読書状況 いま読んでる
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心温まる青春小説。
アニメを観るような気軽さで読める。
あっという間に読み終えてしまった。

私は読む前に帯を読まず内容を知らずに読み始めることが多い。
それは良いのか良くないのか分からないけど、今回は内容を知らなくて良かったように思う。
何故なら、そういう展開かぁと分かったところに面白さを感じたから。
内容を知っていたら感想は違ったかも知れない。

読み終えて帯をみたら、永江朗さんが"まさか万城目学の小説で泣くことになるとは!"と言っていて、正にその通り!と思わず顔が綻んでしまった。

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読み始めて数頁で、直木賞でなく芥川賞だなと思った。
夕木春央さんの『方舟』の後だから尚のことそう強く感じた。(こちらは大衆小説)

言葉で生み出す物語。言葉の意味や言葉と文章だからこそ生み出される世界。映像では表現できない小説。

非常に興味深く、非常に面白かった。
現代社会と今の日本人をディスった作品。
形を変え、比喩を使い、批判している。
共感するところが多かった。
私の場合、旦那さんが一級建築士で建築に近いから読みやすかったというのもあるかも知れない。

批判する作品だからと言って登場人物が真っ当でないのが良い。
それぞれに偏りが大きいから誰が正しいとか何が正しいとかを押し付けない。
現代社会を誇張して提示するだけ。

… … …
こういう考えさせる小説を読んでいる時は読みながら別の事を(別の文章を)考えてしまう。
例えば、人が必ず死ぬように建築物は必ず倒れる、という文章を目にして、私の頭の中には何故かガウディのサグラダファミリアが想起される。そして、実際に中に入るまではちょっと馬鹿にしていたこと、しかし入ってみたら全く想像と違ったこと、感じたことのない感情を抱き震えたこと、等々が次々と頭の中に流れる。
先の文章は最後の方に出てくる言葉で、そのフレーズにはそこに至るまでの色々が含まれている。建築について、美について、その他諸々がその文章の中には含まれていて、それを踏まえて私はサグラダファミリアを思い出す。
そんな感じで、読みながら色々なことが脳内に浮かんだ。

2024年2月19日

読書状況 読み終わった [2024年2月19日]
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プロローグの掴みが凄い!
絶対気になって読みたくなる内容。

鼻息荒く読み始めて、最初の数ページでがっかりした。言葉は悪いけど文章が拙い。
言葉や描写や文章の良さではなく、物語の内容が面白いタイプ。映像作品の台本という感じがした。映画化されそう。

とにかく物語が気になって、顛末が気になって、止められずあっという間に読んでしまった。
色々気になるところはあるけどこの話を考えついただけで凄い。
いやぁ〜面白かった!

2024年2月13日

読書状況 読み終わった [2024年2月13日]
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佐藤亜紀さんには珍しい短篇集。

私は最初の2篇と最後の1篇が良かった。

最初の2つを読んでいる時は、佐藤さん特有の、翻訳のような文章とその美しさに溜息が溢れ、さすが佐藤亜紀さん!と思った。
でも3つ目と6つ目が読みにくくて別の意味で唸ってしまった。
「アナトーリとぼく」はほぼ全てひらがなとカタカナなので、読むのがすごく疲れた。勿論わざと疲れる文章にしていて、そこに意図があるのだけど。

①弁明 /サド侯爵が状況と心境を語る話。語り口とその弁明がとにかく面白い。

②激しく、速やかな死 /ジョン・コリリアーノの歌劇(ホフマン脚本)「ヴェルサイユの幽霊」へのオマージュとのこと。タイトルになるのが納得の傑作。ギロチンに処される前の部屋に閉じ込められた人々。

③荒地 /アメリカへ逃げたタレイランのアメリカに対する感想の一人語り(フラオー夫人への書簡という設定)

