本の栞にぶら下がる

著者 :
  • 岩波書店
3.97
  • (11)
  • (12)
  • (4)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 393
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000616102

作品紹介・あらすじ

『82年生まれ、キム・ジヨン』など、数々の話題作の翻訳を手がける著者が綴った、珠玉の読書エッセイ。文学に刻まれた朝鮮と日本の歴史をたどり、埋もれた詩人や作家に光を当て、人間が疫病や戦争に向き合ってきた経験をひもとくなど、韓国文学に止まらない古今の本を取り上げながら、その普遍性を今に開く25篇。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 翻訳者は語る 斎藤真理子さん | 小説丸(2019/05/17)
    https://shosetsu-maru.com/interviews/translator/19

    (1ページ目)韓国文学の底の底にある朝鮮戦争の記憶 ブームを牽引してきた翻訳家が読み解く | AERA dot.(2022/10/09)
    https://dot.asahi.com/articles/-/5598?page=1

    本の栞にぶら下がる - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b631503.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      クリーンヒット 『本の栞にぶら下がる』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.bz/hveuDNG
      クリーンヒット 『本の栞にぶら下がる』 | 教文館ナルニア国
      https://onl.bz/hveuDNG
      2023/11/09
  •  どの小説も読んだことないのに、読んだ気になった。また実際に手にとって読んでみたいと思うものばかりだった。
     私は普段小説を読まない。読みたい本はたくさんストックしてあるが、なかなかシンプルにいかない。著者が韓国文学の優れた翻訳者であることは知っているが、まだ読んだことはない。そんな中ではじめてこの本を手に取った。というのも、ある講演会で著者を初めて知り、そこで著者に対して何らかの凄みを感じたからだ。どんな人物なのか知りたいと思った。
     私は普段小説を読まないかわりに、詩・エッセイはたまに読む。石牟礼道子や森崎和江はそんな中で出会った尊敬する方たちだ。この本の読了後に、やはりそういった方々に共通するものを著者にも感じた。こういうもので構成されているのか!と思う。
     著者の地平から見る小説像は参考になる人が多いのではないだろうか。

  •  本書は栞を、とある本を読んだときにひっかかり、次の書物への連鎖を促す記述や、情報のことをそう呼んでいる(ようだ)。

     著者の名前に見覚えがあるなと思ったら、『82年生まれ、キム・ジョン』の翻訳者だ。あるいは、『本にまつわる世界のことば』という創元社のシリーズの一冊に、著者のひとりとして名を連ねている。
     後者の本のレビューに書いたが、面白いと抜き出した「ことば」についての短編が、斎藤真理子が記したものが多かったのには、今さらながら驚いた。
    https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/4422701215
     彼女の短編が面白いのか、彼女が担当した、韓国語の“本にまつわることば”が面白かったのかは分からないが、そんなことで、記憶に残る名前だったか。

     本書も、彼女の過去の読書遍歴の中から、次へつながる、読者の興味を惹く本が、何冊も紹介されていた。いくつかメモって、今後、読んでいくことにしよう。

     以前は、書評本の類もたまに読んでいたが(例えば、山崎努による『柔らかな犀の角』など https://booklog.jp/users/yaj1102/archives/1/4163749705)、たまにはこの手の本もいいもの。自分の興味の範囲の外の好著と出会えるかもしれない。
     本書の中でも、詩のアンソロジーは良いともある。確かに、当たりはずれ(好き嫌い)のある詩集は、一冊まるごと読むのは骨が折れる。編まれた中から、己の琴線に触れた詩の作者の詩集に当たるようにすれば、効率的なのかもしれない。

     比較的、女性の作者の本の紹介が多い。あるいは、著者のお仕事上、韓国の作家の作品も。その中から、少し選んで、読んでみよう。

     後半、栞と同義的に、「付箋を貼る」という行為にも言及している。自分も、今後の糧になるような箇所には付箋を貼るタイプだ。著者がいうように、面白い本には「密林のように」付箋が林立するもの。
     ところが、それに対して、以下のような記述があった。

    「結局、付箋やメモに頼っているかぎり、読みながら私が考えたことも感じたことも、そっちに引っ越してしまうのではないか。何を読んでも私の脳にはメモリが形成されないのではないか。これは由々しき問題と思われた。」

