損罪や侮辱罪で刑法を適用できない

    ドイツには「民衆扇動罪」がある

    公安委員会(実質的には警視庁の警備部長)がデモの許可

    拉致問題被害者家族や救援運動を続けてきた人たちは、在特会に対してやめてほしいと声高に言いにくい

    知識がなかったり、欲求不満をぶちまけたいだけの人多い

    逮捕者が出たり、デモ中止やコース変更も行われるようになった

    既成の運動体十分に機能していない

    日本は国連の定めた「自由権規約」・「人種差別撤廃条約」(第4条aおよびbの留保)に加入

    北朝鮮のテポドン発射実験に伴って起こった在日コリアンの子どもたちへの暴行・脅迫や嫌がらせ

    安倍「法律で取り締まるのではなく、国民の良心を信じ、自主的にそうした行為がなくなっていくのが理想的」

    人種差別禁止→表現の自由侵害?

    言論や表現の自由は無条件ではない?

    アメリカ:言論の自由は重んじるが、ヘイトクライムは厳しく処罰
    イギリス:世界で最も早く人種差別・民族差別禁止法を制定
    ヘイトスピーチ規制でマイノリティの尊厳を守る

    日本遅れている
    現在の法律では人種差別行為やヘイトスピーチを防げないし、処罰もできない

    ネット文化をそのまま現実に持ち込んだ
    「自分たちは被害者だ」と捉えている
    不満を敵を作って、単にぶつけているだけ

  • 在特会を始めとした虚構に満ち溢れた排外主義に対抗するのは難しい。

    明らかに事実を含まないような中傷であったとしても、その攻撃の対象が個人ではなくもっと大きなものになった途端に法律はお手上げになってしまう。
    攻撃をする矛先は「自分が持っている不満の原因」ではなく「憎しみの対象」であるため、理性的な話し合いが通用しにくい。

    唯一の道は「そういうのってすごくかっこ悪い」という空気感を世間に広めていくことではないか。

  • ヘイトスピーチについて書かれた本。

    罪を犯していない人に対して、悪意を込めて脅すような行為はいけないことです。

    しかし、悪いことをする人は放っておかず、取り締まり罪を償ってもらう必要はあるでしょう。そして、外国人だった場合は通名ではなく本名で報道されるのが当たり前なのではないでしょうか。

    ブログはこちら。
    http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4589225.html

  • ヘイトスピーチという言葉を最近聞くようになり、目に留まったので読んでみた。
    ヘイトスピーチについて自分が無知だったのが恥ずかしくなったし、その現状に本当に驚いた。
    表現の自由や集会の自由、差別の禁止、どれも大事なことであって、法規制をすることはとても難しいということが分かった。
    しかし、ヘイトスピーチは絶対にやめるべき、取り締まるべきである。一般の韓国人に言っても彼らの言い分が通る訳ではないのに。。ただ人を傷つけているだけ。

  • 有田芳生『ヘイトスピーチとたたかう! 日本版排外主義批判』岩波書店、読了。「殺せ」「出ていけ」--在日コリアンに浴びせられる暴力の数々。本書は在特会を中心とするヘイトスピーチ(差別・憎悪の扇動)を批判する現在進行形の戦慄すべき報告。http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0247160/top.html

    本書は日本版排外主義の系譜と現在を概観し、差別に対抗する最前線を報告する。表現の自由と法規制の問題やカウンターの現在(巻末座談、安田浩一さん、師岡康子さん)にも言及する。「日本には差別はありません」と思う人に手にとって欲しい

    本書は安田浩一『ネットと愛国』(講談社)のその後を追跡する試み。在特会が詭弁する所謂「在日特権」なるもののいかがわしさについても、担当省庁とのやりとりからその欺瞞を明らかにすると同時に、心性としての「悪の陳腐さ」をも浮かび上がらせる。

    筆者自身、この問題に関わるまで「こうした言葉や実態について無恥でした。人種差別撤廃条約というものがあって、世界にはこの条約に基づく国内法をもつ国が多い」が、和を重んじる日本には差別は存在しないとスルーする。どう立ち上がるのか。

    「ファシズムとは、いかなる精髄もなく、単独の本質さえありません。ファシズムは〈ファジー〉な全体主義」(あとがきより。エーコ『永遠のファシズム』)。だとすれば特定勢力に対する単なる「反対」とイコールではない。永続する自己認識の闘いだ。
    (あとは蛇足)

    ( しかし、岩波書店、やるなあ。有田さんに特定の政治的立場があることは前提として承知するが、その闘う相手が、安倍政権と共鳴しながら、遠心力で力をましながら、違う方向に押し流していこうとするのが現在。こういうのは大事だと思う )

    「ひとつづつ目標をもって、人種差別撤廃条約の勧告に基づく日本政府の対応を実現させるまで、前に進むしかありません」。いまだに、「通名は特権」と居直り強盗を決め込む、竹田恒泰大先生にも、有田芳生『ヘイトスピーチとたたかう!』(岩波書店)は手にとって欲しいなあ。

    斜めから目線の知識人風の人間って、その怨念みたいなのもあって、岩波書店に対して、まさに「岩波文化人」という言葉があるようにあてこすりをするけれども、ほんと、オール翼賛体制で言論が収斂するなかで、今回の有田本の発刊は、まさ「文化の配達人」を任じた岩波書店の侠気だな。編集者すごいわ。

  • 新宿区新大久保あたりでヘイトスピーチを叫んでいる「在日特権を許さない市民の会」をご存知ですか?

    Do you know Citizens Against "在日特権 (Zaitokken Tokken)" ? Around Shinokubo in Shinjuku,Tokyo, they are shouting hate speeches against Korean people residing in Japan.

  • 友だちの李さんのことを
    友だちのDamaraさんのことを
    友だちの金くんのことを
    友だちのChuaさんのことを
    思いながら
    読んでいた

    ヘイトスピーチの向こう側には
    殺伐とした荒野の風景しか見えてこない
    これまで、貧しいつながりしかもてなかったのだろう

    なんとも言いようのない寂しさを感じる
    なんともいえない虚しさを感じてしまう

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著者プロフィール

有田芳生 ARITA YOSHIFU
1952年、京都府生まれ。ジャーナリスト。出版社勤務を経て、1986年にフリーランスに転身。『朝日ジャーナル』(朝日新聞社)で霊感商法批判キャンペーンに参加。その後、『週刊文春』(文藝春秋)などで統一教会問題の報道に携わる。都はるみ、阿木燿子、宇崎竜童、テレサ・テンなどの人物ノンフィクションを週刊誌各誌で執筆。2010年、参議院選挙に出馬し初当選。2022年まで2期務め、拉致問題、ヘイトスピーチ問題に取り組む。近著『改訂新版 統一教会とは何か』(大月書店)、『北朝鮮 拉致問題――極秘文書から見える真実』(集英社新書)のほか著書多数。メルマガ「有田芳生の『酔醒漫録』」(まぐまぐ)で統一教会のタブーを精力的に発信する

「2023年 『統一協会問題の闇 国家を蝕んでいたカルトの正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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