④フリードリヒ・Sのドナウへの旅 /ナポレオンを暗殺しようとした青年の話。

⑤金の象眼のある白檀の小箱 /オーストリアの政治家メッテルニヒの妻が夫に書いた手紙という形式。夫の不倫相手のロール・ジュノとその夫ジュノ将軍の騒動について。

⑥アナトーリとぼく /ぼくはくまなのでひらがなとカタカナしか書けない。トルストイの「戦争と平和」を佐藤亜紀さんが訳したもの(皮肉を込めてということだろうか? 作者による解題に〝何語で読んでもピエールは道徳フェチの糞ナルシストであり、救いがたい利己主義者である〟と書かれている)

⑦漂着物 /ボードレールの「白鳥」より。変わりゆくパリについて。文章が素晴らしいく、うっとりする。美しい締め。

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読み始めて
これ書くの楽しかっただろうな〜
と思った。
架空の県の架空の街。架空の会社と物。架空だけど異世界ファンタジーじゃなくて現実世界に実際にあるかのような地方都市。
そこで生きる普通の人々と、人間の姿で生きる神の話。
取り立てて何か起きるわけでもなく、日常の暮らしや独白。エッセイのような読みやすさで延々と読める。

あるあるが沢山でクスッと笑えて、絲山さんらしい痛快さが良い。

旦那さんに掻い摘んで少し読んで聞かせたら「漫才みたいだね」と。
そう言われると漫談みたいだと思う。表現の面白さや言葉の選び方が最高。テンポもいい。

私が好きなのは恋愛を語る50代女性が、
「私のところに恋愛の取り扱い説明書って来ました?」
っていうところ。
恋愛についての説明がめちゃくちゃ面白くて、上手いこと言うなぁ〜と感心しまくりでした。

あと、中年男性だって流れるプールで流されたい!なんで中年男性はジムで鍛えるとかストイックじゃないといけないんだ!とか、分かる!私も流されるの大好き。
で、その後、なんなら生まれ変わって流しそうめんになって、箸の間をすり抜けて「うひゃー!」と叫びたいとか。それもなんか分かる(苦笑)

でも、面白いだけでなく、神を登場させることで人間というものを浮かび上がらせて、心に響くところやハッとさせられるところも多い、ちゃんとした文学小説です。

終わってしまってさみしい。ぜひ第二弾も書いて欲しい。

2024年1月29日

読書状況 読み終わった [2024年1月29日]
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オウム真理教の地下鉄サリン事件をモチーフに、指名手配された女性を描いた作品。

興味深くてズンズン読めた。

桜木さんの良さも存分に出ていて、とても良かった。
プロローグに結末を持ってくる構成がいい。

空想の物語はどこかふわっとして薄っぺらい印象になりがちだけど、今回の作品は実在の事件があるからリサーチした感じがして、物語に厚みがあるように感じた。

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これまでに読んだ佐藤究さんの作品と比べると、
サッパリとした印象。
それは、雲のない澄んだ青空を思わせる。

主人公の淡々とした性格、人間的な部分より機械の説明に多くを割く構成が静謐さを生み、空や風や死を感じさせる。
上空の冷気に包まれるようだった。

内容だけでなく、そういう書き分けができることが凄い。



美術教師は言った。「これが心理補色だよ。赤の残像でシアンが見える。きみたちの探しているのは、こういう青じゃないかな」
(中略)
空の青とは、すなわち死の補色だった。



個人的には同級生の溝口君のその後が気になる…。
後半に主人公と接点があったら良かったなぁ。
(いかにもな感じで作品をダメにしてしまいそうだけど…)

2024年1月13日

読書状況 読み終わった [2024年1月13日]
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実家との往復中に読もうと持って出て、
電車の中で泣くのを堪えるのが大変だった。
家では何度もポロポロ泣きながら読んだ。

