- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000291088
作品紹介・あらすじ
念じるだけで機械を動かす!?「攻殻機動隊」や「ロボコップ」の世界を現実にするかのようなBMIは、脳と機械を直接つないだ究極の身体代替システムだ。この研究は、どこまで進み、神経科学にどんな知見をもたらしたのか?まだ十分に解明されていない、脳の根本的かつ重要な特性と、ほぼわかっている構造と機能の実態を、最新の知見を取り交ぜ解説する。研究の面白さと神経科学における重要性、社会への影響を述べ、今後の脳研究がめざすべき目標を、社会的観点からも考察する。
感想・レビュー・書評
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著者は、認知神経科学と実験心理学が専門。実際に、脳と機械をつなぐ研究がなされていることを知り、近未来だなぁと思った。
脳波を読み取る脳波センサーや脳波を解析するプログラムなどを総称してブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)という。そのことで、脳の中にあるシナプスの動きを利用して、機械などを動かすという研究だ。BMIという言葉からは、身長と体重から計算され、肥満の基準を表すBody Mass IndexのBMIしか思い浮かばなかった。
脳とは何か?脳の機能がどうなっているのかが、明らかになってきているが、記憶とはどこに存在するのかは、いろいろな部分にあるという派とある特定のところにある派に分かれ、著者は前者の立場である。
脳にBMIを差し込むことで、脳の機能を明らかにする。日本の技術は細かいことまでできるので、脳細胞のシナプスに接続できる。そしてシナプスにBMIを繋ぐことで、どんな役割をしているかが見えてくる。細いファイバー状の電極を、ロボット技術を駆使して脳に何本も刺し、数千か所からの脳活動の記録、および脳細胞への刺激をする。
学習は報酬を得ることで進行する。人間の場合は報酬が多様であり、食物やお金だけでなく達成感や満足感なども報酬となる。報酬を得るために、脳自身が自在に変化させることがわかった。
BMIで機械を操作することの学習とは、「脳が身体を介さず報酬を得ることができるようにニューロン集団の活動を変化させる。」BMIのエッセンスは「神経活動を変化させて報酬を得る」。
ニューラルオペラントとはニューロンの活動をオペラント条件付けしたものであり、運動出力型BMIを実現化する方法として有力である。行動ではなくニューロン活動を、強化により増減させる方法である。例えばロボットアームを動かして物を掴み取るという目標を達成することはそれ自体が報酬であり、それにより神経活動が強化され増加する。
オペラント条件づけとは、報酬や嫌悪刺激(罰)に適応して、自発的にある行動を行うように、学習する。行動主義心理学の基本的な理論である。それを実験する。
動物の訓練、電極の作成、電極の埋め込み手術、ニューロン活動の記録、増幅器や解析装置の設計と作成、記録と解析のためのコンピューター、プログラミングについて説明する。
脊髄損傷ではなくて、脳の中心部で生じた脳卒中により四肢麻痺となった患者に、BMIにより四肢を動かすと言う臨床試験を行って、運動野のニューロン活動で操作する対象がものをつかむこともできるロボットハンドでつかむなどの成果を挙げている。
脳はその活動で機械を操作するだけでなく、機械をより効率的にうまく動かすように脳自身の機能と構造を変えていくと言う事実である。
イーロンマスクは、ロボットアームではなく、さらに「人間の脳に電極を刺して、コンピュータとつなぐ」という2016年に設立したNeuralink社を持っている。
2021年4月に、同社の神経記録・データ送信チップ「N1 Link」を脳に埋め込まれた「ペイジャー(ポケットベルという意味)」と名付けられた9歳のマカクザルが、ジョイスティックを使わずに脳だけでお気に入りのゲーム「Pong」をプレイする動画を公開した。
ふーむ。ブレイン・マシン・インターフェース:BMIは、もっと進んでいくだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
BMIというのはブレイン・マシン・インターフェースの略で単純に言えば脳の命令で機械やコンプーターを動かす為のシステムです。
身体の麻痺などえ四肢に不自由がある人でもBMIを利用することで日常動作が行えるようになったらとても便利ですね。
とはいえ、この本でも書かれているようにまだまだSF映画のようなイメージの実用化は先のようです。
とはいえこの本が出版されてから6年たっているので最新のBMIがどうなっているかも気になります。
BMIというテクノロジーの凄さを感じながらもそれを超えて人間の脳の不可思議さを感じました。 -
著者は、BMI(Brain-Machine Interface)の研究者である。
脳の情報は脳全体に分布している。機能局在は相対的。
恒常的に新たなニューロンが生まれている。神経回路網の一部となることで、学習や記憶の維持などを担っているらしい。
数十秒から数分のオーダーでシナプシスがつくられる。
サルは道具使用後、より広い範囲(道具が届く範囲)で餌を獲ろうとするようになる(身体シェーマの変化)
サルでは、視覚刺激より触覚刺激に意味のある課題の方が同時発火を示すニューロンが多い。
(推薦図書) 越境する脳 ミゲル・ニコレリス -
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の研究における最新の知見と現状および将来と、BMIと社会とのかかわりを紹介した一冊。
BMIの研究が進むにつれて、これまで主流であった脳機能局在論(脳の諸領域は別々の機能を担う)ではなく、脳機能分散論(脳の機能単位を単一ニューロンではなくニューロンの集団と考える)の正当性が高まり、脳の驚くべき可塑性が証明されつつある。その結果「BMIは脳を変えることができる」ことが明らかになり、実用化に加速度がついている。けれども、「神経科学による脳の解明を待たずに脳の操作に着手すれば、それは第2のロボトミーとなる危険が大きい」と著者は警鐘を鳴らす。。
BMIの進展は、容易に心や行動の操作を射程圏内とするだろう。そのときに、科学は常に倫理と隣り合わせであることを忘れずにいられるだろうか。 -
貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784000291088 -
運動や視聴覚って、脳内ではわりと臨機応変に処理されるんだな、というのがこの本から新しく得た印象。別の脳細胞でも、機械でも、信号さえ繋げちゃえば学習で自然に扱えるようになっちゃうもんらしい。
ところで、この本の本領発揮は後半から。医学の闇や倫理について語られていて興味深い。特にロボトミーの話とか。色々な本に脳の機能解明への貢献が書かれているけど、普通に考えると変なんだよね、第二次大戦前に前頭葉切裁術とか。人体実験でノーベル賞をとった歴史を精神外科の重篤な過ちとして説明してるし、現代の抗鬱剤と医療ビジネスの問題についても触れてる。この人自身は脳の研究という立場から倫理的問題について真摯に考えぬいてきた人なんだな、と感じた。 -
所在:紀三井寺館1F 請求記号:WL300||N6
和医大OPAC→http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=181623
BMIは現代のロボコップ!?