     これは耳が痛い。
     付箋を貼って終わり、メモして終わり、レビューして終わりでは、自分の血肉になっていないということだろう(身に覚えもあるところだ)。
     “そっちに引っ越してしまう”ままで置いておかないよう気を付けようと思う。

  • 先日読み終わったこの本、とても良くて、感想をこちらに記録しようと思ったけど、気になったはずの章を読み返しても「すごく良かったけど、ええとどこがだっけ…」と思うばかりで、感想を書きそびれていた。そしたら今朝、尾崎世界観さんによる書評がタイミングよく朝刊にのっていて、そこにこうあった。「これほど付箋が頼りにならない本も珍しい。後から読み返してみても、ただそこに「何かいい」だけがある。読んだ文字が情報を超えた証しだ」とあり、「まさに!」と膝を打った。それでもあえて印象に残ったことを書き留めるなら、死刑囚・永山則夫が執筆した小説「土堤」。そこに書かれた在日コリアンの方との邂逅。それから、田辺聖子さんが当時のOLを主人公に書いた作品群。私も田辺さんのことは大衆的?というかどこか軽く見ていて、近年『ジョゼ』の入った短編集を読んで、その鋭さ、新しさにハッとしたものだ。それにしても、斎藤真理子さんの文章ってほんとうに滋味深い。斎藤さんの文章に触れると、自分の軽さにうなだれてしまうけど、斎藤さんの文章をこうして受け取れるだけで捨てたもんじゃないと思えるというか…うーん、うまく言葉にできないけれどとにかく「何かいい」のだ。

  • 「図書」に連載時から気になっていたが、このように一冊にまとまると、著者の根気が並々ではないことが実感できる.チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジョン』の翻訳を手掛けていることから朝鮮半島の言葉に堪能であることは知っていたが、韓国文学の紹介は初めてだったので非常に面白かった.特に堀田善衛と朝鮮の関連が意外で、堀田の視点の幅広さに驚いた.小生もある程度の数の本を読むが、これ程に視線を多方向に向けて考察するという行動は素晴らしいと感じた.

  • 2024.1

    まず、なんて素敵なタイトルなんだろうと思う

    開いてみると読んだことのない本について
    読んだことのない作家について
    たくさん書かれていた

    同じ時代に違う場所で生きた作者や
    時代背景から想像できる作者についてなど
    私が今まで考えたことのなかった
    新しい読書の世界への扉が開かれるようで
    とても楽しく興味深く勉強になる本だった

    カフェで読んだ後に思わず
    本屋でジョージオーウェルの本を買って帰った
    名作と呼ばれる作品や戦後すぐの作品など
    ほとんど読んだことがなかったし
    私にとっては読書は娯楽だったけど
    最近は読書を通して勉強したい思いが強い
    それはビジネス本や自己啓発本のことではない
    こういう本から学びたい

  • 斎藤真理子さんの翻訳小説は何冊か読んだけど、翻訳じゃない文章もすごく良かった。読みたい本が増えたのでメモしながら。
    編み本の話で編めない作家を連ねてる文章のリズム感が良くて笑った。

  • 斎藤真理子さんは韓国文学翻訳の人。
    私は全くそちらに疎い。
    私の妹は「隣の国なのに何も知らない」と興味を持ち大学生の時に韓国に留学したのだが、私は一度も韓国を訪れた事がない。私はニラやニンニクの匂いがダメだったので行きたいと思ったこともなかった。

    そんな私が、この本で少し韓国文学に興味を持って、ちょっと読んでみようかなという気分になった。斎藤さんのチョイスと紹介の仕方が巧いからだと思う。

    もちろん韓国文学以外の本も多く紹介されていて、どれも読んでみたくなった。

    堅苦しくなく、本に対して正直な感想と言葉で、とても読みやすかった。

    びっくりしたのは斎藤さんが編み物をしながら読書をするという事で、編み物をしながら読むのに適した「編み本」の話が面白かった。

    古い本好きの私には他の話も面白いものばかりだった。

  • 019
    森村桂

    土堤

    やさしみ おせいさん
     マダム・マサコ

    中村きい子

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

斎藤 真理子(さいとう・まりこ):翻訳家。『カステラ』(パク・ミンギュ著、ヒョン・ジェフンとの共訳 クレイン)で第一回日本翻訳大賞受賞。著者に『韓国文学の中心にあるもの』(イースト・プレス)、訳書に『サハマンション』他多数。

「2023年 『82年生まれ、キム・ジヨン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤真理子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×