今までの読んだ遠田作品の中で私はこれが一番共感度が高かった。
だから泣けた。

虐待メインだから駄目な人には駄目だと思う。
義父を殺す小学六年生の男の子、とか
もうそれだけで重い。
そんな酷い境遇の子供がいるなんてありえないとも思う一方で、そういう境遇の子供もいるのかも知れないとも思う。
小説として誇張することで、埋もれてしまう人間の感情や想いを言葉にして表現することができる。
そういう小説だった。

2024年1月3日

読書状況 読み終わった [2024年1月3日]
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斎藤真理子さんは韓国文学翻訳の人。
私は全くそちらに疎い。
私の妹は「隣の国なのに何も知らない」と興味を持ち大学生の時に韓国に留学したのだが、私は一度も韓国を訪れた事がない。私はニラやニンニクの匂いがダメだったので行きたいと思ったこともなかった。

そんな私が、この本で少し韓国文学に興味を持って、ちょっと読んでみようかなという気分になった。斎藤さんのチョイスと紹介の仕方が巧いからだと思う。

もちろん韓国文学以外の本も多く紹介されていて、どれも読んでみたくなった。

堅苦しくなく、本に対して正直な感想と言葉で、とても読みやすかった。

びっくりしたのは斎藤さんが編み物をしながら読書をするという事で、編み物をしながら読むのに適した「編み本」の話が面白かった。

古い本好きの私には他の話も面白いものばかりだった。

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前作の『同志少女よ、敵を撃て』(2021年)も良かったけど、今作もまた、とても良かった。
人間のあらゆる面が描かれている。
歴史から現代の生き方を問うというスタイルは読んでいて心に良い。
逢坂作品には私の理想とした生き方があって、心が震える。
正しく生きること、ただそれだけなのに何故か大人には難しい。
子供を主人公にすることで、それが可能になる。

2023年12月28日

読書状況 読み終わった [2023年12月28日]
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大好きな作家、佐藤亜紀さんの旦那さん。
今年の8月に亡くなられた。62歳。

佐藤哲也さんを初めて読んで、
佐藤亜紀さんの旦那さんだものなぁ、このくらいじゃないとやっぱり釣り合わないんだなぁと思った。
天才ご夫婦。

概念や観念をイメージとして表現した、内容の不思議なタイプのものを久しぶりに読んだ。感覚を具現化する文章版。

全体的にアイロニカル。

最初の4篇は同じジャンルというか繋がっているとも取れるつくりで、後半はそれぞれ異なる。

1〜5が宗教的で、6〜13は子供が主人公だったり天井に張り付いてるカバや人より大きいキリギリスなど分かりやすく読みやすい作品。

個人的には「巨人」が印象に残る。
精神の部分が自分とあまりにも同じで、発狂した時の行動とか私がこれまでうまく言えなかったものがそこにあって、驚いた。

解説は伊坂幸太郎さん。
解説の中で美術評論家の坂崎乙郎氏の言葉を引用されていて、私もそう思うので書き留めておく。

『絵描きも小説家もこういう現実の世界の外側に、あるいは彼岸に小さな宇宙を築くことのできる人たちであり、この小さな宇宙が、ある何人かの人間に感化をおよぼしていくことのできる、そういう才能が絵描き、あるいは小説家だと確信しています』(「絵とは何か」より)

2023年12月17日

読書状況 読み終わった [2023年12月17日]
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すごく面白くて、あっという間に読んでしまった。
何かで良いと見て気になっていた。
当たりだった。

ミステリーとか謎解きとかのカテゴリーらしいけど、探偵でも刑事でもないし、短編だし、私の感覚ではあまりそのジャンルの感じがしなかった。
普通の人がとある出来事を受けてどう行動したのかをその人の代わりに説明してあげる。
特別感がなく、普通の日常と普通の人がそこにあるのが良い。
人が前面に出ていて、優しさが溢れているのが良い。
主人公というか、起ったことを語るエリサワ君が昆虫好きの人で、どれも昆虫に絡んだ話になっている。
そして、それぞれの短編が繋がりを持っている。
アイデアも構成もちゃんとしていて、専門的な内容も盛り込まれていて、よく出来ているなぁと感心してしまう。