想像するだけで自分の思うように機械が動かせたらどんなに便利だろう、なんてSF映画などを見たときに一度でも考えた事は無いでしょうか?
しかし、そこにはとんでもないほどの実験を重ねた研究者たちの苦労が隠されています。
再生医療・神経科学はもとより、機械と人間の倫理についても考えさせられる一冊でした。 -
BMI(Brain-machine Interface:ブレイン・マシン・インタフェース)研究における最新の知見を紹介するとともにこの研究分野の現状を紹介した書。
本の帯に、「攻殻機動隊」の文字があったので、つい手に取ってしまった。
読んで痛感したのは、いままで僕は脳の局在論にかたよった考え方をしていたなぁということ。
たしに、教科書でも、機能局在ありきで語られていて、全体論やモザイク論は呪集ではないように思える。また、触れる数多の研究においても、局在論的なものが多かった(そういうものを選択して読んでしまっていたのか・・・)
このBMI研究の実態や知見などをみると、著者は行き過ぎた局在論に警鐘を鳴らしているように思える。
(当然、行き過ぎた全体論や心脳二元論も問題だと思うが)
脳の研究は、生物学であり、医学であり、心を取り扱う心理学でもあり、それらの達成のために、BIMをとおして、神経科学をはじめ、再生医療学、脳神経外科学、機械工学、情報工学など様々な分野の融合研究が必要になってくるとのこと。
BMIについて、道具利用を目指すことと脳の機能を明かす研究として扱うことは大きく違う・・・そういうことが分かった。
また、BMIが便利ものとして普及した世の中が果たして、どのような矛盾をはらんでいるのかも考えさせられた。
科学的な知見とともに、人間の存在や価値、社会と科学との関わりを考えさせられる良い本だった。
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【内容(金芳堂より)】
念じるだけで機械を動かす!?「攻殻機動隊」や「ロボコップ」の世界を現実にするかのようなBMIは、脳と機械を直接つないだ究極の身体代替システムだ。この研究は、どこまで進み、神経科学にどんな知見をもたらしたのか?まだ十分に解明されていない、脳の根本的かつ重要な特性と、ほぼわかっている構造と機能の実態を、最新の知見を取り交ぜ解説する。研究の面白さと神経科学における重要性、社会への影響を述べ、今後の脳研究がめざすべき目標を、社会的観点からも考察する。
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【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
櫻井/芳雄
1953年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。広島大学助手、富山医科薬科大学助教授、ジョンズ・ホプキンス大学客員助教授、科学技術振興機構研究員(兼任)、京都大学霊長類研究所助教授、生理学研究所客員助教授を経て、京都大学大学院文学研究科教授。医学博士。専門は認知神経科学と実験心理学
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【目次】
第1章 脳で機械を動かす?
・SFから現実へ
・進展するサルのBMI
・ラットのBMIからわかること
・誤解と実態
第2章 BMIが突きつけた脳の根本問題
・何が情報を表現しているのか
・情報は脳全体にあるのか特定部分にあるのか
・脳はどこまで変わるのか
・脳と身体はどこまで一体か
・自発的な脳活動は何を意味しているのか
第3章 BMIにつながる脳と脳研究の実態
・多彩な細胞と信号伝達
・究極の民主主義
・必然的な個性
・脳研究の現場
第4章 神経科学とBMIの未来
・融合研究と反還元主義
・故障した脳の修復
・脳の操作と倫理
・ユートピアの姿
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機能局在説はロボトミーを想起させるし、正直・・・・主流でないことを知り、ほっとした。
それにしても、テレビによく出ている脳科学者は実に儲けているらしいが、還元主義者の最たるものではないですか??
それにしても、読み終わっての感想は・・・・。
「なんや・・・、脳のことはゼロに等しいくらいわかってないのが現状」なんだということ。
後半はまるで倫理学でした。