前作『サーチライトと誘蛾灯』とも繋がっているみたいだけど、それを読んでなくても問題なく読めた。

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6つの短編

前半3つはエロティック
後半3つは怪奇

2と3は女性の大人向け。特に2つ目の「楽園の破片」は30代後半以上の女性だとスッと分かる。巧さが際立っている。
その他の作品も巧いなと思う。

どれも美術に絡んでいて私は読みやすかった。
1は漫画、
2はゴーギャン、
3は弥勒堂の釈迦如来坐像、
4はアッシジの聖フランチェスコ、
5はミレーのオフィーリアと芥川の地獄変、
6はゴッホ

短編だからサクッと読める。
物理的にも文字が大きく行間が広くて、すごく読みやすかった。

他のレビューを見たら、ファンの人にはショックな作品らしい。
私は特にショックはないけど、原田マハさんの作風を期待して読むと確かに物足りないとは思う。

2023年12月6日

読書状況 読み終わった [2023年12月6日]
カテゴリ 日本文学
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2022年10月2日に急逝した津原さんの最後の長編小説。
好きな作家さんだったから訃報を見てすごくショックを受けた。
だから感想が難しい(苦笑)

率直に正直に言えば、宛字で明治文学を意識したという試みだけど、内容にイマイチしっくりきていない気がする。
現代の小説より明治大正文学が好きなので、違和感しかなかった。
中身も微妙。
音楽の専門学校に入学した男性の話だから話が難しいというのではなく、散漫というか何というか、良さが分からなかった。

前半と後半の温度の違いが気になる。前半は『ヒッキーヒッキーシェイク』後半は『綺譚集』
現代感と文学でやりたいことがやっぱり合わない気がする。青春小説という部分は凄く良く完成されているから、合わない部分が気になって変な感覚を受けてしまうのかな。

装丁と内容の印象が合致しない気持ち悪さ。
多分、書き手の思いと装丁の写真は合致している。
内容からイメージする装画は、登場する喫茶店の中の彫刻かな。

唯一、四国弁が良いなぁと思った。

…… …… ……
他の人のレビューを見て思ったので、書いておく。
私の本の評価は、良い一文や響く一文があっても、それは全体の評価にならない。あくまで全体として捉えた印象を評価にしている。

2023年12月4日

読書状況 読み終わった [2023年12月4日]
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泉鏡花賞受賞に納得。
少し不思議な、怪談の少し入った話。
恒川光太郎さんの女性バージョン。
恒川さんより余分な描写が多く、内容よりそっちを重視している感がある。それが私にはちょっと読みにくく、抽象画を読んでいるような気分になって、老化した脳にはしんどかった。詩っぽい部分が多い。

6つの話があり、
表題作の陽だまりの果てがいちばん疲れた。

1)ツメタガイの記憶
語り手の息子の部分がなかったら好き

2)鼎ヶ淵
子供が語り手で読みやすく面白かった

3)陽だまりの果て

4)骨の行方
老女二人の友情。いちばん普通に読める

5)連れ合い徒然
ドイツ人ツレアイとの3つのエピソード。ドイツ人とは書いていないけど郷土料理でグリューネゾーセと出てくるのでそうと分かる。大濱さん自身ドイツに暮らしているから実際そうなのかな?

6)バイオ・ロボ犬
ロボット犬というモチーフで生死を考えさせるので分かりやすい。でもこれを読むと、読みにくいと感じて大濱さんはちょっと苦手かもなぁと思った1と3が恋しくなって、そっちの方が良いなと思ってしまった(苦笑)

2023年11月25日

読書状況 読み終わった [2023年11月25日]
カテゴリ 日本文学

この本は昭和61年に道の島社から発行され、その後絶版となり、平成7年に小学館から再刊されました。

書いたのは南日本新聞社の中野惇夫さん。
奄美大島へ赴任し、田中一村を知り、「一村の息遣いが聞こえるところまで取材したい」という思いで書かれた本。

とても細かく丁寧に書かれていて、一村という人物がよく分かる内容になっています。文章も読みやすい。
最後は泣きながら読み、涙が止まらなくなりました。

著者が取材中、一村の旧友からかけられた言葉。
「米邨さんの生き方は、日本人の生き方の手本を示していると思う。昔であれば修身の教科書に載ってもおかしくないような方だ。ぜひ広く紹介の労をとってほしい」

正にその通りの人物でした。
自分の絵を描くことが全てであり、それこそが生きることであった人。
絵に対する思いが凄過ぎるし、人に対しての優しさも凄過ぎる。
真面目で勤勉で思い遣りがあって、本当に素晴らしい人物。

作った野菜や果物の良い物を人にあげて自分はくずや傷んだものを食べる。
戦後のさらに貧しい時に炭を盗まれたら盗まれると自分が豊かに思えると笑って言えるとか、
売る絵は描かないと決めて自給自足の貧しい暮らしをし、奄美では絵を描くために安賃金の仕事を5年し、切り詰めて貯めたお金が底を尽きるまで絵を描く生活をするとか、
いつか評価してもらえればいいとか、
私にとっては泣きポイントしかない生き方の人。

2022年7月に奄美大島へ行った時に、田中一村美術館で実物の作品を観たけど、その前に読んでおくんだったと後悔しました。
絶対に作品の見え方が違ったはず。

代表作の『クワズイモとソテツ』はアンリルソーの『蛇使いの女』に似ている(もちろんルソーよりは巧い)と思ったのだけど、一村がピカソを好きだったと知り納得しました。

日本画で南国の風景というのが新しいし、構図や色も珍しいし、田中一村はもっと評価されるべきだと思っていたけど、人物を知ってさらに強くそう思うようになりました。
世界的に評価されて良い画家だと思います。

奄美大島は遠いけど、奄美に行く機会があったら是非田中一村美術館(奄美パーク)で実物の作品を観て欲しいです。空港からすぐだし、美術館も景色もとても良いので。
美術館はご立派な施設なのに来場者が全くいないので経営が心配になります。

2023年11月13日

読書状況 読み終わった [2023年11月13日]
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1/3くらいまでは、世界中の全ての人に読んで欲しい本だと思った。
人間というものを改めて考え、生きることや幸福というものを今一度考えられる。
人種や宗教など関係ない。生きることの大切さが分かる。
この本を皆が読んだら、戦争が終わるのではないかと思った。
でも、
読み進めるうちに、独特の語りと汚い言葉のオンパレードに滅入ってきて、飽きるというか気分が悪くなった。
だから総合的な感想が難しい。

帯とカバーに書かれていることに共感するので引用。
_______

・教養のないアラブ人少年の、正規の言葉遣いから離れた語り口が効果を生んだ(ジュルナル・ド・ジュネーブ)

ぼくの名はモハメッド、可愛らしい感じを出すために、みんなは「モモ」と呼びます。生まれも年も定かではありません。娼婦の子供であるのは確かで、汚いアパートの七階にマダム・ローザと棲んでいます。


年端のいかない天涯孤独のアラブ人少年の語り口を生かして、パリの貧民街ベルヴィルとそこに棲む大人たちの世界を、率直に、ユーモラスに透視する。一語一句工夫を凝らし、細密に計算された、易しく特異な文体。
本書は1975年に発表されるや各界から大きな反響を呼び、その年のフランス最高の文学賞ゴンクール賞をさらった。20世紀フランス文学の歴史の中でもカミュの『異邦人』に次ぐ一大モニュメントである。

_______

ぼくは麻薬など踏みつけてやります。それを注射するガキは幸福の常習犯になりますが、だからぼくにはがまんがならないのです。だって、幸福というものはそれが無いという状態でしか知られないのですから。注射をするためには何をおいても幸福でありたいと思う必要があり、そんな考えをもつのは馬鹿の王様のすることです。
ぼくはそれほど幸福には執着しません。それよりぼくは生きてることの方が好きです。(p74-75)

2023年11月8日

読書状況 読み終わった [2023年11月8日]
カテゴリ フランス文学

こういうのをゲームブックというのか、と知る。
選択をする場面で読者に選ばせて、そのページに飛ばしていく。何通りもの物語ができる。

私にとっては、お金と時間を返して欲しいと思うものだった。これは本じゃない。

小説という媒体が最も相応しくないと思う。漫画や映像ならまだマシだと思う。
汚い言葉使いは文字として読みたくない。
破茶滅茶なやり取りも文章より絵が向いている。

ポップな装丁とタイトルと本屋のツイートに騙されてしまった。
プロローグも面白そうに思えたのにな…。

斬新と駄作は紙一重。
このようなジャンルの作品がどれだけあるのか知らない。新しいチャレンジなのかもしれないし、またはそのジャンルの中では優れているのかもしれない。でも私の感想としては、正統な読書家さんにはおすすめしない。読む必要はないと思う。

2023年10月23日

読書状況 読み終わった [2023年10月23日]
カテゴリ 日本文学
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いい話だった。感動作と言えなくもない(と、私は思う)
犯罪について、犯人について、私がよく考えていることがそのまま書かれていた。

内容はすごく良いのだけど、主人公ふたりのキャラクターのひとりは「やり過ぎ」ひとりは「鈍過ぎ」な感じで読みにくく少し苛々した。古い作品(2016)だから仕方がない。今ならもっとキャラクターも全体も巧く書くだろうな、と思う。

でも、内容の本質は本当に良いです。伊坂さんお得意の繋がっていく伏線回収もうまいです。

読書状況 いま読んでる
カテゴリ 日本文学

やっぱり伊坂さんの殺し屋シリーズは面白い。あっという間に読み終わってしまった。

とあるホテル内で起こる殺し騒動色々。悪が滅びて善が勝つ気持ちの良いストーリー。展開も内容も本当に巧い。

過去の殺し屋シリーズを読んでいなくても楽しめます。

2023年10月17日

読書状況 読み終わった [2023年10月17日]
カテゴリ 日本文学

毎回感じることだけど、恒川さんは本当に凄い作家さん。毎回違う作品を生み出す。
「また同じか…」がない。
そして、新作を出す度に「これが最高傑作だ」と思う。最高傑作が毎回上書きされていくってなかなかない。

恒川作品は現実ではない世界の物語が主。アニメで言う異世界ものに近い。今回はマルチバース(多元世界)ファンタジー。
でも、アニメと違って非現実と現実のバランスが絶妙でファンタジー過ぎないのが良いところ。

今回の作品は異世界・多元世界に何千年もの時間軸が加わって、全てが繋がっているという設定で規模が大きい。
小説の入り口は現代の普通の世界なのに、どんどん話が大きくなっていく。
個人の話であるのに、個人の行動が大きな出来事に繋がって、壮大な世界に展開していく。

御涙頂戴的なところがなく、説教じみた教訓的なところもない。それでいて真に深い「人生とは」がある。
そこが恒川作品の良いところ。

いやはや、もう脱帽です。凄いです、としか言いようがない。

2023年10月14日

読書状況 読み終わった [2023年10月14日]
カテゴリ 日本文学

上巻はのろのろ読みだったけど、下巻はあっという間に読めた。
上巻始めの感じはハッキングなどの技術による社会崩壊の話かと思ったら全然違った。もちろん世の中の在り方の事も含まれているけど、もっと大きな生死についての話だった。
意外な展開で、帯に書かれているように「読み出したら止まらない」
フランスらしさがふんだんに出ていて良い。
ベストセラーに納得。

2023年9月30日

読書状況 読み終わった [2023年9月30日]
カテゴリ フランス文学

読書状況 読み終わった [2023年9月30日]
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